日常生活での注意について
Q91 | 癖が顔やからだを歪ませるって本当? |
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A91 |
動物の顔は本来、左右対称です。 歯並び・からだの歪みを自分で直すためには、ご自身の態癖・悪習慣を振返り改善しましょう。 |
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Q92 | 態癖って何? |
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A92 |
私たちは、自分では気づかない様々な習癖を持っています。日常の生活習慣の中のこのささいな習癖が長期に及ぶと、歯を移動し顎口腔系さらには全身に大きな影響を及ぼします。この顎口腔系に悪影響を及ぼす習癖を態癖といいます。 I.口腔周囲の癖・口腔周囲筋のアンバランスな緊張 唇の癖や舌の癖で歯の位置や傾きが変わります。指しゃぶりは誰の目にも上の歯を出っ歯にしてしまうだろう、と想像がつきますね。ところが、口のまわりの筋肉が思わぬ悪さをしています。無意識に絶えずエクボをつくってしまう癖だけでも歯列に影響を与えるのです。しかし、指しゃぶりの癖が、十分に甘えることのできない子どもにとって、甘えの代償となる大切な行為であるように、態癖はその人が安らかに眠り、不安を隠すために、とても大切な行為である場合があります。子どもの態癖改善にあたっては、癖だけに注目せず、本人が癖を自覚して、自分で改善するようにすることが大切です。 下あごはぶらさがっている両腕の力を込めた後、力を抜いてダランと腕をぶら下げてみてください。力が抜けてからだが楽でしょう。「下あご」も、両腕と同様に普通は力を抜いてぶら下がっているものです。上と下の歯と歯が接触するのは、ものを食べるときとつばを飲み込むとき、それに発語の一部だけです。リラックスしているときは、歯と歯の間に隙間があるのが正常な姿です。歯の隙間に頬粘膜や舌を挟んでは、いけません。歯と歯をいつも接触させていると、たとえかみしめている自覚がなくても、歯を痛め、あごを疲れさせ、肩こりや頭痛の原因になります。歯並びが崩れることもあります。 固い食べ物を食べてあごを鍛えるのは若い時だけ歯やあごは固いものを食べて鍛えられて、筋肉、骨や歯の根、あごの関節が発達します。従って若い間は固いものを食べて鍛えないといけません。しかし、逆に歯は使えばすり減って噛みにくくなります。形も悪くなって障害をおこします。鍛えるのは若い間で、中年以降は普通の食事でよく、スルメなどの固い食べ物をよく食べている人はかえって歯を痛めてしまうこともありますので、気をつけてください。 II.狭義の態癖・中下顔面に直接外から力が加わるもの 頬杖や体操座り、うつぶせ寝など、頬から下(中顔面、下顔面)に外から力をかけてはいけません。頬杖以外にも、うつむき姿勢の長時間のゲームや読書、あるいは仕事のためにあごに力を加えていることがあるものです。これを長時間行うと、わずかなあごの歪みが姿勢を歪めてきます。 III.広義の態癖・長期間、体を歪ませる力が肩・首の上を歪ませている
下あごに力を加えなくても、長時間にわたってからだを歪ませていると、肩や頸が歪んでしまいます。趣味の編み物、重い荷物、食事の姿勢、スポーツや体操でも姿勢が歪むことがあります。姿勢のゆがみは、あごのゆがみを引き起こすと同時に、肩こりや腰痛につながります。 |
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Q93 | 睡眠時ブラキシズムは修復物へ影響を与えるのでしょうか。 |
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A93 |
修復物の破損や脱落の原因としては、以下のような多くの因子があります。 1.修復物の形成・印象・適合性・咬合 2.修復物の合着材料 3.患者の食べ物の嗜好 4.“力”の問題 しかし、注意深く診査し、修復物を設計・製作しても、破損や脱落が起こることがあります。このような場合は睡眠時ブラキシズムが疑われます。 睡眠時ブラキシズムの影響を調べたデータがあります。 装着したインレー、クラウン、ブリッジ、連結冠の合計3,673個の予後25年間を調査し、睡眠時ブラキシズムの弱いグループ(B-1)は修復物の脱落が少なく、強いグループ(B-3)は修復物の脱落が多いことが分かりました。また、中間の強さであるグループ(B-2)における修復物の脱落は、B-1とB-3の中間でした。いずれのグループ間においても、有意差が認められました。 修復物の残存率経時変化友永章雄, 池田雅彦, 加藤 熈, 大畑 昇:Sleep bruxismが修復物脱離に及ぼす影響. 補綴誌. 49: 221-230, 2005.
以上から、修復物を長期に維持するためには、睡眠時ブラキシズムのコントロールが必要であると言えます。 (参考)睡眠時ブラキシズムと顎関節症について顎関節症は多因子疾患です。なかでも睡眠時ブラキシズムが関与しているケースでは、咬合調整などを行わなくとも、睡眠時ブラキシズムをコントロールすることで顎関節症の症状である顎関節のクリック音や疼痛を軽減させることも可能です。 ※参考書籍 |
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Q94 | 睡眠時ブラキシズムには「自己暗示法」という治療法があるそうですね。どのように実行したらよいのでしょうか?また、本当に効果があるのでしょうか? |
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A94 |
自己暗示法の実行1.イメージングイメージングとは、「入眠直前に、顎のリラクゼーションした状態をイメージする」ことであり、その後、「唇は閉じて歯は離す(Lips together, teeth apart)という言葉を20回声に出して唱えることが、実行の方法です。このとき発する言葉は、「唇は閉じて、歯は離そう」ではなく、「唇は閉じて、歯は離す」であることが重要です。未来のことであるものの、あえて断定的な言葉を使用することが重要なのです。 2.声に出す意味実際にあった話を紹介します。 あるとき、ある患者さんにいつものようにこの方法を実行するように伝えていたところ、効果はあったものの、通常よりも効果が認められたのが遅かったため、どのように実行しているかを尋ねました。すると、自己暗示法を実行する際に、声に出して行っていなかったことがわかりました。その理由をうかがうと、その方は、隣にご主人が寝ているので、声に出すのが恥ずかしかったとのことでした。再度、声を出すようにアドバイスしたところ、それからは声を出すようになって暗示効果が高まりました。 このように、声に出して暗示法を実行することがとても大切なのです。他にも、たとえば、スポーツ選手が「頑張るぞ」などと声を出しながらプレーをすると、脳に刺激を与え、より集中度を高めることに繋がることが分かっています。 心で思ってその言葉が脳に伝わることと、声を通じて耳からもその言葉が脳に伝わることは違いがあり、声を出すことはとても大切なのです。 効果さて、この自己暗示法でどのくらい効果があると思いますか? なんと96%の成功率です!本人にやる気があれば、誰でも成功します。必ず成功します。早期に成果が現れなくても焦らずに行えば、人間のもっている能力を使用するので誰にでも効果があり、それは通常ゆっくりと出ることが多いです。 これで無意識のコントロール法を身につけることができ、これは今後のあなたの人生にとって貴重な体験になります。
詳細なデータは以下をご覧ください。 <自己暗示法の効果と持続>B-1からB-3まで睡眠時ブラキシズムの強さによって3つのグループに分けて調査した。 B-1:睡眠時ブラキシズムが弱い B-2:睡眠時ブラキシズムが中程度 B-3:睡眠時ブラキシズムが強い
自己暗示法が必要な50人に実施した結果、96%(48人)に効果が認められた。 SBの強さ別調査 B-2:睡眠時ブラキシズムが中程度 B-3:睡眠時ブラキシズムが強い 大きく効果のあった割合は、睡眠時ブラキシズムの強いB-3のほうに多く認められた。
暗示の効果の持続 どのくらい持続するか、6ヶ月間で効果判定を行った。 B-2、B-3においても大きく効果のあった患者に、効果の持続が見られた。なお、B-2では、わずかに効果のあった患者は効果があまり持続しない傾向がみられた。 以上より、睡眠時ブラキシズムの治療に熱心な患者の暗示の効果の持続は、効果が出たときの暗示が維持されており、睡眠時ブラキシズムの治療へのモチベーションの低いものは、効果が薄れていく傾向がみられた。 菅原哲夫、池田雅彦:Bruxismの治療法-自己暗示法について-.第98回日本歯科補綴学会学術大会抄録, 34, 1997.
※参考書籍 |
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Q95 | 小さい時から歯ぎしりをしていて歯の形が気になるのですが、マウスピースを作ると大体金額はどのくらいになりますか? |
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A95 |
マウスピースは保険治療が可能です。 点数・金額は 保険で3割負担であれば、16,900円×3割=5,070円です。 また、マウスピースの形態によっては、保険治療ではできないものもあり、自費で治療するケースもあります。自費の金額につきましては、歯科医院によって異なりますので、行かれる医院にお問い合わせください。 |
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Q96 | ブラキシズムはどのくらいの力がかかるのですか? |
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A96 |
歯ぎしり・食いしばりの力は、平時の噛む力に対して約6倍になります。 |
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Q97 | 歯がなくなると身体運動に何か影響がありますか? |
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A97 |
人の身体運動の中で、動きを停止するなど関節を固定したい時に、筋は等尺性の筋活動(筋力=負荷の状態)を行います。このようなとき、歯を噛みしめることによって顎の関節は固定され、この固定感が等尺性の筋活動を行いやすくさせます。 上腕二頭筋(屈筋)を例にした図
①短縮性筋活動(concentric muscle action)筋の発揮する力>外部の力 筋長が短縮する ②等尺性筋活動(isometric muscle action)筋の発揮する力=外部の力 筋長には変化が生じない ③伸張性筋活動(eccentric muscle action)筋の発揮する力<外部の力 筋長が伸ばされる
もし、歯が全部なくなると、足を踏んばる、重いものを持ち上げるなど、ゆっくりとした力発揮に悪影響がでます。また、片顎の歯列が失われた場合には、左右の平衡感覚が低下します。しかしながら、このような影響はすべての人に現れるわけではありません。というのは、等尺性筋力発揮時に噛みしめのかわりに、顎を前方位や開口位で固定する人が1/3ほどいるためです。
※参考書籍 |
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Q98 | 噛みしめると力が出るというのは本当ですか? |
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A98 |
噛みしめは静的筋力を増強し、動的筋力を低下させます。 噛みしめの筋生理学的本態は筋の共縮であるため、ウェイトリフティングの初動や綱引きのパワーホールドなどスポーツ動作において身体を固める(一定の姿勢を強く保持する)場合などの、静的筋力を発揮する時には有用です。
しかしながら、それ以外のスポーツ動作では、 1.拮抗筋を収縮させて競技スピードの低下を招く2.呼吸リズムを乱してスキルを落とす3.筋の弛緩を妨げ過緊張を誘発するなど、動的筋力の発揮にはマイナスの影響を及ぼします。
日本歯科医師会の広報誌のインタビュー記事の中で、世界陸上大会やオリンピックで金メダルをとったハンマー投げの室伏広治選手は「渾身の投げの基本は歯をくいしばらないこと」と言っています。
また、強い噛みしめは体幹の筋肉を緊張させて関節を固定するため、身体の柔軟性を低下させるということもわかっています。
他にも、噛みしめは高齢者や女性では役に立つこともあります。 詳しくはこちらのQ&Aを参照して下さい。
※参考書籍 |
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Q99 | タバコは歯にも悪いんだそうですね。なぜですか? |
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A99 |
歯周病が進行しやすくなるのです。喫煙者は非喫煙者にくらべると進行が約10年早いというデータもあります。 ※参考書籍 「nico 2015.4 クインテッセンス出版株式会社」 |
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Q100 | 歯ぎしりってやってはいけないの? |
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A100 |
歯ぎしりや食いしばりはストレス回避の一環として必要な反応であることが解明されています。 |
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