日常生活での注意について

Q1 介護をしている親がいます。食事が飲み込みづらそうです。どうしたらよいでしょうか。
A1

飲み込みやすい食物の物性の必要条件として、適切な凝集性がある(食塊としてまとまりがよい)、付着性が低い(粘膜にはりつかない)、変形性が高い(咽頭・食道通過時に形を変える)があげられています。

誤嚥の観点から考えると、嚥下前に食物が咽頭に流れ込んだとしても、咽頭蓋谷領域で食塊としてまとめることができ、ひとたび嚥下が起これば変形性が高く、一塊として咽頭を通過し、咽頭残留を生じない物性が安全と考えられます。摂食・嚥下障害の重症度により対応する食物形態はさまざまです。重症であればゼリー化補助食品やとろみ調整食品を用いて調整したゼリー食やペースト食が用いられており、この段階では均一な物性であることが求められます。機能回復が進めば段階に応じて形のあるものに移行させていきます。

摂食・嚥下運動に過程のなかで、咀嚼は舌の運動と強い連携をもち、食物を粉砕する、唾液と混ぜあわせ飲み込みやすい硬さに調整する、咽頭へ送り込むために口腔内で取りまとめる、という作業を担っています。

この作業をスムーズに行うためには、舌のリハビリができてよく噛める義歯、食べ物を咽頭に送り込める食塊形成のしやすい義歯が必要となります。

舌接触補助床(PAP)という義歯型の口腔内装置で、舌の接触状態等を変化させて咀嚼機能等を改善することができます。

→PAPについてのQ&Aはこちら
「噛む機能を改善するために舌接触補助床(PAP)が有効であると聞きました。詳しく教えてください。」

※参考書籍
 「プロセスモデルで考える摂食・嚥下リハビリテーションの臨床 咀嚼嚥下と食機能」
 才藤 栄一  医師薬出版株式会社

Q2 噛む機能を改善するために舌接触補助床(PAP)が有効であると聞きました。詳しく教えてください。
A2

舌接触補助床(PAP)とは、舌の接触状態等を変化させて咀嚼機能等の改善を図ることを目的とした、口腔内の形態や空隙を考慮して製作された床(義歯)型の口腔内装置のことをいいます。

例1. 上顎義歯の口蓋部を肥厚させたPAP

上顎義歯の口蓋部を肥厚させたPAPの写真

上顎義歯の口蓋部を肥厚させたPAPの装着イメージイラスト

例2. 口蓋部だけの装置(口蓋床)として製作されたPAP

口蓋部だけの装置(口蓋床)として製作されたPAPの写真

口蓋部だけの装置(口蓋床)として製作されたPAPの装着イメージイラスト

対象の疾患等

  • 脳血管障害
  • 口腔腫瘍等による咀嚼機能障害等
  • 神経筋疾患
  • 加齢にともなう嚥下障害

※神経筋疾患では、嚥下障害を契機に病気が発見される場合もあります。

嚥下障害・構音障害に対するPAP

PAPは嚥下構音における舌と口蓋との接触状況を改善するための装置ですので、当然舌と口蓋との接触状況を診査する必要があります。

診査内容
  • 嚥下後の食物の口腔・咽頭残留
  • 咀嚼時の食物の早期流入
  • 発音しづらさ
  • 舌の可動性
  • 舌と口蓋の接触状況(パラトグラム)
  • フードテスト
嚥下障害に対するPAP

頭頚部癌による舌切除術後は、舌の欠損や運動障害が生じます。その結果、舌と口蓋の接触が不良となり嚥下に必要な圧力を産出できなくなるため、嚥下障害が生じます。PAPは義歯床口蓋部に豊隆を付与し、舌が届かない空間を埋める可撤性の装置で、これにより舌と口蓋の接触を補助することが可能となり、嚥下機能の改善が見込まれます。

構音障害に対するPAP

頭頚部癌による舌切除術後は、舌の欠損や運動障害が生じます。その結果、舌と口蓋の接触が不良となり構音点を確保できなくなること、適切なせばめが作れないこと、破裂、破擦などの構音様式に必要な巧緻な動きができなくなることなどにより構音障害が生じます。PAPによる構音機能の改善については、主として硬口蓋部で産生される子音の構音点の回復、構音様式の補助がまず直接的効果として期待され、また共鳴腔としての口腔容積の減少により、一部の母音を改善させることも期待できます。

※口腔内で舌によってつくられる子音

舌の欠損や運動障害がある場合、とくに「カ行」「サ行」「タ行」「ラ行」に影響がみられます。

 

歯肉

硬口蓋

軟口蓋

破裂音

 

タ テ ト

ダ デ ド

 

カ キ ク ケ コ

ガ ギ グ ゲ ゴ

通鼻音

 

ナ ニ ヌ ネ ノ

 

 

摩擦音

サ ス セ ソ

ザ ズ ゼ ゾ

ヤ ユ ヨ

 

破擦音

 

 

弾 音

 

ラ リ ル レ ロ

 

 

 

■PAPの治療費

原則として摂食機能療法を行っていることが必要となりますが、保険治療です。

■正常な食生活のために心がける事

前号でも触れましたが、正常な食生活は口腔機能の維持および全身の健康にとってとても大切です。次のことに気を付けましょう。

1.精製されたものは食べない。(砂糖・小麦粉など)

2.合成されたもの(着色料・甘味料・保存料など)が入っていない食品を選ぶ

3.悪い植物油は避ける(サラダオイル・マヨネーズ・天ぷら油・ゴマ油・ココナッツオイルなど)

4.添加物は避ける(発色剤・酸化防止剤・調味料・乳化剤・pH調整剤など)

5.人工甘味料は絶対に避ける

6.ファストフード・パン類全般は避ける

※参考書籍
 「摂食・嚥下障害、構音障害に対する舌接触補助床(PAP)の診療ガイドライン」
 一般社団法人 日本老年歯科医学会
 社団法人 日本補綴歯科学会

Q3 歯科金属アレルギーについて教えてください。
A3
●金属アレルギーについて

イオン化した金属が生体内に入り免疫反応を誘導することで金属アレルギーを発症します。皮膚や粘膜に直接接して生じる金属接触アレルギーと、歯科金属や商品に含まれている微量金属が体内に吸収されて生じる全身型金属アレルギーがあります。歯科金属による金属接触アレルギーとして、歯科金属と直接接する部位であれば、頬粘膜に白色レース状病変を示す口腔粘膜苔癬や口唇の一部が浮腫性腫脹する肉芽腫性口唇炎などが挙げられます。肉芽腫性口唇炎の場合には、歯性感染症の関与も考えられます。

●歯科金属アレルギーとは?

歯科金属アレルギーによる症状は、口腔内の金属が接触している部位に現れるとは限りません。
むしろ、口腔領域から離れた遠隔の皮膚に現れることが多いのです。よって、まず患者さんは歯科ではなく、その症状に対する医院を受診することになります。アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2012では、専門医に紹介するタイミングとして、「ガイドラインにしたがって1か月程度治療しても皮疹の改善が得られない場合」と記載されています。そのことを参考にし、医師による適切な治療を1ヶ月以上受けても、症状が改善しない場合には、より専門的な対応が必要であり、その1つとして、歯科金属アレルギーを疑うことができるのです。

●歯科金属アレルギーにかかっている人の割合

年齢別では、男女ともに20~29歳がもっとも多く、次に30~39歳の順となっています。これらを合わせると全体の66.3%(男性70.0%、女性64.9%)です。
年齢分布は4~80歳で、平均年齢は33歳(男性31歳、女性34歳)となっています。

性別は全体で、女性が男性の2.6倍以上となっています。各年齢層すべてにおいても男性より女性のほうが多く、とくに50~59歳では女性が男性の4倍以上で最大の差があるという結果が出ています。

●歯科金属アレルギーによる疾患

疾患数は、アトピー性皮膚炎が67.5%と圧倒的に多く、ついで掌蹠膿疱症9.4%湿疹8.5%の順です。
一方、口腔内違和感・口内炎および口腔扁平苔癬を合わせた口腔領域の症状をみてみると、全体では全疾患中2.1%(男性0.4%、女性2.1%)ときわめて少ないことがわかっています。
つまり、歯科金属アレルギーは、口腔内の金属が原因にあるにもかかわらず、その症状は口腔内にほとんど発症せず、口腔内から遠隔の皮膚に発症することが極めて多いということです。他にも、乾癬、にきび、脱毛症などもあります。

●お口の中の金属はなぜ腐食するの?

お口の中は金属を非常に腐食させやすい環境となっており、様々な原因で腐食します。

■プラークや電解質溶液(唾液)などと、つねに接触する
■有機酸などの金属を腐食する物質が存在する
■飲食物の摂取によってpHも温度も変化する
■金属修復物は隣接する歯間部で隙間腐食を起こす
■異種金属の接触によるガルバニー腐食が起こる
■咬合力による応力腐食が起こる
■歯ブラシなどによる擦過腐食が起こる

 ●金属アレルギーを起こしている可能性のある金属を取り除いたのに、なかなか症状が改善しないのはなぜ?

症例の調査・研究からわかったことをまとめておきます。

1. 金属アレルギーの場合、金属が体内に侵入するルートは、歯科金属だけからはなく、いろいろなルートがあった。

2. アレルギー患者は、金属以外のさまざまなものに反応した。

3. 長期に使用していたステロイドを中止すると、症状が急激に悪化することがあった。

※また歯科金属が原因であったとしても、取り除いた後1年以上症状の改善が見られないこともあります。

(別注1)

・歯科金属以外の金属による悪化にも注意を払いましょう!

全身性接触皮膚炎では、歯科金属だけでなく、金属を多く含む食品から経消化管的に吸収される金属についても注意する必要があります。たとえば、ピーナッツなどの種実類や、大豆やお茶には、ニッケルが多く含まれています。しかも、実際に私たちは加工品の形で摂取するため、知らず知らずのうちにニッケルを吸収している可能性すらあります。また、缶詰製品や金属製調理器具からも金属を吸収することもあります。もちろん、水道水中にも金属は含まれており、長時間、水道を使用していない朝一番の水道水には金属濃度が高いこともわかっています。その場合、流し始めてから1分間以上はその水道水を使用しないなどの対応策も有効です。授乳中の母親がクロムを多く含むチョコレートとココアを毎日多量に摂取していたため、その母乳中にクロムが含まれてしまい、母乳を飲んだ乳児の足の裏に汗疱状湿疹が発症したという報告もあります。

このように、日常生活のなかで、金属を吸収する機会が多いことも知っておきましょう。

(別注2)

・水銀について

歯科金属アレルギーの原因金属に関する科学的にエビデンスレベルの高い根拠は、あまり提示されていません。唯一エビデンスとよべる根拠が示されているのは水銀です。歯科用アマルガムの使用によって周辺粘膜に発症する口腔扁平苔癬の原因が水銀である可能性は高いとされています。

(別注3)

・金属アレルギー発症のメカニズム

にきびや湿疹の原因としてニッケルを多く含むチョコレートなどの食品がアレルギーを引き起こすことはよく知られています。また、現在でも掌蹠膿疱症の治療の第一選択は扁桃腺摘出術であることからもわかるように、体の中の慢性炎症の存在がこれら疾患の原因になっていることもあります。すなわち、歯科金属を原因とするアレルギー疾患があったとしても、それが多因子によって引き起こされている疾患である可能性を考えなければならないということになるでしょう。

金属アレルギーの発症については、上皮を通り抜けた金属イオンが何らかのタンパク質と結合して細胞表面上にくっつけることによって(抗原提示)、アレルギー反応をおこしうる状態(感作)になるとされています。しかし、どのように引き起こされるのかの過程についてはほとんど解明されていません。

つまり、体内に存在する金属、食品として摂取する金属、接触する金属など、あらゆる可能性を否定せず、かつ感染や他疾患の存在にも配慮する必要があるということです。もちろん、金属アレルギーが多因子による疾患であっても、金属の除去だけで症状が改善されることもあるということも押さえておきましょう。

※参考書籍
 「見分けて治そう!歯科金属・材料・アレルギー」
 編著 高永和、高理恵子 クインテッセンス出版株式会社

 「外来・訪問診療のためのデンタル・メディカルの接点」
 クインテッセンス出版株式会社

Q4 20年前に金属アレルギーの疑いでパッチテストを行い、ニッケル(Ni)にアレルギーがあります。今回、金属をたくさん使った歯科治療を受ける予定です。治療前に改めてパッチテストなどを行ったほうがよいですか?
A4

一度ある金属に対しアレルギー反応が出た場合、一生その金属には接触しないのが大前提です。もともとアレルギー体質の方で、日常生活で金属によく触れたり、お口の中に金属を使用したかぶせ物やつめ物が多数ある場合は、新たに他の金属にもアレルギー反応を引き起こす可能性はあります。まずは、パッチテストや血液検査などをお勧めします。

 

◆加藤歯科医院ではパッチテストを実施しておりません。

 

※参考書籍
 「歯科アレルギーNOW 疾患の基礎と臨床のエッセンシャル」
 編集 海老原 全、松村 光明、原澤 秀樹、北崎 祐之
 デンタルダイヤモンド社

Q5 歯科でのパッチテストは、なぜ7日目の判定まで見る必要があるのですか?
A5

歯科で扱うパッチテスト品目には、金属やレジンなどがありますが、パラジウム(Pd)のように遅延反応を起こすものや、ニッケル(Ni)や各種レジン類のように、初期に刺激反応を起こすものがあり、これらを見極めるため、7日目、もしくはそれ以降の皮膚の反応が重要となります。このため、歯科でのパッチテストは試薬貼付後7日目の判定を行います。

 

◆加藤歯科医院ではパッチテストを実施しておりません。

 

※参考書籍
 「歯科アレルギーNOW 疾患の基礎と臨床のエッセンシャル」
 編集 海老原 全、松村 光明、原澤 秀樹、北崎 祐之
 デンタルダイヤモンド社

Q6 パッチテストが終わった後から、テープを貼った部位に湿疹が出てきました。どうすればよいですか?
A6

遅延型アレルギー反応の可能性があります。可能であれば、ただちに反応部位を判定することが望ましいですが、患者さんの来院が難しいようであれば、患者さんに写真で記録を残してもらい、後日、早めに来院していただき、判定をします。検査後1週間経ってから反応が出る場合もあり、部位がはっきりしない場合は、疑わしい元素の身を再検査することも検討しましょう。

 

◆加藤歯科医院ではパッチテストを実施しておりません。

 

※参考書籍
 「歯科アレルギーNOW 疾患の基礎と臨床のエッセンシャル」
 編集 海老原 全、松村 光明、原澤 秀樹、北崎 祐之
 デンタルダイヤモンド社

Q7 検査によるアナフィラキシーショックが心配なのですが・・・
A7

歯科治療の際にアナフィラキシーショックを起こす可能性があるものは、ラテックス、局所麻酔薬、抗生物質、非ステロイド性抗炎症剤、根管貼薬剤、消毒薬、造影剤、生物学的製剤などがあります。薬剤によるパッチテストでアナフィラキシーショックが生じたという報告はあるものの、可能性は低いと思われます。しかし、可能性はゼロではないので、問診により注意が必要と判断された場合には、試薬を貼った後は30分ほど待合室で待っていただき、患者さんの様子を診るなどの対応をとることが望ましいと思われます。

 

◆加藤歯科医院ではパッチテストを実施しておりません。

 

※参考書籍
 「歯科アレルギーNOW 疾患の基礎と臨床のエッセンシャル」
 編集 海老原 全、松村 光明、原澤 秀樹、北崎 祐之
 デンタルダイヤモンド社

Q8 薬をとめると皮膚症状が強く出るので休薬したくないのですが・・・
A8

免疫抑制剤や抗アレルギー薬を服用している場合は、パッチテストの反応も抑えられてしまう可能性がありますので、本来であれば、休薬していただくのが望ましいですが、休薬可能かどうかは処方した医師に確認する必要があります。休薬が困難な場合には、正しい判定が得られない可能性があることを患者にご理解いただいた上で、検査を行うこととなります。

 

◆加藤歯科医院ではパッチテストを実施しておりません。

 

※参考書籍
 「歯科アレルギーNOW 疾患の基礎と臨床のエッセンシャル」
 編集 海老原 全、松村 光明、原澤 秀樹、北崎 祐之
 デンタルダイヤモンド社

Q9 なぜ歯ぎしりが「問題」になるのですか?
A9

を失う原因として、一般的によく知られているのはむし歯と歯周病です。でももうひとつ大きな原因があります。それは「過剰な力」です。
歯ぎしり・くいしばりによる過剰な力は、知らず知らず患者さんのを傷め、治療後の経過にも悪い影響を与えるため、歯科医師にとってたいへん頭の痛い問題となっています。
にかかる力は、たとえば奥歯では60kg以上にもなるといわれます。食事のとき以外にもこのような強い力が日常的に加わり続けると(上下の歯は、食事のときや唾液を飲み込むとき以外、離れているのがふつうです)、さすがの硬い歯も、あるときさすがに持ちこたえられなくなり、壊れてしまうのです。

※参考書籍 「nico 2009.11 クインテッセンス出版株式会社」

Q10 ニッケル(Ni)にパッチテスト陽性があり、義歯は入れておらず、すべて自費の補綴物を装着したので、ニッケルは口腔内に含まれていないと思ってよいでしょうか?
A10

義歯による欠損補綴がなく、インレー(詰め物)やクラウン(被せ物)、ブリッジなどの治療がされている口腔内では、特にメタルボンドクラウン(MB冠)が存在する口腔内で、時としてそのメタルフレームにニッケルクロム合金が使用されているものが発見される場合があります。見た目や金属だけでは判断できませんので、メタルボンドクラウンは注意が必要です。その場合、金属成分分析検査をすることなく、合金の金属組成を判断することは困難です。

 

※参考書籍
 「歯科アレルギーNOW 疾患の基礎と臨床のエッセンシャル」
 編集 海老原 全、松村 光明、原澤 秀樹、北崎 祐之
 デンタルダイヤモンド社

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