他疾病
Q1 | 全身疾患がお口の健康にどれだけ影響するのか教えてください。 |
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A1 | 全身疾患とお口の健康には大きな関わりがあります。 どんな全身疾患により、どんなことが起こされるのか、そしてその対策はどのようなものがあるかについて紹介します。 全身疾患①:高血圧全身疾患②:虚血性心疾患全身疾患③:心弁膜症(人工弁)、その他心臓に人工物(人工血管・ステント)※ステントの場合抗生物質の事前服用が不要なことが多いが、心臓の評価によりたまに必要と返事がくることがあるため、念のために問い合わせはする。 全身疾患④:不整脈全身疾患⑤:脳虚血性疾患全身疾患⑥:糖尿病全身疾患⑦:がん全身疾患⑧:骨粗鬆症
※参考書籍 |
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Q2 | 新型コロナウイルス感染症と喫煙の関係について教えて下さい。 |
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A2 | 喫煙も新型コロナのリスクファクターとされています。また、新型コロナ以外の呼吸器感染症も、喫煙者は感染しやすく重症化しやすいことが分かっています。 新型コロナウイルス感染症の非喫煙者と比べた喫煙者のリスク・重症化リスクは1.98倍 Guo FR. Smoking Links to the Severity of Covid-19: An Update of a Meta-Analysis. J Med Virol 2020. ・死亡リスクは1.79倍 Mehra MR et al. Cardiovascular Disease, Drug Therapy, and Mortality in Covid-19. N Engl J Med 2020. その他の感染症の非喫煙者と比べた喫煙者のリスクインフルエンザ・感染リスクは5.69倍 Laerence H et al. 2019. ・重症化リスクのうち、入院リスクは1.5倍 ・重症化リスクのうち、集中治療室に運ばれるリスクは2.2倍 Han L et al. 2019. MERS(中東呼吸器症候群)・感染リスクは3.14倍 Alraddadi BM et al. 2014. ・死亡リスクは2.55倍 Nam HS et al.2017. ※SARS(重症急性呼吸器症候群)については、統計学的な有意差を示す論文は認められない。 市中肺炎(病院外の人に発生する肺炎)・感染リスクは2.17倍 Baskaran V et al. 2019. ※参考書籍 「nico 2020.5 クインテッセンス出版株式会社」 |
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Q3 | 加齢で口腔機能にどのような変化がありますか? |
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A3 | 福岡県に在住する80歳の住民約700人を5.5年間追跡し、口腔機能と死亡との関連を検討した研究によると、残存歯数、歯磨きの回数、定期健診の回数が多い人ほど死亡リスクが低いことが報告されています。1) また、残存歯数は寿命に関係するさまざまな因子の影響を調整したうえでも長寿と関係があり、残存歯数と生存期間との関連を結ぶ経路として、口腔機能低下による栄養摂取の変化が考えられます。すなわち、歯の喪失によって野菜類の摂取量が減少し、抗酸化ビタミンや食物繊維などが不足しやすくなります。また、タンパク質の摂取も減少することが、その要因として考えられます。 8020達成者が51.2%(平成28年歯科疾患実態調査)となり、残存歯数の増加がみられたとはいえ、高齢者においては、加齢とともに有床義歯を必要とする人が急速に増加します。したがって、機能する残存歯の増加や有床義歯補綴による口腔機能の維持・改善が極めて重要になります。 1)Ansai T, et al: Relationship between tooth loss and mortality in 80-years-old Japanese community-dwelling subjects. BMC Public Health, 10: 386, 2010. ※参考書籍 |
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Q4 | 歯周病と心臓病の関係について教えてください。 |
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A4 | 歯周病は心臓病のリスクを高める可能性があります。歯周病になると、その原因となる細菌が血液中に入り、心臓などに感染をひきおこす場合があります。 狭心症・心筋梗塞とは、動脈硬化により血管が狭くなったり、ふさがったりして、心筋に血液供給がなくなり死に至ることもある病気です。 動脈硬化は、不適切な食生活や運動不足、ストレスなどの生活習慣が要因とされていましたが、別の因子として歯周病原因菌などの細菌感染がクローズアップされてきました。歯周病原因菌などの刺激により動脈硬化を誘導する物質が出て血管内にプラーク(粥状の脂肪性沈着物)ができ、血管の通り道は細くなります。プラークが剥がれて血の塊ができると、血管が詰まる可能性があります。 心臓の内膜や弁膜に障害のある方にみられる細菌性心内膜炎は、その原因のほとんどが口の中にいる細菌ですので、予防には口の中を清潔に保つケアが欠かせません。 血圧、コレステロール、中性脂肪が高めの方は、歯周病があれば、しっかり治療し、心臓病のリスクを遠ざけたいものです。 ※参考サイト 「日本臨床歯周病学会」 |
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Q5 | 歯周炎は肝疾患の発症リスクと関連がありますか? |
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A5 | 「4mm以上の歯周ポケットが多く存在する場合、将来的に重度の肝疾患発症リスクが高まる。」という研究報告があります。 Jaana Helenius-Hietala, Anna Liisa Suominen, Hellevi Ruokonen, Matti Knuuttila, Pauli Puukka, Antti Jula, Jukka H Meurman, Fredrik Åberg: Periodontitis is associated with incident chronic liver disease-A population-based cohort study. Liver International, 39(3): 583-591, 2019.
※参考書籍 |
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Q6 | 歯周病の人は脳梗塞になりやすいのですか? |
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A6 |
脳梗塞とは、脳や頸動脈、心臓から血の塊やプラークが飛んで来て脳血管が詰まる病気です。歯周病の人はそうでない人の2.8倍脳梗塞になりやすいと言われています。 血圧、コレステロール、中性脂肪が高めの方は、動脈疾患予防のためにも歯周病の予防や治療は、より重要となります。 ※参考サイト 「日本臨床歯周病学会」 |
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Q7 | 歯周病の人は関節炎・腎炎を発症しますか? |
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A7 |
関節炎や糸球体腎炎が発症する原因のひとつとして、ウイルスや細菌の感染があります。関節炎や糸球体腎炎の原因となる黄色ブドウ球菌や連鎖球菌の多くは、歯周病原性細菌など口腔内に多く存在します。 これらのお口の中の細菌が血液中に入り込んだり、歯周炎によって作り出された炎症物質が血液に入り込むことで、関節炎や糸球体腎炎が発症することがあります。 ※参考サイト 「日本臨床歯周病学会」 |
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Q8 | インプラント治療後、腎疾患が発覚し、透析することになりました。影響ありますか? |
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A8 | 進行した骨・ミネラル代謝異常(CKD)や人工透析の患者さんは、尿毒症環境と透析による細胞性免疫異常によって易感染性状態になっています。 そして、ステロイド薬を長期服用していることも多く、さらなる免疫力の低下と骨粗しょう症の発症もみられ、これがインプラントの脱落やインプラント周囲炎のリスクファクターとなることが予想されます。 さらに、骨量減少に対する治療としてビスフォスフォネート製剤が投与されていることもありますので、顎骨壊死や骨髄炎の発症にも十分な注意が必要です。 ステロイド薬を3カ月以上投与されている患者さんは、骨代謝学会のガイドラインの推奨によって、ビスフォスフォネート製剤が併用されている可能性が高いことに留意しなければなりません。 インプラントの患者さんは、定期的な歯科医院における専門的口腔ケアを、健常者よりも厳重に行いましょう。
※参考書籍 |
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Q9 | インプラント治療後、肝炎を発症しました。影響ありますか? |
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A9 | ウイルスに感染して急性肝炎を発症した場合、食欲不振や悪心・嘔吐の症状が出る可能性があるため、口腔清掃が不十分になります。 悪心・嘔吐によりブラッシングが困難となることに加え、治療は安静と肝庇護剤の点滴や栄養補給であるため多くは入院加療となることから、入院中は院内の歯科にブラッシングを含めた口腔管理を依頼するのが一番よいと考えられます。劇症肝炎にまで進行した場合は、もちろん入院加療が必要となりますが、急性の重篤疾患ですので、安定するまでは歯科のアプローチは困難となります。回復してから口腔の再評価を行い、その評価を基に口腔管理を行わなければなりません。 一般的に、B型急性肝炎は慢性化せずに治癒しますが、C型肝炎は大部分が慢性肝炎に移行します。治癒すればもちろん問題はなく、慢性肝炎になったとしても埋入されたインプラントに対して何か特別な対応を直ちに行う必要はありません。これまでどおり毎日のブラッシングと、インプラント治療を受けた歯科医院での定期的な診察を受けるようにしてください。
※参考書籍 |
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Q10 | インプラント治療後、肝硬変が発覚しました。影響ありますか? |
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A10 | 肝硬変になった場合、注意が必要です。 進行するまでは慢性肝炎と同じような対応を行うことができますが、進行した肝硬変(肝がんを含め)では、肝臓で合成される凝固因子の低下を招いて出血傾向がみられるようになり、歯肉出血が起こりやすくなります。すなわち、肝硬変によって肝組織の線維化が進み、門脈血流のうっ血により門脈圧亢進が起こり、脾腫が生じるようになります。 その結果、血小板減少や肝細胞によるタンパク合成能の低下のため血液凝固因子の産生量の低下を起こし、一次止血・二次止血が障害され易出血性となります。 ブラッシングなどの刺激によっても出血するようになるため、出血を恐れてブラッシングを含めた口腔ケアが消極的になりがちです。 このような状態になるとインプラント体に付着したプラークの除去が困難となり、周囲歯肉に炎症を惹起して歯周炎を発症したり歯周炎を悪化させたりし、より出血しやすくなるという悪循環に陥ります。こうして口腔のケアはさらにおろそかになり、インプラント周囲炎を発症する危険性が高くなります。
※参考書籍 |
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