治療内容・方法について
Q471 | インプラント治療を受けた歯科医院とは別の歯科医院でメインテナンスを受けてもいいですか? |
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A471 | 基本的には、インプラント治療を受けた歯科医院でメインテナンスを受けるのが望ましいでしょう。ただし、引っ越しなどのやむをえない事情もあります。クリーニングだけなら問題ないのですが、補修や再治療を受けることになった場合、治療時の情報が必要になります。インプラントメーカーは日本国内だけでも30社近くあり、同じメーカーでもサイズや種類はさまざまです。例えばインプラントを取りはずすことになった場合、そのために使えるドライバーは、インプラントのメーカーや種類によって異なります。インプラントと上部構造をどのように装着しているかによっても、取りはずし方法は変わってきます。 このため、使用したインプラントのメーカーや種類、装着方法をメインテナンスを受ける予定の歯科医院に伝えたうえで、対応してもらえるかどうかを確認しましょう。できるなら、「口腔インプラントカード(手帳)」を作成してもらい、次の歯科医師に治療データを引き継いでもらうのが望ましいといえます。
※参考書籍 |
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Q472 | お口の中にインプラントが入っていると、CTやMRIなどの画像検査を受ける際に影響がありますか? |
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A472 | あごのCT検査の場合、インプラント部分にX線が当たると、画像上わずかに影響が出ることがありますが、ほかのからだの部位のCT検査に影響はありません。 MRI検査の場合は、使用している金属によっては、注意が必要です。鉄やコバルト、ニッケルなどの強磁性体を装着している患者さんのMRI画像は歪み、特に脳領域の影響が強いことが脳疾患を生じた際に懸念されています1),2)。 しかしながら、すべての金属がMRIで金属アーチファクト(撮影時に発生するノイズ)、発熱、磁力に伴う位置変化が生じるわけではありません。磁場にさらしても磁化しない非磁性体金属(チタン、金、銀、パラジウムなど)は、MRIに対して安全で影響のない金属とされています。 現在では、体内に埋め込む医療用器具である脳動脈瘤のクリップや骨折時の金属プレートは非磁性体のチタン製となっています3),4)。 1)Kaneda T, Minami M, Curtin HD, et al. Dental bur fragments causing mental artifacts on MR images. AJNR 1998; 19: 317-319. 2)Asano S, Kaneda T, Fukuda T, et al. Influence of metal artifact by orthodontic appliances on brain MRI. Metal artifact experiment and young volunteer study. Int J Oral-Med Sci 2016; 14(4): 74-81. 3)岡野友宏, 小林 馨, 有地栄一郎編. 歯科放射線学. 第6版, 東京:医歯薬出版, 180-190, 2022. 4)日本口腔外科学会編集. 口腔外科研修ハンドブック. 第1版, 東京:医歯薬出版, 15-21, 2022. ※参考書籍 「日本口腔インプラント学会誌 2023.9 vol.36 No.3」 |
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Q473 | 歯科に行って歯を診てもらったら死んでいる歯があると言われました。今まで全然痛くなかった歯なのにそんなことってあるんですか? |
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A473 |
細菌漏洩と重度の歯髄炎(歯の中の神経の炎症)を起こしていても、臨床的にいかなる症状も示さないことがあります。この事実は、臨床症状がないことが成功の指標であると誤って考えられていることを示唆しています。 また、歯科学においては、疼痛の有無は根拠に乏しい指標と言えます。残念ながら多くの場合、歯科医師から見える臨床症状と組織学的歯髄の変性状態には相関関係はありません。
※参考書籍 |
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Q474 | 移植の利点・欠点を教えてください。 |
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A474 |
同一口腔内に保存不可能な歯と不必要な歯(ドナー歯)がある場合、移植する利点・欠点がいくつかありますのでご紹介します。 【移植の利点】1.移植によって、取り外しできる入れ歯を装着しなくてもよい 【移植の欠点】1.一時的に生体に外科的刺激が加わる ※参考書籍 「シリーズ MIに基づく歯科臨床vol4 自家歯牙移植」 |
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Q475 | ファイバーコアを入れる患者さんは多いですか? |
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A475 | 現在ではファイバーコアが歯にあまり負担をかけず、歯の根っこを折ってしまうリスクが少ないことを多くの方に理解していただき、少しずつファイバーコアを入れる方は増えています。 |
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Q476 | 根の先に相当する部分が腫れ、膿が出ています。痛みはないのですが、すぐに治療の必要がありますか? |
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A476 |
長期間サイナストラクト(根の先に膿をもち、これが口腔内とつながって、その穴から膿が出ている状態)が存在したため、口腔内の根尖部を直接結ぶ経路が存在し、唾液や滲出液が両方向に行き来し、根尖孔外に歯石形成が認められるようになります。よって、通常の根管治療が奏功しなくなります。 すぐに歯科医院で治療してもらいましょう。
※参考書籍 |
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Q477 | 移植の治療の流れを教えてください。 |
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A477 | 受容側に歯が残っている場合、その歯の抜歯と移植を同時に行う場合とそうでない場合があります。同日に行わない場合は、受容側の抜歯を行ってから1ヶ月半以内に移植をしなければなりません。2ヶ月以上経過すると受容側の治癒が進行し、骨の高さや幅が減少し、移植が困難になることがあります。また、治癒機転から受容側に歯根膜組織が残存していたほうが予後がよい(抜歯同時移植に利点がある)ので、移植治療では受容側の抜歯の時期を慎重に決めなければなりません。その一方で、ドナー歯をかぶっている歯肉で完全に塞ぐことができるほどの十分な量の歯肉が受容側にない場合は、抜歯同時移植は避け、ある程度角化歯肉ができた時点(抜歯後3~5週間)で移植を行うほうがよいでしょう。 1.移植と固定とパック(外科当日)
※参考書籍 「シリーズ MIに基づく歯科臨床vol4 自家歯牙移植」 |
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Q478 | 形を整えて金属の型や土台の型を取った後、仮のフタをしてもらいました。 フタの所で噛んだり、フタの所を磨いたりしてもいいですか? |
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A478 | 仮のフタなので外れやすく、硬いものや粘着性のあるものを噛むのはやめておいて下さい。 歯みがきについては支障ありません。 もし外れてしまった場合は、すぐに来院して頂き、消毒後フタをしますのでご安心下さい。 |
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Q479 | 根の治療は終わったのですが、先生からは長期的評価が必要と言われました。どうしてですか? |
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A479 |
根尖性歯周病変が治療後に最終的に治癒する場合、エックス線写真上で骨形成の兆候は1年後に見られます。しかし、完全な治癒過程には4年以上かかることもあります。 根尖性歯周炎(神経の炎症により根の先が膿をもつ病変)をともなう歯の歯内療法の主な目的は既存病変の改善であって、その安定を目的とするものではありません。
※参考書籍 |
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Q480 | 交通事故で歯が抜け落ちてしまいましたが、そんな歯でも再植ができると聞きました。脱落後、どのくらいの時間までなら再植できますか? |
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A480 | 再植の成功は、主に再植歯に付着している歯根膜の生死に依存しています。よって、再植歯の歯根膜を生きたまま口腔外で保存することが大切になります。歯根膜はpHや浸透圧の変化に弱いものです。乾燥状態で18分間放置されても大半の歯根膜が生存しているのに対し、30分では半分以上、120分では大半が死滅するというデータもあります。一方、生理食塩水中では、歯根膜は120分でも大半が生存可能ですが、水道水中では120分で大半が死滅するということも分かっています。牛乳や近年開発された保存液に浸しておけば、長時間(数時間から24時間)歯根膜を生存させておくことが可能です。とはいっても、生理食塩水中でも時間の経過とともに歯根膜細胞の壊死を誘発しますので、速やかに外科術式を完結させなければなりません。 |
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