歯ぎしり

Q1 歯ぎしりがあるといわれますが、スプリント(マウスピース)は効果ありますか?
A1

機能的目的はなく無意識に歯を繰り返し擦り合わせたり(グラインディング)、食いしばったり(クレンチング)する人のことを、「ブラキシズムがある」といいます。

スプリントを装着してもブラキシズムは治りません。スプリントがブラキシズムの治療には効果はありません。役に立つとすれば、歯の保護だけです。歯の摩耗や破折を防ぐということですね。

睡眠時はブラキシズムを睡眠と関連した運動障害と分類されている1)ため、心理的ストレスが原因のひとつだと考えられていますが、その他にタバコが原因だと言っている人もいるし2)、酒やコーヒーといった嗜好物が原因であるとか2)遺伝が関与していると唱えている人もいます2)

いずれにしてもいろんなリスクファクターが挙げられていますが、これだけを治せばブラキシズムの治療になると言っている人はいません。

疫学調査によると、ブラキシズムは若い人が多く、高齢者に少ないという傾向があります。たとえば、発生率が小児で14%、成人で13%、年配者で3%という報告があります2)。ということは、年を取ると自然に治ってしまうことがあるということです。いずれにしても、ブラキシズムがあっても何の症状も問題も生じていなければ治療をする必要はないと考えた方がいいかもしれませんね。

何か症状が出た場合は処置が必要か?というと、まずはその症状に対する治療を行う、つまりブラキシズムの原因は分からないので、対症療法のみ行うということになります。

 

1) American Academy of Sleep Medicine : Sleep – related bruxism. In ” The International Classification of Sleep Disorders, 3rd edition, edited by Darien,LL.” American Academy of Sleep Medicine, 2014, P. 189-192

2) Bertazzo – Silveria,E. et al. : Association between sleep bruxism and alcohol, caffeine,tobacco, and drug abuse. A systematic review. J.A.D.A., 147: 859-866, 2016

 

※参考書籍
 「近代口腔科学研究会雑誌Vol.45 No.1 P54~P60『シンポジュウム ブラキシズムを有する患者の対応について』」
 近代口腔科学研究会

Q2 夜間睡眠時ブラキシズムは、日中覚醒時ブラキシズムと連動しているとよく聞きますが、本当ですか?
A2

同一患者内の日中の筋活動と睡眠時の筋活動に連動が見られたとする報告1)などがあります。

一方で、多人数の患者を対象に睡眠時筋活動と日中筋活動の関係を調べた研究で、日中覚醒時と夜間睡眠時の筋活動の多寡は必ずしも同じ傾向を示さず、睡眠時に多いが日中は少ない場合、逆に日中は多いが睡眠時は少ない場合など、様々なパターンがあり、日中覚醒時と夜間睡眠時の筋活動波形数に相関が全く認められなかった2)ものも見られます。

まだ相関関係があるとは断定できません。

1)Sato M, Iizuka T, Watanabe A, et al.: Electromyogram biofeedback training for daytime clenching and its effects on sleep bruxism. J Oral Rehabil, 42(2): 83~89, 2015.

2)三上紗季、山口泰彦、渡辺一彦、他:日中覚醒時と夜間睡眠時における咬筋筋活動の発現頻度は関連するか?日顎誌, 26(第27回大会特別号):126, 2014.

※参考書籍
 「日本歯科医師会雑誌 2023 Vol.75 No.12」 日本歯科医師会

Q3 なぜ歯ぎしりが「問題」になるのですか?
A3

を失う原因として、一般的によく知られているのはむし歯と歯周病です。でももうひとつ大きな原因があります。それは「過剰な力」です。
歯ぎしり・くいしばりによる過剰な力は、知らず知らず患者さんのを傷め、治療後の経過にも悪い影響を与えるため、歯科医師にとってたいへん頭の痛い問題となっています。
にかかる力は、たとえば奥歯では60kg以上にもなるといわれます。食事のとき以外にもこのような強い力が日常的に加わり続けると(上下の歯は、食事のときや唾液を飲み込むとき以外、離れているのがふつうです)、さすがの硬い歯も、あるときさすがに持ちこたえられなくなり、壊れてしまうのです。

※参考書籍 「nico 2009.11 クインテッセンス出版株式会社」

Q4 むし歯が多いわけでもなく噛み合わせもとくに悪くないのになぜか詰め物がすぐ取れてしまったり治療した歯が折れるので悩んでいます。
A4

もしかして、歯ぎしりくいしばりを習慣的にしているのかもしれません。
「力」は直接目に見えず気づきにくいですが、の健康を損なう大変なトラブルメーカーです。

※参考書籍 「nico 2009.11 クインテッセンス出版株式会社」

Q5 朝起きたときあごが疲れています。寝ているときに何か力がかかっているのですか?
A5

もしかしたら就寝中に、歯ぎしり食いしばりをしているのかもしれません。ギリギリという音で気づきやすい歯ぎしりに対して、グーッと強く噛む食いしばりは、音がしないため以外に気づいていない方が多いのです。

詳しくは以下をご覧ください。

 

睡眠中に生まれる無意識の力とは?

歯ぎしり・食いしばりとは、眠っているとき、また起きているときに歯を強くギリギリとこすり合わせたり、グッと強く噛み込んだりする行動を言います。ストレスの発散のために行われているのではないかともいわれ、無意識に行われる点に特徴があります。

なかでも問題になりやすいのが睡眠中の歯ぎしり・食いしばりです。自覚さえすれば、止めることも可能な日中の行動に対し、睡眠中に無意識に行われる歯ぎしり・食いしばりは、自分で気づいて止めるということができません。

 

力に対する防御機構が働かない?

目が覚めているときに強い力で噛み込むと、その情報をセンサーがキャッチして、「これ以上強く噛むと痛くなるな」「破壊してしまうな」という制御が働きます。しかし、睡眠中の場合、このセンサーは目が覚めているときほどは敏感に働きません。そのため、睡眠中の歯ぎしり・食いしばりは、日中に行うものよりも、ずっと強い力になりがちです。強い歯ぎしり・食いしばりが毎晩続くと、被せ物を入れた歯が折れた歯が欠けた・削れたといった問題が起きやすくなってしまいます。

 

そんなあなたにナイトガード!

睡眠中の歯ぎしり・食いしばりは無意識で行われ、自覚的に減らすことができないのが悩みの種。ストレスが原因だとしても、一朝一夕に原因を取り除くのは現実的に難しい場合も多々あります。そこで役に立つのがマウスピースの一種で、就寝中に使うナイトガードです。歯科医院で製作でき、装着して眠ると歯ぎしり・食いしばりの害を確実に減らすことができるスグレものです。

もうひとつ紹介したいのが、睡眠時無呼吸症候群の治療用マウスピースのオーラルアプライアンスです。歯ぎしり・食いしばりの発生には睡眠の質が影響することが明らかになっています。

歯科がご提供するマウスピースで歯ぎしり・食いしばりの害を防ぎ、睡眠の質を上げて、歯とからだの健康を守っていきましょう。

 

※参考書籍 「nico 2015.8 クインテッセンス出版株式会社」

Q6 歯医者さんでブラキシズムを指摘されました。自分ではしている自覚はなかったですし、家族も「気づかなかった」というのですが、なぜ先生には分かったのでしょう?
A6

舌や粘膜に歯のあとがクッキリ付いていたり、歯が咬耗していたり、欠けていたりといったさまざまな痕跡が口のなかにあったのでしょう。食いしばりは音が静かなので、していても気づいていない方は意外と多いです。

代表的な痕跡

1.舌に歯型がある!

舌に歯型がある

強く噛むと、舌が緊張し歯列を圧迫するので歯型が舌にクッキリ付きます。

2.歯が削れている!

歯が削れている

毎晩のように歯ぎしりをしていると、歯がひどく削れてしまいます。

3.頬の粘膜に歯型がある!

頬の粘膜に歯型がある

強く噛むと、頬の筋肉が緊張し奥歯にギュッと押し付けられるので、その痕跡が残ります。

4.あごの骨(歯槽骨)が隆起!

あごの骨(歯槽骨)が隆起

歯を守って長年歯ぎしり・食いしばりに耐えている歯槽骨が盛り上がっています。

※参考書籍 「nico 2015.8 クインテッセンス出版株式会社」

Q7 歯ぎしりでどんなことが起こるの?
A7

次のようなことが考えられます。

1.過剰な磨耗とチップ

1)自分で自分の歯を削ってしまう

習慣的に強い力で歯ぎしり・食いしばりをしていると、歯が異常に磨耗したりエナメル質が欠けたりして、内側にある象牙質や、ときには神経がむき出しになってしまうことがあります。また、硬い金属やジルコニアなどの被せ物と噛み合っている歯の場合、より削れやすいので注意が必要です。

2)歯のチップにご用心!

力が集中してかかりやすい場所のエナメル質に微細なヒビが入って楔状にチップすることがあります。プラークが溜まりやすいので、象牙質を傷めないようにやさしくブラッシングしてむし歯を防ぎましょう。

3)むし歯のリスク増!

象牙質や神経がむき出しになると、刺激が伝わりやすくなるため知覚過敏の、そして細菌が侵入しやすくなるためむし歯のリスクが高まります。

 

2.歯周病の悪化

1)過剰な力が歯槽骨へのダメージに

歯ぎしり・食いしばりによる過剰な力が加わると、歯を支えている歯根膜や歯槽骨などの周囲の組織が圧迫を受けます。歯周病(歯周炎)の患者さんに、炎症による破壊に加えて過剰な力がかかることで、歯槽骨がより失われやすくなり、歯が揺さぶられて動いてしまうなど、症状が悪化しやすくなってしまいます。

2)歯周病の治療への悪影響も

歯ぎしり・食いしばりの力が加わり続けていると、歯周病の治療をして炎症をよく取り除いても、歯の周囲の組織の回復に不利になってしまいます。歯周病になっている歯が毎晩歯ぎしりで揺さぶられていると歯槽骨が失われるスピードが速くなり歯が倒れる、動くなどの問題も起きがち。炎症を取り除く治療とともに力のコントロールがとても重要です。

 

3.被せ物が壊れる、歯が折れる

1)被せ物が欠ける/外れる!

歯ぎしりによる咬頭(歯の山になっている部分)にひっかけるような強い力や、食いしばりの強い力が日常的に加わっていると、被せ物に焼き付けてある白い材料(レジンやセラミックス)が割れて剥がれてしまうことがあります。また、被せ物全体が歯から外れてしまうこともあります。

2)歯が折れる/割れる!

神経を取って被せ物をしてある歯は、なかに芯棒を立てて補強をしてあります(土台・コア)。通常の噛む力であればこの芯棒が治療の耐久性を高めますが、歯ぎしりや食いしばりの過剰な力が日常的に加わると歯は徐々に傷み、ついには折れて抜歯が必要になることがあります。

※金属の芯棒の場合、硬くて丈夫ですが、力を受けた時に歯と一緒にたわまないため、歯を傷めてしまうことがあります。現在ではたわむ芯棒である「ファイバー」に注目が集まっています。

 

4.インプラントが壊れる

1)上部構造が壊れる!

歯ぎしり・食いしばりの力によって、上部構造のレジンやセラミックスが欠けてしまいます。欠けたところを補修したり、上部構造全体を作り直したりして修理します。

2)インプラント体が折れる!

過剰な力のために、チタン製のインプラント体がポキリと折れてしまうこともあります。こうなると修理は効かずインプラント体を抜かなければなりません。

 

5.顎関節症

1)痛い!音がする!口が開きにくい!

顎関節に加わる過剰な圧力のために顎関節症を発症することがあります。咬筋や側頭筋の疲労、力の衝撃や歯の咬耗による噛み合わせの変化が原因の顎関節の傷み関節円板のズレなどが原因で起こります。

 

※参考書籍
 「nico 2009.11 クインテッセンス出版株式会社」
 「nico 2015.8 クインテッセンス出版株式会社」

Q8 仕事のノルマがきつくなってきた頃から毎朝あごがダルく歯がジーンとします。歯ぎしりの原因はストレスだそうですが仕事を減らすわけにもいかず、困っています。
A8

ストレスと無縁に暮らすのは難しいものです。それにストレスだけが原因とは限りません。就寝中の歯ぎしり・食いしばりから歯を守るナイトガードの使用をおすすめします。

※参考書籍 「nico 2015.8 クインテッセンス出版株式会社」

Q9 歯ぎしりがひどいと相談すると、マウスピースを入れると治ると言われたのですが、本当?
A9

マウスピース(ナイトガード)はパラファンクション(歯ぎしり、食いしばり、噛みしめなど)をなくす装置でも、咬合力を弱める装置でもなく、あくまでも歯や歯を支える組織を守るためのものです。

マウスピース(ナイトガード)を装着したときの効果

パラファンクションの要因は、情動ストレス(中枢性の要因)、咬合(末梢性の要因)、遺伝的要素の3つが関与すると言われています。

歯ぎしりはマウスピースでは取り除けません。

※参考書籍
 『実践!「効果のあがる」スプリント治療の進め方』
 著 今井俊広・今井真弓 インターアクション株式会社

Q10 市販品のマウスピースをナイトガードとして使っても大丈夫ですか?
A10

熱湯で軟らかくして自分で成形するタイプの市販のマウスピースが人気のようです。お手頃価格のものが、おもにスポーツ用マウスガードとして販売されています。こうした市販品のマウスピースを、歯ぎしり・食いしばり予防のナイトガードとして使っている方もいるようですが、これは止めてください

熱湯で熱くなった樹脂を、自分の口の中で手早く思い通りに成形するのは至難の業です。成形するため樹脂をグッと深く噛み込む際、噛み方が少しでも斜めにゆがむと、そのゆがみの影響を、毎晩の装着中に長時間受けることになってしまいます。

また、噛み合わせ面の厚みが均等にでき上がると、マウスピースが奥歯に引っかかってうまく噛めず、顎関節の蝶番(ちょうつがい)を損傷させてしまいます。ナイトガードの製作には、歯科医師や歯科技工士による成形と調整が必須なのです。

市販のスポーツ用マウスガードは、基本的には試合や練習などの限られた時間に使用するものです。7時間、8時間と長く、しかも毎日欠かさず装着し続けるナイトガードとは、役割が根本的に異なります。それに、長時間の装着が必要なプロなど、パフォーマンスの向上が求められるスポーツ選手は、歯科医院で作ったカスタムメイドのマウスガードを使っているのです。

歯の健康を守るために使った装置で、噛み合わせや顎関節の健康を損なってしまってはガッカリです。ナイトガードは歯科医院で作ってもらって使いましょう。

 

※参考書籍 「nico 2015.8 クインテッセンス出版株式会社」

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