誤嚥性肺炎

Q1 「むせ」はなぜ起きるのですか?
A1

「むせ」とは、気管に余分なものが入らないように働いている、からだの防御機構です。気管に誤って食べ物や飲み物、唾液が入り込みそうになると、反射的に「ゴホン、ゴホン」とむせます。食べ物や唾液といっしょに気管から肺へとばい菌が入らないように、気管から追い出し、守っているのです。
私たちは生まれつき、からだを守る本能である「むせる力」を持っています。

※参考書籍 「nico 2012.12 クインテッセンス出版株式会社」

Q2 誤嚥性肺炎について教えてください。
A2

誤嚥性肺炎って何?

飲み込む力も、むせる力も弱くなって、食道へと流れるはずの唾液や食べ物、飲み物が、誤って気管から肺へと入ってしまうことが原因で起きる肺炎です。高齢者に起きやすく、ひどく体力を奪うため、寝たきりになる重大なリスクとしてクローズアップされ、広く知られるようになりました。
人間は空気の通り道(気管)と食べ物の通り道(食道)が、のどのところで交差しています。つまり、もともと誤嚥をしやすい構造になっているのです。
しかしさいわいなことに、筋肉が働き気管の入口にすばやくフタをして、食道のほうへと流れを切り替える「飲み込む機能」が発達しているため、おかげでゴックンとスムーズに飲み込むことができます。また、食べ物がうっかりと気管に入りそうになったときは、反射的に「むせ」が起き、気管に入り込むのを防ぎます。
ところが、そうした働きをする筋肉が年齢とともに衰え、うまく切り替えができなくなったうえ、むせも起きにくくなると、食道へと流れていくはずのものが、気管へスルリと入ってしまいます。これが誤嚥性肺炎の原因です。

誤嚥から肺炎発症のメカニズム

飲食物などが気管から肺に入り、炎症を引き起こします。

①飲食物を誤嚥する、②誤嚥したものが肺に入る、③炎症を起こす

誤嚥しても誤嚥性肺炎が起こるとは限らない

誤嚥をしても誤嚥性肺炎が起きないこともあります。肺に誤嚥された飲食物などに有害な細菌が含まれていない場合や、細菌に対する抵抗力(免疫力)が強い場合には発症しません。

つまり、「誤嚥」、「細菌」、「抵抗力の低下」の3つが誤嚥性肺炎の大きな原因となります。それぞれについて、対応策をご紹介します。

1.誤嚥の防止

誤嚥とは、嚥下がうまくできないことです。つまり、誤嚥を防ぐには、嚥下を上手に行う必要があります。

嚥下とは、飲食物などを飲み込むことです。これを上手に行うためには、飲み込む前の段階である口腔の機能も大切です。嚥下に関係する口腔機能としては、飲食物を取り込む、咀嚼する、飲み込みやすいようにまとめる(食塊形成)、喉に送り込む、などがあります。これらの機能では、唇・歯・頬・舌が大切な役割を果たします。

虫歯で歯に穴が開いている、歯が痛くてかみ合わせることができない、歯が抜けたまま放置している、などの状態では咀嚼がうまくできませんので、歯科医院を受診してください。

喉に送り込まれた食塊が、誤って気管に入らずに正しく食道に入るためには、気管の入り口にある声門がしっかりと閉じていることが必要です。声門を鍛える方法は幾つもありますが、人とおしゃべりする、合唱やカラオケを楽しむといった日常生活でできることが多くありますので、楽しみながら実践してください。

食事時のむせなどが気になる場合は、食事するときの姿勢を見直すことが有効な場合があります。背もたれに寄り掛からず体をまっすぐにし、顎を引いた、やや前かがみの姿勢が理想です。

また、食べ物を口に詰め込みすぎるのも禁物です、1回で飲み込める量を、ゆっくりよくかんで食べることも誤嚥防止に役立ちます。

食事時の正しい姿勢

顎は引き気味、体とテーブルの間に握りこぶし一つ分くらいの隙間、テーブルの高さは腕を載せたときに肘が90°に曲がるくらい、背もたれに寄り掛からずまっすぐに、椅子の座面の高さは膝が90°に曲がるくらい、足の裏がきちんと床(または足置き台など)につく

  • 椅子が高すぎるときは床に足置き台(雑誌などで代用可能)を置いて調整
  • 椅子が低いときは座布団などを使用
  • 背もたれと背中の間にクッションを入れることも有用な場合がある

 

2.口腔内細菌を減らす

もし誤嚥したとしても、誤嚥した食物や唾液の中に含まれる細菌がごく少数ならば、肺炎は起きません。また、細菌を誤嚥しても、肺炎の原因になる細菌がいなければ肺炎は起きません。つまり、口腔内の細菌を減らすとともに、肺炎の原因となる細菌の繁殖を抑える必要があります。手段は簡単、口腔ケアです。

積極的な口腔ケアによる肺炎予防効果

介護老人福祉施設に入所している高齢者に対し、日常的なセルフケア+定期的なプロフェッショナルケアを行った群(口腔ケア群)とそれ以外の群(対照群)の発熱発生率および肺炎発症率の比較

口腔ケアを受けた方は期間中の発熱発生率が低い、口腔ケアを受けた方は2年間の肺炎発症率が低い

米山武義ら;要介護高齢者に対する口腔衛生の誤嚥性肺炎予防効果に関する研究、日本歯科医学会誌、2001

歯が1本もない人や胃ろうなどで口から食事をとっていない人にも、口腔ケアは必要です。口腔は粘膜で覆われています。この粘膜の細胞は新陳代謝により絶えず入れ替わり、古くなった粘膜細胞は、口腔内に剥がれ落ちます(剥離上皮)。つまり、垢が出てくるわけです。この垢の中でも細菌は増殖しますから、スポンジブラシなどを使い、やさしく口腔内の粘膜を掃除するようにしましょう。同様に、舌に付いた汚れ(舌苔)の掃除も有効です。義歯を使用している人は、歯と粘膜の掃除以外に、義歯の掃除も忘れずに行ってください。

また、唾液中のリゾチームやラクトフェリンなどは細菌の侵入を防ぎますし、唾液自体が食塊形成に必要な水分となり誤嚥を防ぎます。近年は唾液の分泌が減少する口腔乾燥症の患者さんが増えています。口腔乾燥症の対症療法の一つとして唾液腺マッサージがあります。

3.抵抗力を保つ

気管や肺に細菌が入ってしまっても、感染を起こす前に排除できれば肺炎を予防できます。細菌に対する抵抗力を低下させる原因には、栄養不良、加齢、過労・ストレスによる体力低下などがあります。

※参考書籍
 「nico 2012.12 クインテッセンス出版株式会社」
 「月刊 糖尿病ライフ さかえ 2018年5月号」 日本糖尿病協会

Q3 飲み込むときに使う筋肉を衰えさせないエクササイズがあったら教えて下さい。
A3

下がってしまった「のどボトケ」をアップし飲み込みがラクになるエクササイズを2種類ご紹介します。

1.おおぐちエクササイズ

(ア)10秒間本気で思い切り口を開けます。
(イ)10秒間休みます。
(ウ)これを5回、2セット毎日続けましょう。

2.首の腹筋エクササイズ

(ア)横になり首を上げて足の先を見ながら1分間耐えます。
(イ)1分間休みます。これを3セット繰り返します。さらに首の上げ下げを30回繰り返し、休みます。
(ウ)これを3セット繰り返します。毎日続けましょう。

※参考書籍 「nico 2012.12 クインテッセンス出版株式会社」

Q4 近ごろ口のなかが乾きやすく、飲み込みにくさを感じています。改善する方法はありますか?
A4

持病のお薬を何種類も飲んでいたりトイレが気になって水分を控えていると唾液が減り、口が乾くようになって、飲み込みにくさにつながりがちです。改善法をいくつかご提案してみましょう。

1. 水分はこまめに摂りましょう。

トイレの回数を減らそうと水分を控えると、お口が乾きやすくなります。水分はこまめに摂りましょう。ふだんは水やお茶がおすすめですが、乾いてつらいときは、スポーツ飲料を飲むと九州がよく速効性があります。

2. 減らせる薬はありませんか?

日常的に飲んでいる薬に、減らせるものがないか、主治医に相談してみましょう。ただし、自己判断で勝手に減らすのは危険です。絶対にやめましょう。

3. 保湿剤を使いましょう。

さまざまなメーカーからお口の保湿剤が出ています。香味のあるもの、無味のものなど、お好みに合わせて選ぶとよいでしょう。

4. 唾液腺を刺激して分泌を促します。

耳下腺、舌下腺、顎下腺のあるあたりを軽く押したりマッサージしたりすると、唾液がジワッと出てきます。お試しください。

※参考書籍 「nico 2012.12 クインテッセンス出版株式会社」

Q5 むせやすさ、飲み込みにくさがなるべく進行しないようにするにはおしゃべりやカラオケがいいとのお話でした。ほかにもなにか、ふだんの生活に取り入れるとよいことはありますか?
A5

からだを動かすこと、やせ過ぎに注意し食事のバランスに気をつけることなどです。のどの筋肉の機能は、からだの筋肉、つまり「体力」ととても関係が深いのです。

1. バランスのよい食事をしよう。

主食、肉、魚、野菜、果物など、まんべんなく食べましょう。毎食「冷奴にご飯だけ」というのでは、やせて体力が落ちてしまわないかと心配です。

2. 家事でからだを動かそう。

からだを動かして、筋肉を柔軟に保ちましょう。とくに脚の筋肉が衰えると姿勢が悪くなる原因に。すると、飲み込みに影響してしまいます。

  
3. おしゃべりを楽しもう。

おしゃべりをしたり、笑ったりすると、口やのどの筋肉がさかんに動いてよいエクササイズになります。女性の得意分野ですが、男性もぜひどうぞ。

4. カラオケで歌おう。

のどの筋肉のエクササイズに。ときにはレパートリーを広げて、キーの高めな曲にも挑戦してみましょう。のどボトケを吊り上げる筋肉が鍛えられます。

※参考書籍 「nico 2012.12 クインテッセンス出版株式会社」

Q6 誤嚥性肺炎と歯周病の関係について教えてください。
A6

誤嚥性肺炎と歯周病の関係

肺炎はがん、心臓病、脳卒中に次いで、死因の第4位を占め、特に高齢者でその率が急増します。口の中の衛生状態はその肺炎の発症とも深い関係があります。
食べ物を誤って気道にいれてしまい、歯周病の原因菌など口の中の細菌が肺や気管支に感染するケース(誤嚥性肺炎)は、寝たきりのお年寄りには特に多くみられますが、口の中が細菌の少ない状態に保たれていれば、そのリスクを減らすことができます
そのためには、健康なときから、口の中を清潔に保つケアを習慣づけることが大切です。万一、寝たきりや体が不自由になった場合も、家族や歯科医師・歯科衛生士の協力でお口のケアを続けたいものです。

誤嚥性肺炎と歯周病の関係肺炎はがん、心臓病、脳卒中に次いで、死因の第4位を占め、特に高齢者でその率が急増します。口の中の衛生状態はその肺炎の発症とも深い関係があります。
食べ物を誤って気道にいれてしまい、歯周病の原因菌など口の中の細菌が肺や気管支に感染するケース(誤嚥性肺炎)は、寝たきりのお年寄りには特に多くみられますが、口の中が細菌の少ない状態に保たれていれば、そのリスクを減らすことができます
そのためには、健康なときから、口の中を清潔に保つケアを習慣づけることが大切です。万一、寝たきりや体が不自由になった場合も、家族や歯科医師・歯科衛生士の協力でお口のケアを続けたいものです。

Q7 ウイルスによる肺炎と口腔衛生の関係について教えてください。
A7

ウイルスによる肺炎というのは、大きく分けて3つの種類があります。

1つはウイルス単独による肺炎、2つはウイルスと細菌の混合性肺炎。それから、一旦ウイルス性肺炎が治まった後、二次的に細菌性肺炎が起きるパターンです。インフルエンザの場合は2番目が多いのですが、新型コロナウイルスでは3番目のパターンが多いというデータが出ています。

二次的細菌性肺炎を防ぐためには口腔衛生を徹底しなければなりません。

細菌が肺に行くプロセスは2系統あります。1つは歯周病に代表されるように毛細血管から血流に入ってしまうルート。そうすると必ず肺の間質まで行きますので、いわゆる間質性肺炎のリスクが高まります。もう1つは唾液中の細菌が誤嚥されることによって肺胞に入り、肺胞性肺炎に繋がります。普通であれば肺の免疫機能で抑えられるはずですが、新型コロナウイルスによって上皮細胞が破壊されていますので、容易に肺炎に繋がるわけです。この二つの系統の肺炎を抑えるためには、それぞれに合った口腔衛生をしなければいけません。間質性肺炎のリスクを下げるためには歯周病やう蝕を予防するように歯磨きをしなければいけませんし、誤嚥性肺炎のリスクを下げるためには舌磨きが重要になってきます。

 

※参考書籍
 「Dentalism 2020年7月号」

Q8 最近私はよくむせるのですが、誤嚥性肺炎を予防していくには、口のなかをきれいにすることのほかにどんなことに気を付けるとよいですか?
A8

飲み込む機能が衰えると誤嚥しやすいのでよく噛んで食べるブクブクうがいをする舌の体操をするなど、ふだんからお口をよく動かすように心がけましょう。

●よく噛んで食べる

よく噛む

くちびるや頬、舌の筋肉がよく働き、自然とお口の周囲の筋肉のエクササイズになります。

●ブクブクうがいをする

ブクブクうがい

お口のなかがキレイになるうえ、くちびると頬の筋肉のエクササイズになります。

●舌の運動をする

舌の運動

ゴクンと飲み込むには舌の筋力が必要。
出したり引っ込めたりして舌のエクササイズをしましょう。

●セキばらいの練習をする

セキばらい

のどに引っかかった飲み物・食べ物の誤嚥を防ぐため、セキばらいを得意にしておきましょう。

●唾液腺マッサージでお口にうるおいを!

唾液腺マッサージ1

あごの下にある舌下腺をやさしくマッサージします。

唾液腺マッサージ2

あごの横にある顎下腺をやさしくマッサージします。

唾液腺マッサージ3

耳の斜め下にある耳下腺をやさしくマッサージします。

※参考書籍 「nico 2014.12 クインテッセンス出版株式会社」

Q9 寝たきりの要介護者・嚥下障害者の口腔ケア方法を教えて下さい。
A9

不規則な生活(睡眠不足)栄養状態の悪化口腔衛生状態の低下義歯の紛失などが重なり、肺炎を起こしやすくなることが知られています。特に高齢者の方では、嚥下障害を有する場合が多く、ムセなどの症状もなく誤嚥性肺炎を起こします。

寝たきりの要介護者・嚥下障害者でも、断水や避難生活などで水の使用を最低限にしなければならない場合でも、口腔ケアはできます。

付き添いの方は以下の方法を参考にして、口腔ケアを実施して下さい。

  1. 口唇や口内の乾燥部位を水で濡らして加湿する。
  2. 30ml程度の水が入ったコップAとBを用意する。
    (A・・・洗い専用、B・・・ゆすぎ専用)
  3. 歯ブラシを水で濡らし、その歯ブラシについた水で口内を加湿しながら歯磨きをする。
  4. 歯磨きをしながら口内の汚染物を布(ガーゼ)やティッシュで回収する。
    (ガーゼやティッシュがなければ、台所のスポンジのかけらをカットして代用できます)
  5. こまめに歯ブラシをAコップで水洗い、Bコップでゆすぎ、歯磨きを繰り返す。
  6. 最後に口内の汚染物を回収し終了。リップクリームがあれば口唇に塗布。

 

高齢者や嚥下障害者は口内を拭くだけでは肺炎リスクが高くなります。

 

※参考
 一般社団法人全国在宅療養支援歯科診療所連絡会

Q10 たばこを吸っていますが、誤嚥性肺炎に関係ありますか?
A10

たばこを吸う人は、禁煙することが最も効果的な誤嚥性肺炎予防です。たばこの煙を肺に吸い込むことで、気管と肺の中は常に軽く炎症を起こし、細菌に感染しやすい状態となります。肺だけではなく、歯周疾患を含む全身にも悪影響をおよぼしますので、ぜひ禁煙してください。

※参考書籍
 「月刊 糖尿病ライフ さかえ 2018年5月号」 日本糖尿病協会

お探しの情報は何ですか?

オススメ情報ランキング

医院情報

医院写真

〒750-0016
山口県下関市細江町1-3-2
TEL 083-231-1182
E-mail info@kato.or.jp

アクセスマップ

受付時間(日曜・祝日定休)
平日/午前9:00~ 午後6:30
木曜・土曜/午後1:00まで

関連記事

このページを見た人は以下のページも見ています