Question
歯が折れて抜かないといけないのですが、その後入れるものをブリッジかインプラントかで悩んでいます。前後の歯は問題ないと言われましたが、どうでしょうか?
Answer
歯が折れてしまったなどの理由により、抜歯をすることになった場合、その後入れるものとしてブリッジかインプラントどちらがよいのでしょうか?
生存率から考えると、治療8年後ではインプラントが92.1%であるのに対し、ブリッジは59.3%であるという研究結果が報告されています。
また、欠損した隣の歯(ブリッジの支台歯)において、神経があるかどうかで状況が変わってきます。8年後のブリッジの生存率については、神経がある歯は94.0%、神経がない歯は54.1%という研究結果も報告されています。
Yamazaki S, Arakawa H, Maekawa K, Noda K, Hara ES, Minakuchi H, sonoyama W, Matsuka Y, Kuboki T. A retrospective comparative 8-year study of cumulative complications in teeth adjacent to both natural and implant-supported fixed partial dentures. Int J `rosthodont 2013; 26(3) :260-264.
状況によってはブリッジのほうが合併症が多いため、インプラントを用いた単冠の治療が望ましいとされています。
5年生存率と10年生存率
5年生存率 | 10年生存率 | |
---|---|---|
歯牙支持型ブリッジ | 93.8% | 89.2% |
カンチレバー型ブリッジ | 91.4% | 80.3% |
インプラント支持型ブリッジ | 95.2% | 86.7% |
天然歯とインプラントの連結型ブリッジ | 95.5% | 77.8% |
インプラント単冠 | 94.5% | 89.4% |
天然歯支持型ブリッジ、インプラント支持型ブリッジおよび天然歯の単冠の生存率および合併症の発生率の比較
Pjetursson BE, Brägger U, Lang NP, Zwahlen M. Comparison of survival and complication rates of tooth-supported fixed dental prostheses(FDPs) and implant-supported FDPs and single crowns(SCs). Clin Oral Implants Res 2007 ; 18 Suppl 3 : 97 – 113.
前後の歯は問題ない(欠損部位の隣在歯は健全な状態)という場合、以下のようなデータがあります。
1歯欠損の症例について
ブリッジの支台歯とインプラント補綴の隣在歯の経過を観察した報告
ブリッジの支台歯抜去 | 7.2%(12/166歯) |
インプラント隣在歯抜去 | 2.0%(2/102歯) |
ブリッジのほうが数倍リスクが高い。
・清木祐介, 他.インプラント部が残存歯に与える影響 第3報 中間欠損部に埋入したインプラントの隣在歯とブリッジ支台歯の予後について(5年経過症例). In : 第37回日本口腔インプラント学会学術大会 抄録集, 2007 : 341.
ブリッジでは支台歯が負担を背負い、インプラントでは隣在歯の負担を軽減するというまったく正反対な補綴法であるために、上記の結果は至極当然といえます。
しかし、インプラントでは支持組織となる骨、そして対合歯の条件を考慮しなければなりません。
欠損の始まりであり咬合支持が十分にある1歯欠損においては、インプラント適用自体のリスクも小さい場合が多く、積極的に適用を推奨することができます。
ブリッジ | インプラント |
※参考書籍
『見る目が変わる!「欠損歯列」の読み方、「欠損補綴」の設計』
編著 本多正明 宮地建夫 伊藤雄策 武田孝之
クインテッセンス出版株式会社
「エビデンス・ベースト・インプラントロジー」
著 小田師巳/園山 亘 クインテッセンス出版株式会社
「補綴・咬合の迷信と真実」 クインテッセンス出版株式会社