Question
ドライマウスの原因を教えてください。またアドバイスをください。
Answer
ドライマウスの臨床症状
- デンタルミラーが粘膜や舌に張りつく
- 唾液が泡立つ
- 口腔底に唾液がたまっていない
- 舌乳頭の萎縮、分葉舌、溝状舌
- つるつるの歯肉
- 光沢のある口腔粘膜
- 口蓋や歯に残渣が付着
- むし歯
ドライマウスの原因
①医薬品-処方箋を確認
- 抗うつ薬
- 抗精神病薬
- 抗ヒスタミン薬
- 利尿薬
- 抗パーキンソン病薬
- 食欲抑制薬
- 液剤、トローチ剤、吸入剤に含まれる糖
②疾患と障害
- シェーグレン症候群
- 関節リウマチ
- 全身性エリテマトーデス
- HIV/AIDS
- GVHD
- サルコイドーシス
- 悪性リンパ腫
- アルツハイマー病
- パーキンソン病
- 脳卒中
- 嚢胞性線維症
- 脱水症
- 薬物乱用
- 熱性疾患
- 発汗過多
- 下痢
- 尿崩症
- 糖尿病
- 甲状腺機能亢進症
- 心不全
- 腎機能不全
- 貧血
- 過度のアルコール飲用
- 過度の喫煙
- 口呼吸(副鼻腔炎や習慣性など)、過呼吸、開口、摂食嚥下障害などによる口腔の環境変化による水分蒸発といった局所的代謝
③頭頚部領域の放射線治療
④化学療法
⑤神経性のもの
- 恐怖、興奮、ストレス、抑うつなどの精神状態
- 脳炎、脳腫瘍、脳外傷などの中枢性病変、顔面神経上の唾液核や顔面神経分泌枝の障害などの唾液分泌の神経系の障害
たとえ薬剤を服用していなくても、65歳以上の人は、口腔乾燥と唾液分泌低下を起こすリスクが高いと言われています。3年間の研究において、唾液分泌量が少ない高齢者は、唾液分泌量が正常な高齢者に比べて、3年間に少なくとも1本の歯を失う可能性が高いことが報告されています1)。
口腔乾燥と唾液分泌減退はしばしば関連していますが、唾液分泌量が正常な患者さんでも口腔乾燥がみられることがある一方、唾液分泌量が非常に少ない患者さんでも常に口腔乾燥を経験するとは限りません2)、3)。
ドライマウスのアドバイス(全身的なものと歯科的なもの)
- 一日中こまめに水を飲み、口の中を潤す。その際、糖を含む飲み物やあめは摂らない。酸蝕予防のためには、糖を最小限に抑える必要がある。
- タバコ、カフェイン、アルコールを含む飲み物など、ドライマウスを悪化させる嗜好品を避ける。
- 収斂作用のある製品は、粘膜を刺激するので避ける。(ミントやエッセンシャルオイルの香りが強い洗口剤、アルコールを含んだ製品、強い風味の歯磨剤など)
- 口唇にリップクリームやワセリンを塗る。
- 唾液腺組織が十分にある場合には、糖不使用のガムを噛むことで唾液分泌が促進される。薬剤性ドライマウスの場合には有用かもしれないが、放射線治療やシェーグレン症候群が原因の場合には、腺組織が損傷しているために効果が低い。
- 口腔衛生を徹底し、歯を清潔に保つ。高濃度フッ化物配合歯磨剤を使用する。良好な口腔衛生が確立されるまでは2週間ごと、その後は3ヵ月ごとに、定期的なメインテナンスを受ける必要がある。
- 3ヵ月ごとにフッ化物バーニッシュを塗布する。
- 糖の摂取を食事時(1日3回)に限定する。主食に糖を含まないようにするのは非常に難しいが、間食には糖を含まないものを選択する。
- 薬剤に糖が含まれていないか確認する。抗真菌薬のトローチ剤に注意する。
1)Caplan DJ, Hunt RJ. Salivary flow and risk of tooth loss in an elderly population. Community Dent Oral Epidemiol
. 1996 Feb;24(1):68-71.
2)Dods MW, et al. Health benefits of saliva: a review. J Dent
. 2005 Mar;33(3):223-33.
3)Vissink A, et al. Aging and saliva: a review of the literature. Spec Care Dentist. 1996 May-Jun;16(3):95-103.
※参考書籍
「デンタルカリエスエッセンシャル 原著第4版」
医歯薬出版株式会社