Question

閉経後、女性ホルモンの低下によって口腔内に悪影響が出てくると聞きました。どういうことですか?

Answer

閉経は、日本人では平均49.5歳と報告されています。もちろん口腔領域においてもホルモン(エストロゲン)レベルの低下は大きな影響を及ぼします。顎骨のみならず歯周組織や唾液腺にもエストロゲン受容体は存在しており、細菌叢の変化や毛細血管の拡張・透過性亢進を来たし、細胞角化やコラーゲン産生の抑制が生じます。エストロゲンは炎症を抑えることから閉経後には炎症が起こりやすくなり、さらに口腔内の免疫応答も低下することが知られています。唾液の分泌も低下させることから、口腔乾燥症、舌痛症(burning mouth syndrome)につながり、う蝕、味覚異常、歯周病などの罹患率が増えるといいます1)

実際、閉経前は6%であった口腔関連の愁訴有症率が、閉経後には43%になり、頻度の高い順に口腔乾燥、潰瘍、口腔灼熱感、味覚異常であったという報告もあり2)、20~90%、平均すると全体の2/3が症状を有すると言われています3)。これらは相互に関連して、歯の喪失にもつながります。

また、このような変化は歯科治療にも影響を及ぼすことが知られており、上顎におけるインプラントの非生着率の比較では、男性においては50歳未満と50歳以上での比較では6.3%から7.6%とほとんど変化がなかったのに対し、閉経後女性では13.6%と、閉経前の6.3%と比較して有意に上昇していたという報告もあります4)

1)Suri Vanita, Suri Varun: Menopause and oral health. J Midlife Health, 5(3): 115~120, 2014.

2)Wardrop RW, Hailes J, Burger H, Reade PC: Oral discomfort at menopause. Oral Surg Oral Med Oral Pathol, 67(5): 535~540, 1989.

3)Paganini-Hill A: Hormone therapy and oral health. Menopause Management, 16(3): 31~40, 2007.

4)August M, Chung K, Chang Y, Glowacki J: Influence of estrogen status on endosseous implant osseointegration. J Oral Maxillofac Surg, 59(11): 1285~1289, 2001.

※参考書籍 「日本歯科医師会雑誌 2020 VOL.73 NO.2」

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