小児・妊娠中の治療について

Q61 子どもの肥満はどのように評価したらよいのですか?
A61

肥満とは、一般的に「正常な状態に比べて体重が多い状況、あるいは体脂肪が過剰に蓄積した状況」のことを言います。

 

成長期の子どもの肥満の評価は、身長と体重のバランスにより指標の値が異なるため、活用した指標について慎重に評価しなければなりません。小さい頃は太っていても成長とともに解消される子どもたちもたくさん目にします。このような意味では、生涯にわたり生活習慣病を予防できる素地を確立するために、好ましい生活習慣の確立を重視することが大切かもしれません。

 一般的に使用されている指標

1.ローレル指数

学童期の肥満度を評価する場合に適しているが、成長の過程において個人差があることに注意。

「ローレル指数=体重(kg)÷身長(cm)3×107

100以下 やせすぎ
101~115 やせぎみ
115~144 標準
145~159 太りぎみ
160以上(身長150cm) 太りすぎ
170以上(身長130~149cm) 太りすぎ
180以上(身長110~129cm) 太りすぎ

2.肥満度

男女差や年齢差が考慮されており、成長の過程に個人差のある学童期に適しています。

まず、身長別標準体重を以下の表から求めます。

「身長別標準体重=a×実測身長(cm)-b」

 男子

年齢/係数 a b
5歳 0.386 23.699
6歳 0.461 32.382
7歳 0.513 38.878
8歳 0.592 48.804
9歳 0.687 61.390
10歳 0.752 70.461
11歳 0.782 75.106
12歳 0.783 75.642
13歳 0.815 81.348
14歳 0.832 83.695
15歳 0.766 70.989
16歳 0.656 51.822
17歳 0.672 53.642

 女子

年齢/係数 a b
5歳 0.377 22.75
6歳 0.458 32.079
7歳 0.508 38.367
8歳 0.561 45.0006
9歳 0.652 56.992
10歳 0.730 68.091
11歳 0.803 78.846
12歳 0.796 76.934
13歳 0.655 54.234
14歳 0.594 43.264
15歳 0.560 37.002
16歳 0.578 39.057
17歳 0.598 42.339

 

※「児童生徒の健康診断マニュアル(平成18年3月31日改訂版) 日本学校保健会発行」より引用

次に、肥満度を求め、下記の肥満度判定基準表から判定します。

「肥満度=(実測体重(kg)-身長別標準体重(kg))÷身長別標準体重(kg)×100」

-30%以下 高度痩身
-20%以下 痩身傾向
20~30%未満 軽度肥満
30~50%未満 中等度肥満
50%以上 高度肥満

 

3.BMI

身長の変化で判定結果が大きく変わるため学齢期には向かず、成人での使用が一般的です。

「BMI=体重(kg)÷身長(m)2)」

18.5未満 やせぎみ
18.5以上 標準
25以上 肥満度1
30以上 肥満度2
35以上 肥満度3
40以上 肥満度4

 

※「日本肥満学会による肥満の判定基準(1999.10 新基準)」

4.子どものメタボリックシンドローム

上述のように、成長期の子どもの肥満の評価は難しいのですが、一方で子どもの肥満の多くは成人肥満に移行すると言われており、高度な肥満は小児期からでも生活習慣病に罹患しています。

厚生労働省の研究班により、6~15歳を対象とした「メタボリックシンドロームの判定基準」が作られました。

1 赤信号

小学生:胴囲75cm以上

中学生:胴囲80cm以上

1 黄信号 ウエスト÷身長(cm)=0.5以上
2 血圧

収縮期 125mmHg以上

拡張期 70mmHg以上

3 空腹時血糖値 100mg/dl以上
4 高脂血症

中性脂肪 120mg/dl以上

HDLコレステロール 40mg/dl未満

 

・1(赤信号・黄信号)に該当し、かつ2~4の血液検査項目が2項目以上該当する子ども

→小児メタボリックシンドローム

・1(赤信号・黄信号)のみ該当する子ども

→小児メタボリックシンドローム予備軍

 

※参考書籍
 「歯と口から伝える食育」
 岡崎 好秀・武井 典子 編著  東山書房

Q62 MFTって何?
A62

MFTとは、「嚥下時の正しい舌の動きや安静時の舌位を訓練する療法」のことです。そして、MFTは嚥下だけを訓練の対象にするのではなく、咀嚼、嚥下、安静時における舌や口唇の姿勢位など、口腔周囲筋を調和させる療法です。その結果、舌突出癖症例によくみられる舌の前方位や低位などの悪いパターンを正常にし、開咬症状や口腔周囲筋の不調和が改善されていきます。

 

●MFTの目的

1)正しい嚥下を指導し、調和のとれた口腔内の環境をつくる

2)口唇の閉鎖(lip seal)

3)開咬症状の改善により発音が良くなる
 【frontal lisp(前方化リスプ)、lateral lisp(側方化リスプ)の改善)】

4)矯正治療中の舌圧、舌位の抵抗を減少し、矯正治療後の舌・口腔周囲筋の調和をはかること

などがあります。

 

※参考書籍
 「MFT臨床 指導力アップ・アドバンス編」
 監修者 山口秀晴、大野粛英、高橋 治、橋本律子 わかば出版

Q63 糖尿病と味覚障害は関係ありますか?
A63

糖尿病が味覚障害を引き起こす理由について紹介します。

1.糖尿病の三大合併症の一つである神経障害が味覚神経に及ぼす影響

2.糖尿病腎症によって味蕾の新陳代謝に欠かせない亜鉛が吸収されずに排出されてしまう影響

3.糖尿病は唾液腺に種々の変化を引き起こすことが知られており、唾液分泌低下(口腔乾燥)は糖尿病の特徴とされている

Mata AD1, Marques D, Rocha S, Francisco H, Santos C, Mesquita MF, Singh J : Effects of diabetes mellitus on salivary secretion and its composition in the human. Mol Cell Biochem 2004 ; 261(1-2) : 137-142.

※参考書籍
 「月刊 糖尿病ライフ さかえ 2018年12月号」 日本糖尿病協会

Q64 乳児期の発達について、口腔に関係したものを教えてください。
A64

口腔に関連した乳児期の発達についてまとめた文献がありますのでご紹介します。

木原秀樹:赤ちゃんの発達地図、メディカ出版、大阪、2014、23-148.

0-1ヶ月

顔に手を近づけるようになります。

1-2ヶ月

顔が向いた方の手をしゃぶるようになります。

3-4ヶ月

母指をしゃぶるようになります。

4-5ヶ月

おもちゃをしゃぶるようになります。

舌を前上方に出すようになります。

5-6ヶ月

舌を前後に動かし離乳初期食を食べるようになります。

6-7ヶ月

口唇が薄くなる動きをします。足を口へ持っていくようになります。

7-8ヶ月

口唇の動きが豊かになってきます。喃語を発声します。

舌を上下に動かし離乳中期食を食べるようになります。

8-9ヶ月

なんでも口へ運ぶようになります。

9-11ヶ月

舌を左右に動かし離乳後期食を食べるようになります。

 

※参考書籍
 「月刊 小児歯科臨床 2016.7」 東京臨床出版株式会社

Q65 乳児の哺乳ですが、どのように実施したらよいでしょうか?
A65

乳児の哺乳についての支援方針・方法の実際例をご紹介します。

評価項目 支援方針 支援方法
探索反射

1)探索反射の促進

2)口腔周囲の脱感作

1)乳首の先で、口唇や口角をくすぐるように刺激する。

2)手指で口唇やその周囲を圧迫するように刺激する。

吸啜反射

1)吸啜圧の促進

2)吸啜リズムの促進

1)口腔内の陰圧を高めるよう口唇や頬を圧迫する、下顎を支える。

2)乳首で上顎の吸啜窩を前後に刺激する、下顎を刺激する。

嚥下反射

1)一回嚥下量増加の促進

1)一回嚥下可能な乳汁量を少しずつ増加させる。

吸啜/嚥下/呼吸の協調性

1)哺乳中の吸啜/嚥下の協調性の改善

1)乳汁の流量が小さい乳穴の乳首(母乳実感SSS)または低流量タイプの乳首(母乳相談室)を使用する。

連続哺乳

1)哺乳量/時間増加の促進

1)覚醒レベルの維持または向上。

 

※参考書籍
 「月刊 小児歯科臨床 2016.7」 東京臨床出版株式会社

Q66 うちの子は構育障害があるのですが、いつからトレーニングを始めればいいですか?
A66

子どもの場合はおよそ5歳頃です。言語の先生の指示に従って、30分程度集中して課題に取り組めることが条件となります。文字が読めること、ことばを一つ一つの音のつながりとして理解できれば指導がやりやすくなります。

大人の場合は、発音を必ず治したいという目的意識がはっきりしていることが大切で、開始年齢は問いません。

 

構音訓練の開始条件

・音の誤りが習慣化している

・自然治癒傾向が認められない

・構音障害の原因となる器質的疾患がないか、すでに医科・歯科的な対応が行われている

・構音訓練が実施できる程度の集中力があり、発達の遅れが軽度である

・構音障害による心理的ストレスが生じている可能性がある

・構音訓練を持続的に受けられる環境である

 

※参考書籍
 「MFT臨床 指導力アップ・アドバンス編」
 監修者 山口秀晴、大野粛英、高橋 治、橋本律子 わかば出版

Q67 子どもの歯並びや噛み合わせが悪くならないためには、何に気をつけたらいいですか?
A67

歯並びや噛み合わせが悪くなるのは4つの要因があります。

一つ目は、乳歯をむし歯などで早く失い永久歯の生える場所がなくなるためです。

二つ目は、歯と顎の骨の大きさのバランスが悪く、永久歯の生える場所がないためです。歯や顎の大きさは遺伝もありますが、よくかまない、硬いものを食べないことにより、十分顎が発達しないことも関係あります。

三つ目は、出っ歯や受け口(反対咬合)の中には遺伝的な問題が原因となることもあります。

四つ目は、おしゃぶり、指しゃぶりなどの癖、舌の癖、口呼吸、頬杖、うつ伏せ寝などの生活習慣も関係します

当院では永久歯の歯並びが悪くならないよう、乳歯列期または混合歯列期に矯正矯正と違い安価で簡単な装置)を利用した方法をご提案していますのでお気軽にご相談ください。

⇒床矯正についてもっと知りたい方はこちら

Q68 最近顎関節症が子どもにも増えているそうですが、なぜですか?
A68

かつて、顎関節症は大人の病気だと言われていましたが、最近では小学校高学年から中学生にかけて発症していることが多く見受けられます。これは、あまり噛みごたえのあるものを食べなくなったため、顎の骨や筋肉の発達が悪いことが考えられます。噛む機能に影響するだけでなく、肩こりや、頭痛などの症状と顎関節症の症状とは90%以上同じ側で起こり、顎関節症の軽快と同時にこうした症状もなくなることが多いから、顎関節症とある種の不定愁訴とは関連があると言われています。

 

また、頬づえや就寝癖から発症することもあり、口を動かした時に「カクッ」「ジャリ」など音がするような顎関節症の初期に態癖の指導をすることにより、自然治癒、あるいは進行を止めることが可能な場合があります。

 

噛み癖も顎関節症の原因のひとつです。片噛みの癖があると同じ側の顎関節が圧迫され、顎関節症になることがあります。機能的な問題を不正咬合(受け口、開咬、交叉咬合、過蓋咬合)があると噛み合わせが不安定になり、顎関節症が発症しやすくなります。ストレスが原因と考えられている就寝時の歯ぎしりやくいしばりも原因のひとつです。

 

幼児期から噛みごたえのある食品を食べ、顎の骨や筋肉を鍛えることと、態癖に注意することが顎関節症の予防につながります。また、ストレスをためない生活も大切です。ただし、症状がある場合には、噛みごたえのあるものを長時間食べることや、大きな口を開けることは症状を悪化させることがあるので、注意が必要です。

 

※参考書籍
 「歯と口から伝える食育」
 岡崎 好秀・武井 典子 編著  東山書房

Q69 顔や歯並びの左右の対称性、非対称性について教えてください。
A69

対称性・非対称性については、以下の3点が報告されています。

1.下顎顔面の非対称性はあらゆる時期にさまざまな原因から生じ、また複数の原因が同時に存在することがある。

2.原因がなんであっても、ひとたび非対称性が生じると、適応的変化と代償的変化の作用がはたらいて周囲組織に影響を与える。若年者においては成長発育の抑制や神経筋パターンの変化が起きて、非対称の継続因子となる。

3.小児期の交叉咬合では、非対称の進行と代償的な変化を防ぐために早期に改善を行うことが必要である。

人間の眼は左右対称的に存在し、内耳の両側の三半規管とともに、頭位や体位の微妙なバランス感覚を保っています。そのため、自然や物体などの対象物を見る際、左右対称なものを見ると人は安定感を感じ、それをまた美しいと本能的に感じるのかもしれません。しかし、人間はすべて対称的になっているわけではなく、心臓は左側に存在し、利き腕、利き足、利き眼、利き噛み癖があり、体躯も顔貌も歯列も全く対称的だという人を探すほうが大変です。そのため、多くの人々が少なからず非対称的な体躯や顎顔面や歯列を持っていますが、非対称はどこまで許容範囲で、どのくらいから異常なのか、そしてどこから治し、どこまで治すのか、昔も今も将来も大変難しい問題です。

 

このように、「正常な」非対称が「異常な」非対称になるポイントを定義づけるのは簡単ではなく、しばしばそれは臨床家のバランス感覚と患者さんのアンバランスの認識によって決められています。頭蓋複合体における臨床的な顔面非対称性は、左右の顔面半側の違いがやっとわかるレベルから大きな不一致を見るところまでの広い範囲にわたります。

 

非対称性の咬合異常は、遺伝的要因環境的要因、または遺伝的要因と環境的要因の複合的な要因により発症しますが、その発症機序や発症時期も諸説様々で不明な点も多くあります。また、非対称性の咬合異常に対する治療法や治療開始時期も数多く述べられていますが、統一的な見解はありません。

 

※参考書籍
 「月刊 小児歯科臨床 2014.7」 東京臨床出版株式会社

Q70 うちの娘は歯ぐきにメラニン色素が沈着しています。どうしたらよいでしょうか?
A70

広島大学大学院医歯薬学総合研究科 小児歯科学研究室教授 香西 克之

同 学内講師 光畑 智恵子

■メラニン色素について

生体がメラニン色素を生成するのは紫外線から自己を守るための生理的な防御反応であり、可逆的反応(元に戻る)と言われています。しかし、酸化が進むことによって皮膚ではシミとなり、歯ぐきでは黒褐色の色素沈着が見られるようになります。

歯ぐきのメラニン色素の沈着は、成人だけでなく小児にもしばしば見られるということが知られています。さらに色素沈着の広がりや濃度の状態は個人差があり、また同じ子どもであっても加齢とともに沈着度は変化します。

近年、禁煙推進運動のキャンペーンでは、受動喫煙が子どもの歯ぐきの色素沈着を誘発することが取り上げられています。しかし多くの小児の患者さんを診ていると、歯ぐきのメラニン色素の沈着があっても周りに喫煙者がいないことも多いです。逆に明らかに受動喫煙環境下にいる小児でも健康的なピンク色の歯ぐきをしており、親への禁煙の動機付けにならないこともあります。

このことに関して調査した研究では、次のような報告があります。

「色素沈着のある子どもの70%が『親が喫煙者』である一方、色素沈着のない子どもでもその35%が『親が喫煙者』であった」

小児の歯肉メラニン色素沈着と 親の喫煙との関係

 

埴岡 隆:子供の口腔内へのタバコによる健康影響, 小児歯科臨床, 61:397-404, 2008

■メラニン色素が沈着している子供への対応

1)色素沈着に対する処置

まず歯ぐきのメラニン色素の沈着は、歯ぐきが病的な状態であるのではなく、紫外線から体を守る防御反応であることを知っておきましょう。その上で審美的な観点から除去を希望する子どもに処置をします。歯ぐきのメラニン色素沈着は粘膜表面から0.2mm程度の深さに多く分布するため、この厚みの組織を除去しなければなりません。主にレーザーによる沈着部の組織除去や歯ぐきの漂白法などが行われていますが、メラノサイトができなくなるわけではないため、歯肉沈着の原因を取り除かない限り、再び色素沈着を繰り返すことになります。

2)メラニン色素沈着を防ぐための対策

臨床的には日焼け、口腔乾燥(口呼吸)、受動喫煙(副流煙)、アスコルビン酸不足などの対策をするしかありません。

この中で受動喫煙の除去は、もしそれが主な原因である場合は大きな効果をもたらしますが、最初にメラニン色素沈着の誘因がなんであるかを明確に評価することが先決で、その次に関係する誘因因子を取り除いていくべきです。

※参考書籍
 「月刊 小児歯科臨床 2011.10」 東京臨床出版株式会社

 

 

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