日常生活での注意について

Q141 食事介助の方法を教えてください。
A141

食事支援介助とは、食事を安全に摂取するために周りの環境を整えることをいいます。

1)適切な食事形態の提供

嚥下機能の評価を適切に行い、患者さんにあった形態を指示します。もちろん、義歯の調整や歯科治療も重要な対応方法です。

2)食事の嗜好・味・温度

好きな食品は上手に摂取できる場合も多いため、あらかじめ食事の嗜好を把握しておくことは重要です。味が薄く、体温に近い温度のものは嚥下反射を誘発しにくいため、しっかりとした味つけ、食事の温度などを工夫することで嚥下反射を促します。

3)姿勢の工夫

嚥下しやすいポジショニングに、枕やクッションを用いて調整します。

4)食事の時間帯

抗パーキンソン病薬を服用している患者さんでは服用後はスムーズに摂取が進み、高齢者では朝の経口摂取量が多いという報告があります。経口摂取が進むときに栄養摂取量を稼ぐことができるように調子のよい時間帯を探します。

5)食事のひと口量、ペース

介助の場合では、ひと口量はあまりに少ないと嚥下反射が誘発されないですし、多すぎると誤嚥や窒息の可能性が高くなってしまいます。適切な量は人それぞれ異なります。

6)食べる順番

口腔や咽頭に残留している食事を、異なる食形態のものを嚥下することで除去する交互嚥下は、残留物の誤嚥予防に有用です。飲みやすく残留しにくいもの(お茶やお茶ゼリー、トロミつきのみそ汁など)を探しておき、食事の合間、および食事の最後に摂取するようにします。

※参考書籍
 「開業医のための摂食・嚥下機能改善と装置の作り方 超入門」
 監著 前田芳信/阪井丘芳  クインテッセンス出版株式会社

Q142 摂食機能療法で気を付けることはありますか?
A142

摂食機能療法では、誤嚥や窒息のリスク管理が必要となります。

  1. 誤嚥や窒息が生じたときの対応

誤嚥が生じたときは、経過観察で問題ない程度の誤嚥であるのか、積極的に対応しないと肺炎になってしまうような誤嚥であるのかの見極めがポイントです。誤嚥したとしても、誤嚥物の量が少なくて呼吸器への為害性が弱く、その患者さんの体力・免疫力・喀出力が低下しているときは、吸引、呼吸リハビリテーション(ドレナージやスクイージング)を考慮します。

窒息は緊急性を要するため、生じたときには窒息の原因となった食物の除去(ハイムリッヒ法、吸引など)を試み、必要に応じて救急車を呼びます。喉頭鏡や経皮的気管穿刺針キットを準備しておくこともよいでしょう。

誤嚥や窒息を目の前にすると、どうしても気が焦って対応が遅れてしまいがちです。しかし、対応は一刻を争うときもあります。いつ誤嚥や窒息が生じても対応できるように、日々の臨床のときからシミュレーションしておく必要があります。

2.誤嚥や窒息が起きないように予防する

以上は起きてしまったときの対応ですが、もっと重要なのは誤嚥や窒息が起きないように予防することです。摂食・嚥下機能を十分に評価し、危険性のある食品は訓練に用いない、食事として提供しないといった対応が望まれます。

3.いざというときに備えたシミュレーションが大事

摂食機能療法を必要とする患者さんは、全身状態が悪い場合も多く、全身状態の急変のリスクもあります。意識レベル低下、呼吸停止、てんかん発作など、予測される急変を常に頭において、いざというときに対応できるようにシミュレーションしておきましょう。また、このときも予防が重要です。負荷がかかるような訓練・検査などを行うときは、あらかじめバイタルサイン(血圧、SpO2、体温)は計測するようにし、必要であればモニターしながら訓練を行いましょう。いつもと違うバイタルサインが計測されたときは、訓練・検査を撤退するというのもリスク管理の方法です。

主治医と良好な関係を築いておくことも、広い意味ではリスク管理といえます。全身状態の変化を常日頃からやりとりしていると、急変の予測に有用ですし、急変が生じたときも問い合わせがしやすくなります。

※参考書籍
 「開業医のための摂食・嚥下機能改善と装置の作り方 超入門」
 監著 前田芳信/阪井丘芳  クインテッセンス出版株式会社

Q143 たばこを吸っていますが、誤嚥性肺炎に関係ありますか?
A143

たばこを吸う人は、禁煙することが最も効果的な誤嚥性肺炎予防です。たばこの煙を肺に吸い込むことで、気管と肺の中は常に軽く炎症を起こし、細菌に感染しやすい状態となります。肺だけではなく、歯周疾患を含む全身にも悪影響をおよぼしますので、ぜひ禁煙してください。

※参考書籍
 「月刊 糖尿病ライフ さかえ 2018年5月号」 日本糖尿病協会

Q144 ヒアルロン酸注入療法を受けたいのですが、アレルギーを起こしませんか?
A144

ヒアルロン酸はもともと体内にある成分ですので、アレルギーを起こす可能性は極めて低いと言われています。

Q145 ヒアルロン酸注入療法でアレルギーを起こす可能性が低いのであればアレルギーテストは不要なのではありませんか?
A145

アレルギーが起こる確率は極めて低いので、通常はアレルギーテスト(皮内テスト)は行いません。しかし、ごく希にしか起こらないとはいえ、お顔という非常に目立つ部分にアレルギー反応が出るというのはとても辛いことです。
ですので、念のため治療を希望される全ての患者さんにアレルギーテストを実施しています。カウンセリングを行った後、使用するヒアルロン酸を二の腕の内側に少しだけ注入して、次回まで反応を見ます。

Q146 歯周病で歯がなくなりインプラントを入れたいと思っています。禁煙したほうがよいのでしょうか?
A146

もちろん、禁煙していただきます。
現在のインプラント治療は一段と進化していますが、喫煙者は骨の再生力が弱く感染しやすいですから失敗する危険がおのずと高くなります。
これを機会に、さっそく禁煙しましょう!

※参考書籍 「nico 2012.7 クインテッセンス出版株式会社」

Q147 タバコはお口の健康に影響がありますか?
A147

タバコは、身体はもちろんお口の健康にも影響があります
タバコに含まれるニコチンが末梢神経を収縮させ、酸素の供給量を減らすことから歯肉が栄養不足になり、歯周病を招きやすくしてしまうのです。また、タバコは体内のビタミンCを大量に消費させますので、細菌を殺す白血球の機能を低下させ、歯肉の病気を悪化させる恐れもあります。

河口

Q148 タバコはやめないとダメですか?
A148

タバコは、できるならやめることをおすすめします。
タバコは全身の健康を壊します。喫煙と受動喫煙による健康被害は深刻です。1997年先進国の病気と死亡の最大の原因がタバコにあるとWHOは報告しています。当然お口の健康を壊す有力因子ともなっています。

害としては、次のようなものがあります。
(1)血管を収縮させます。
(2)免疫細胞の働きを低下させます。
(3)骨の生成バランスが崩れ、骨がスカスカになる骨粗鬆症を起こします。
(4)口臭、着色、歯周病の原因にもなります。

それ以外にもがんを患うリスクが高くなるニコチン性口内炎になるリスクが増す味の感覚が鈍くなる口臭原因の舌苔が付きやすくなるなど、多数問題があります。

※参考書籍
 「nico 2016.1 クインテッセンス出版株式会社」

Q149 受動喫煙はからだによくないそうですが、歯の健康にも害があるのでしょうか?
A149

最近の研究で、タバコを吸う家庭のお子さんにむし歯が多いことがわかってきました。また、歯周病のリスクも増すと考えられ、受動喫煙の影響に注目が集まっています。

 

※参考書籍
 「nico 2016.1 クインテッセンス出版株式会社」

Q150 皮膚科に行ったら掌蹠膿疱症と言われました。口腔内の状態が関係すると聞きましたが、どういうことですか?
A150

掌蹠膿疱症の原因としては歯性病巣や扁桃炎などの病巣感染が重要であり、金属アレルギーの関与する症例は少ないことが報告されています。

Masui Y, Ito A, Akiba Y, Uoshima K, Abe R. Dental metal allergy is not the main cause of palmoplantar pustulosis. J Eur Acad Dermatol Venereol 2019 ; 33(4):e180-e181.

したがって、この症例では慢性根尖性歯周組織炎があり、歯科金属除去より先に病巣感染の治療を行います。

問題なのは金やパラジウムが陽性の場合、多数歯に歯科金属が入っているとその除去と装着に時間的・経済的負担が大きくなることです。パッチテスト陽性の金属が使用されていても本症の原因とは限りませんが、新たにパッチテスト陽性の金属を装着すると、症状の悪化する可能性が否定できません。したがってメタルフリーとするか、同じ成分の歯科金属を使用します(口腔内電流を発生させないため)。

※参考書籍
 「その皮膚疾患 歯科治療で治るかも」
 監著 押村 進/高橋 愼一 クインテッセンス出版株式会社

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