Question

骨粗鬆症のため、ビスホスホネート製剤・骨吸収抑制薬(ARA)を飲んでいます。インプラント治療に関係はありますか?

Answer

まず、骨吸収抑制薬投与中の悪性腫瘍患者へのインプラント埋入は避け、骨粗しょう症患者の場合は医科歯科連携で十分協議のうえ、インプラント治療の可否を決定するとされています。

顎骨壊死検討委員会. 骨吸収抑制薬関連顎骨壊死の病態と管理:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2016.

 

そして、悪性腫瘍の患者さんだけでなく、骨粗鬆症の患者さんでもステロイド投与、糖尿病や腎不全などを合併している場合もあり、インプラント治療を避ける選択が適当であると考えられています。

一方、他の全身的リスクがなく、骨吸収抑制薬(ARA)の飲み始め(=累積投与量が少ない)の骨粗鬆症の患者さんにおいてインプラント治療が最適である場合は、過剰にインプラント治療を避ける必要はありません。

顎骨壊死・顎骨骨髄炎(ARONJ)発症のリスクに比較して、骨吸収抑制薬を使用するメリットのほうがはるかに大きい場合が多いため、インプラント埋入後であることを理由に骨吸収抑制薬(ARA)を控えることはやめたほうがいいとされています。

 

また、ビスホスホネート製剤とインプラント治療の関係について、次のような論文もあります。

5年以下の経口BP内服患者においてBRONJは報告されておらず、経口BPの内服が5年未満の患者において、インプラント治療は安全な術式かもしれない。さらに、経口BPは短期間(1~4年間)のインプラント残存率に影響しなかった。

「全身投与されたビスホスホネートはインプラント治療にどのような影響を与えるか?システマティックレビュー」
Madrid C, et al. Clin Oral Implants Res 2009;20 Suppl 4: 87-95.

他の論文では、「一般に、BRONJのリスクは、1万人中1人~10万人中1人であるが、抜歯後に300人に1人に増える可能性がある。BRONJ症例の大部分は、静脈内注射の患者である可能性が高い。補助因子は確立されていないが、喫煙、ステロイド使用、貧血、低酸素血症、糖尿病、感染症、免疫不全などが重要である。経口ビスホスホネート使用患者のBRONJはステージ2を超えて進展することはまれであり、多くの症例は経口薬の中止により改善する。抜歯は、BRONJのリスクを増価させる唯一の処置である。歯科用インプラントは、経口ビスホスホネート使用患者において注意して使用すべきである。経口ビスホスホネート使用の利点とリスクは、投薬の一時的または永久的停止の必要性を判断する前に、個別に処方医と協議の上、比較検討されなければならない。」という報告があります。

ビスホスホネート関連顎骨壊死の原因としての経口ビスホスホネート:臨床所見、リスク評価、および予防戦略
Assael LA. J Oral Maxillofac Surg 2009;67(5 Suppl):35-43.

 

※参考書籍
 『「人生100年時代」のインプラント治療の考えかた』
 窪木拓男、鈴木秀典 編著  永末書店

 「日本口腔インプラント学会誌 2019 年 32 巻 1 号 p. 20-26」
  口腔インプラント医が知っておくべき骨吸収抑制薬関連顎骨壊死の知識:玉岡 丈二 高岡 一樹 岸本 裕充

 「開業医のための口腔外科 重要12キーワード ベスト240論文」
 河奈 裕正 監修  クインテッセンス出版株式会社

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