インプラント

Q31 回復をスムーズにするために、インプラント手術前の注意点を教えてください。
A31

手術についてわからないことがありましたら、ご遠慮なく歯科医師にお尋ねください。
疑問な点は確認し、安心して手術に臨みましょう。
(1)手術後の経過に影響が出ますので、術前1週間、術後8週間は禁煙してください。
 ※ニコチンには血管収縮作用、歯ぐきの機能低下、白血球の機能低下作用などがあります。
(2)十分な睡眠をとり、体調を整えましょう。
(3)食事はふだん通りで結構です。
(ただし、静脈鎮静法を用いる場合は、絶飲食でおいでください)
(4)手術日当日は、お化粧はされないようにお願いします。
(5)手術日当日は、締め付けない、楽な服装でおいでください。
(6)緊張や麻酔などの影響で手術後の運転は危険です。ご自分の運転で来院するのはやめましょう
(7)手術日当日は、出張や旅行、運動や飲酒などを控えて、安静に出来る日をお選びください。
(8)手術の後は腫れや痛みが出ることがありますので、翌日必ずご来院ください。

※参考書籍 「nico 2010.3 クインテッセンス出版株式会社」

Q32 回復をスムーズにするために、インプラント手術後の注意点を教えてください。
A32
1.手術後当日

手術後はしばらく麻酔が効いているので、基本的に痛みはありません
痛み止めの頓服と抗生剤を処方しますので、処方箋にしたがってお飲みください。
縫合し止血を十分に行いますので、骨移植などの処置をしていない限り、出血もほとんどないでしょう。
(1)激しい運動、お酒、刺激物、湯船につかるのはお控えください。シャワー程度なら大丈夫です。
(2)冷やすと血行が悪くなり傷の治りが遅れます。なるべくそっとしておきましょう
(3)歯みがきは手術した場所を避けて行います。傷の周辺は処方されたうがい薬を口に含み、そっとひたす程度で十分です。決してブクブクうがいをしないでください

2.翌日~1週間後

痛み止めと抗生剤を飲んでいるため、大きな痛みを感じることはないでしょう。また出血もにじむ程度です。
早いかたでは翌日、ふつうは2~3日で腫れのピークを迎えますが、この腫れは問題ありません。
また、4~5日すると血腫(ぶつけたときの青あざのようなもの)ができることがあります
自然に消えますので、これもご心配いりません。
約1週間後には傷口がふさがるので抜糸においでいただきます。
(1)患者さんの状態にもよるのですが、手術した場所は少なくとも抜糸するまではうがいに留めます。それ以外の場所はていねいに歯みがきをしましょう。手術した場所の歯みがきの開始は、歯科医師の指示にしたがってください。
(2)必要に応じて、手術の翌日以降に消毒においでいただくことがあります

3.手術後1週間~1ヶ月

見た目には、ほとんど傷口が確認できないくらいに歯ぐきは治っています
この期間にする処置はとくにありませんが、このころからインプラントのまわりのあごの骨では、リモデリングと呼ばれる骨の再構築が盛んにはじまり、その結果、徐々にインプラントとあごの骨がひっつきはじめます。
骨の回復のため、強い力が加わらないように注意して過ごしていただきたいです

4.手術後3ヶ月~半年

あごの骨のリモデリング(再構築)もほぼ完了です。
その結果、インプラントとあごの骨がガッチリとひっつきます。
その後、インプラントの頭出しをする手術(2回目の手術)を経て、上もの(クラウンやブリッジ、入れ歯など)を乗せる処置へと進んでいきます。

※参考書籍 「nico 2010.3 クインテッセンス出版株式会社」

Q33 インプラントは人工の歯だから、もう病気にはならないですよね?壊れたりすることはあるのですか?
A33

毎日の酷使に耐える小さな精密部分ですから壊れることもあります。ただ、そのほとんどはパーツを取り替えれば修復可能です。
むしろ心配なのは、雑な歯みがきで歯周病と同じ病気になってしまうことです。

人工歯なのでむし歯にはなりませんが、周りのあごの骨や歯ぐきは人工ではないのでケアを怠ると歯周病になってしまいます。
歯周病であごの骨が減ってしまうとせっかくの治療が長持ちしません

 ※参考書籍
 「nico 2012.1 クインテッセンス出版株式会社」
 「nico 2010.3 クインテッセンス出版株式会社」

Q34 インプラントをして歯ぐきが腫れてきたのはどうしてでしょう?
A34

歯みがきが足りず、プラークが溜まると歯周病と同じような炎症が起きてしまいます。骨に炎症が広がる前の初期症状のうちに炎症を止めてインプラントを守りましょう!
インプラント周囲粘膜炎がさらに進むとインプラント周囲炎になってしまいます。天然歯の歯周炎と同じように炎症のためにあごの骨が破壊され、せっかくのフィックスチャーとの結合が損なわれてしまうのです。
重度になると、インプラントがグラグラし、最終的には抜け落ちてしまいます。

※参考書籍 「nico 2012.1 クインテッセンス出版株式会社」

Q35 インプラント周囲炎について教えてください。
A35

インプラント周囲炎とは、インプラント埋入後にインプラント周囲組織に炎症が起こり、歯肉の炎症や歯槽骨の吸収が起きる疾患です。

CT撮影によって、インプラント周囲にインプラント体に沿った骨吸収を確認できます。

また、慢性化すると骨吸収周囲に骨硬化様像が著しく見られます。

リスク因子

  1. 口腔清掃不良
  2. メインテナンスの欠如
  3. 喫煙
  4. 糖尿病
  5. 歯周炎の既往
  6. 歯周炎の存在
  7. セメントの滲出
  8. 上部構造の形態と設計
  9. インプラント体の破折
  10. インプラント―アバットメント接合部
     ※アバットメント…インプラントの上に入れる土台
  11. 角化粘膜の不足(ポケット2mmの場合は4mm以上)
  12. 粘膜貫通部の厚さ

 

インプラント周囲疾患の検査

  1. 診断基準
     ・プロービング 6mm以上
     ・BOP +
     ・排膿 +
     ・骨吸収 3mm以上
  2. 視診
  3. 触診
  4. プラークコントロールの評価
  5.  プロービング
     ・深さ
     ・BOP
     ・排膿
  6. X-ray
  7. 咬合診査
  8.  軟組織の診査
     ・角化粘膜幅
     ・粘膜退縮量
     ・粘膜可動性
  9. 残存歯の歯周病検査
     ・プロービング、深さ、BOP、動揺度、プラークコントロール、X-ray
  10.  アバットメント除去時の診査
     ・貫通部粘膜
     ・粘膜貫通部上部構造
     ・アバットメント
     ・アバットメントスクリュー
     ・インプラント体プラットホーム

 

治療方法

保存が困難であることから抜去の対象となります。
一般にインプラント頸部周囲の炎症症状ならびに骨吸収がある場合は積極的な処置を行います。
骨吸収があれば、インプラント周囲軟組織の掻爬(そうは)と再生療法を行う必要があります。

 

※参考書籍

 「画像診断に学ぶ難易度別口腔インプラント治療」
 編集 金田 隆
 著者 阿部 伸一、金田 隆、矢島 安朝、加藤 仁夫、月岡 庸之
 永末書店

 「3-stepと3-zoneで対応するサポーティブ・インプラント・セラピー」
 申 基喆 監、林 丈一朗 編著
 株式会社ヒョーロン・パブリッシャーズ

Q36 インプラント周囲炎の治療で、インプラントを保存する基準は何ですか?
A36

現在、インプラント周囲炎の治療では除去・保存の明確な基準がないことが問題となっています。このことはインプラント周囲炎の治療は除去が最も確立した治療であり、歯科医師によって治療方針が異なるからです。ショートインプラントの予知性から保存治療とするかを決定する考え方がありますので、ご紹介します。

(1)患者さんがインプラントの再手術を希望しない
(2)解剖学的問題(特に骨量)から再手術が困難である
(3)5mm以上の残存支持骨量を有すること
(4)炎症や感染のコントロールが可能な周囲組織(特に口腔前庭の位置)

以上の条件が満たされた場合、保存治療の対象とすることができます。

※参考書籍
 「KIT NEWS vol.38 NOV 2014」 京セラメディカル株式会社

Q37 インプラントをしたあと、メインテナンスはなぜ必要なのですか?
A37

プロでなければ確認できないチェック項目が目白押しです。

1.視診・触診

歯ぐきが腫れていないか、プラークや歯石は溜まっていないか、膿は出ていないか、周囲の天然歯の健康状態は?などのチェックをします。

2.プロービング検査

炎症の有無をプローブで調べます。フィクスチャーとの結合を傷めないよう、軽いタッチで行います。出血したりポケットが3ミリ以上あると炎症が起きている危険信号。歯みがきの見直しや治療が必要になります。

3.染め出し

赤く染まったところは汚れの取れていないチェックポイント。その場所を確認していただき、歯ブラシやフロス、歯間ブラシが効果的に当たるようなテクニックを習得してインプラント周囲炎を予防します。

4.エックス線写真撮影

炎症が見られるときなど、必要に応じて適宜エックス線写真撮影をし、あごの骨が失われていないかを調べます。

5.噛み合わせのチェック

噛んだときにどこか当たる感じがあるなどの違和感がないか、偏った無理な力がかかっていないか、周りの天然歯が動いてはいないかなどのチェックをします。

6.ネジの緩みのチェック

毎日噛んでいるうちにパーツのネジが緩んでくると、隙間に汚れが入り込みやすく、炎症の原因になります。また、部分も傷みやすくなってしまうので定期的なチェックが必要です。

7.PMTC

軟らかいラバーカップやラバーチップを使い、研磨材の入っていないペーストでソフトにみがきます。歯間や歯ぐきのキワなど、セルフケアが不十分になりがちな場所や、患者さんが苦手なところのプラークコントロールを、プロのケアでお手伝いします。

8.スケーリング

骨との結合を促進させる加工がほどこされているので、傷めないようにカーボン製などの軟らかいスケーラーを使い、注意深く行います。

9.パーツの分解掃除

パーツの接合部のマイクロギャップは汚れの溜まりやすい場所です。また、ネジが緩んでいたりして、接合部からなかにプラーク汚れが入りこんでいるときは、パーツを分解して掃除をします。

インプラント治療に区切りはあっても完了はありません。
治療が終わって快適になったら今度は定期検診で会いましょう!

 ※参考書籍
 「nico 2012.1 クインテッセンス出版株式会社」
 「nico 2007.2 クインテッセンス出版株式会社」

Q38 どんな歯医者さんにかかるとよいですか?
A38

迷ったり考える時間を与えてくれて、患者さんにメリット・デメリットやほかの選択肢も示してくれる歯科医師がいいでしょう。インプラントは、その多くが手術の緊急性がありません。ご家族とじっくり相談なさることをおすすめします。セカンドオピニオン、サードオピニオンをとるのもよいでしょう。

※参考書籍 「nico 2007.2 クインテッセンス出版株式会社」

Q39 インプラントはフッ素で腐食するのでフッ素入りの歯磨き粉などの製品は使わない方がいいと聞きました。本当なんでしょうか?
A39

私は、フッ素はインプラントに対して悪影響を及ぼすことはほとんどないと考えています。それよりもお口の中に残っている歯を守るという意味でフッ素を使うことをオススメします

フッ素はインプラントの素材であるチタンに影響を与えることはなく、一方で上部構造のセラミックのつやをなくすことが知られています。しかし、歯磨きをした後、みなさんうがいをされると思います。うがいによってお口の中のフッ素濃度はごくわずかになります。その濃度では上部構造に対する影響はほとんどないというのが私の考えです。

また、2017年現在、次のような最新の報告がなされました。

インプラントの腐食・劣化のメカニズムは、「口腔内にフッ化物が存在すると水素イオンとの結合で微量のフッ化水素酸(HF)が生成され、これがチタン表面の不働態皮膜である酸化膜を破壊する」というものです。これにより、インプラントを装着した患者を対象としたフッ化物無配合歯磨剤が販売されることに至りました。

一方、日本口腔衛生学会は、むし歯予防の効果が科学的に証明されているフッ化物の使用を中止することで残存歯のむし歯のリスクが増大することを危惧し、フッ化物によるチタン腐食の問題についてフッ化物応用委員会がいち早く声明を出しました。学会は、日本の歯磨剤や洗口剤を使用したときに口の中に残るフッ化物イオン濃度は微量であるから、日常的に使用して差し支えないとの見解を示しています。』

また何かありましたらご相談ください。

※参考書籍
 「日本歯科医師会雑誌 2017 vol.70 No.2」
 公益財団法人 日本歯科医師会

Q40 インプラントは、失敗もあるしこわいと聞いたことがあります。大丈夫でしょうか?
A40

世界数百万人に臨床実績のある治療です。正確な診査・診断と丁寧な手術が患者さんのQOLを支えています。再治療の余地が広いのもインプラントの特徴です。

※参考書籍 「nico 2007.2 クインテッセンス出版株式会社」

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