小児・妊娠中の治療について
Q111 | 先天性欠如歯はどのように治療するのですか? |
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A111 |
いくつか治療方法がありますので、以下を参考にしてください。 1.乳歯を残す先天性欠如歯の治療の選択肢として、欠如歯の代わりに、残った乳歯を大事に使う方法があります。少なくとも成長期が終わるまでは、あごが成長し噛み合わせも変化するため、インプラントなどの本格的な治療は成長期が過ぎてからになります。歯科医院で乳歯の予防管理や余分な力が加わらないように噛み合わせのチェックを受けながら、乳歯を長持ちさせ、成長期を乗り切りましょう!
2.矯正で治す出っ歯や乱ぐい歯の方の先天性欠如歯の治療は、基本的には隙間を詰め、必要な場合に抜歯をして、口元を引っ込め歯を並べます。成長期前でこれから背が伸びるというお子さんの場合、歯を動かすだけでなく、あごの骨格の成長を誘導して上下のあごのバランスを根本的に改善することができるので、おとなになってから治療するより断然有利です。早期発見していきましょう。
3.自家移植で治療する自家移植とは、ご自身の歯を別のところに移植する方法です。先天性の欠如があるところに歯を移植して噛み合わせのアンバランスを改善します。すべてのケースで移植できるわけではありませんが、有効な治療方法です。
4.入れ歯を使う先天性欠如歯の場合、左右がアンバランスになり、放っておくとあごの骨格がゆがんでくることもあります。入れ歯を使って骨格のゆがみを防ぎ、成長期が終わるとインプラントを入れるなどの治療が可能です。入れ歯といえば年配の方だけというイメージがあるかもしれませんが、小児用の入れ歯もあります。お子さんに頑張って入れ歯を使い続けてもらい、骨格の大きなゆがみを防ぐことが大切です。
※参考書籍 「nico 2015.9 クインテッセンス出版株式会社」 |
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Q112 | つわりがひどくて体調が悪いとき、歯みがきはどうすればいい? |
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A112 | 歯みがきが負担になってはいけませんが、「できるときに歯みがきする」くらいの気持ちでいてください。 ※参考書籍 |
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Q113 | 歯ぐきが、ぷっくり腫れてきた!これって歯肉炎?それとも・・・? |
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A113 | 妊娠期に見られやすい歯肉の異常に「妊娠性エプーリス」というものがあります。妊娠性エプーリスとは、妊婦の歯ぐきに発生する良性のエプーリス(歯肉種)の一種です。その発生頻度は0.1~5%前後とされ(文献によって多少、異なりますが)、妊娠性歯肉炎の発症に比べれば、かなり少ないといえます。 妊娠中期に発生することが多く、妊娠性歯肉炎と同様、出産後には自然治癒することがほとんどです。妊娠性エプーリスの発生機序については未だ不明な点も多いですが、現在のところ、妊娠期における女性ホルモンの分泌量の急増(内因的因子)が、歯石、不良充填物、不良補綴物、歯列不正など(局所因子)に影響した結果、歯肉にエプーリス(炎症性反応性増殖物)が形成されると考えられています。 ※参考書籍 |
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Q114 | 現在妊娠しており授乳中なのですが、レントゲンは大丈夫でしょうか? |
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A114 | 歯科で行われるX線撮影の被爆線量は1年間の自然放射線に比べると、ずっと低いものです。おなかの部分には防護エプロンでカバーしますので、まず心配ありません。
※参考書籍 |
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Q115 | おなかの赤ちゃんが歯周病菌にいじめられるって本当ですか? |
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A115 | 実は、歯周病菌の出す毒素の刺激が妊婦さんのおなかにいる赤ちゃんをいじめてしまうこともわかっています。歯周病にかかっている女性が妊娠すると、女性ホルモンが大好物の歯周病菌がお口のなかで活気づいてしまうのです。自分のためだけでなく赤ちゃんのためにも、ふだんから定期的に歯周病のチェックを受けお口のなかの清潔を保ちましょう。歯周病菌の出す毒素に出産のスイッチを早めに押されてしまっては大変です!歯周病を予防しましょう。 |
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Q116 | 永久歯が歯ぐきから出てくるスピードってどのくらいなんですか? |
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A116 | 歯が歯肉を破って口腔内に萌出を始めてから咬合面に到達するまでの時間的経過を、ヒトの小臼歯について計測した報告があります。 ・歯の萌出スピードは午後の6時以降から夜中までの間で最も速く、平均時速13ミクロン程度である。この時間は成長ホルモンの分泌レベルの高い時間帯である。 Risinger RK & Proffit WR. Continuous overnight observation of human premolar eruption. Archs oral Biol 1996; 41: 779-789.・平衡期においては、口唇・頬や舌から安静時に加えられているような弱いが持続的な力が萌出を妨げ、咀嚼力のように強いけれども極端に短い時間しか働かない力は、歯の位置を変化させる要素とは考えにくい。 Gierie WV, Patterson RL & Proffit WR. Response of erupting human premolars to force application. Archs oral Biol 1999; 44: 423-428.
※参考書籍 |
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Q117 | 現在妊娠していてレントゲン撮影に不安があります。防護でどのくらい放射線をカットできるのでしょうか? |
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A117 |
口内法撮影の散乱線の場合、防護用の鉛エプロン(0.25mm鉛相当)でおよそ99%カットされます。 元々口内法のX線量は一次線、散乱線ともに少ないため、1回の撮影では測定機器の下限以下の値になってしまいますので、X線を数十回照射して1回あたりの計算したものを参考値としています。 (参考) |
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Q118 | まだ妊娠安定期に差し掛かっていません。安全なレントゲン撮影の限度について教えてください。 |
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A118 |
残念ながらはっきりした数値はありません。 影響はゼロとは言えませんが、自然放射線量と比べると口内法撮影は200分の1ぐらいの量で、口内法X線撮影1枚当たりの被曝線量は平均して0.01mSv~0.08mSvです。一方で、およそ0.1Gyを超えると奇形が発生するとされています。正確ではありませんが0.01mSv≒0.01mGy程度ですので、およそ1万分の1です。確率的には影響がないと考えることができますので、これらの数値からいえば、妊娠中でも極端に制限する必要はないといえます。しかしながら、患者さん自身の不安もありますので、急がないで良い部分は後回しにした方が良いでしょう。 |
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Q119 | 現在妊娠中ですが、胎児の哺乳行動はどのように発達するのでしょうか? |
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A119 |
哺乳行動の発達(胎児期)についてまとめた文献がありますのでご紹介します。 木原秀樹:赤ちゃんにやさしい発達ケア、メディカ出版、大阪、2015、116-150. 妊娠8週~上口唇への刺激で、頭部と頸部が屈曲する原始的な探索反射が見られます。 妊娠11週~口唇部分に触れると、羊水の嚥下が誘発されます。 妊娠12週~リズミカルな口の開閉が出現します。 妊娠15週~指を吸う動きが確認されます。 妊娠28週~歯肉の刺激で、下顎がリズミカルに開閉します。刺激で下が側方に動きます。 妊娠35-36週~吸啜/嚥下の協調性が完成します。
※参考書籍 |
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Q120 | 10人に1人のお子さんにあるという「エナメル質形成不全症(MIH)」って何ですか? |
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A120 |
エナメル質形成不全症(MIH)とは、おもに前歯と6歳臼歯(第一大臼歯)に発症するエナメル質形成不全をいい、MIHのMとは臼歯(Molar)、Iとは前歯(Incisor)、Hはエナメル質形成不全(Hypomineralisation)を指します。 従来知られてきた遺伝性のエナメル質形成不全や、全身疾患、歯のケガ、乳歯のむし歯などによって起きたエナメル質形成不全とは異なる疾患で、原因はまったく明らかになっていません。 エナメル質形成不全症の歯はエナメル質がもろく、透明感のない白色や黄褐色をしているのが特徴です。とくに強い力のかかる奥歯は崩れやすく、放っておくとそこからむし歯がはじまるので、きめ細かい経過観察が欠かせません。痛いときだけ歯科治療にとどまりがち。原因がエナメル質形成不全症だとわからないまま、むし歯でつらい思いをしているお子さんもおられるかもしれません。 エナメル質形成不全症の歯であっても、放置せずに経過観察を続けていると、小さな治療で歯をなるべく長くもたせたり、タイミングを見てしっかりとした被せ物をするなど、患者さんの年齢や症例に応じた対策を取ることができます。乳歯の頃からお子さんの定期的なメインテナンスをはじめて、大切な永久歯を歯医者さんといっしょに守っていきましょう。 ※参考書籍 |
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