糖尿病
Q1 | 糖尿病とは? |
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A1 |
糖尿病とは、生活習慣病のひとつで、血液中にブドウ糖が余り慢性的に血糖値が上がってしまう病気です。すい臓から分泌されるインスリンというホルモンが、細胞にブドウ糖を届ける働きをしているのですが、このインスリンが減ったり働きが悪くなるために、血液中のブドウ糖が細胞にうまく届かず、血液中にブドウ糖が余ってしまうのです。 |
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Q2 | 糖質制限が糖尿病や歯周病に効果があるって本当ですか? |
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A2 |
糖尿病と歯周病は深い関係性があります。 最近では、糖質制限がこれらに有効であると言われています。 糖質制限について下記にまとめましたので、これまで考えられていた「カロリー」との違いも含め、正しい知識を身につけましょう。 ■栄養学の常識は実は間違い糖尿病に関して、これまでは次のように言われていました。 1.脂肪は体に悪い = 糖質、炭水化物は体によい2.カロリーをたくさんとると太る = カロリーを減らすとやせる3.コレステロールは体に悪い = コレステロールが多い食品は食べるな4.和食は健康によい = 洋食は健康に悪い5.和食が長寿のもとである = 洋食がメタボ、糖尿病のもとである
これらの説から導かれることとして、「炭水化物を60%、脂肪を20%、タンパク質を20%」の食事がバランスがいい食事と決めてしまい、全てこの枠で決めるのです。 しかし、これは「糖質制限を推奨する」という食事法から見れば、「強制糖質過剰摂取食」となってしまいます。 この食事バランスにはエビデンス、根拠はあるのかというと、じつは日本糖尿病学会でも、これには根拠がないということを認めています。 ■糖尿病にとっての白米「お米はのど元過ぎたら砂糖と同じ」と言ったら、びっくりしますか? 栄養学的には、お米は砂糖と同じなのです。お茶碗1杯のご飯を150gとしますと、糖質量は55gで、これは角砂糖に換算すると17個分にあたります。 そういって説明しますと、拒否反応を示す方が多いことは、よくわかっています。 でも、これが真実です。 従来の糖尿病治療は、ごはんを食べ、砂糖をとって、薬を使え、ということです。 しかし、薬は使わなくとも、食事を「カロリー」ではなく「糖質量」で管理すれば血糖値は管理できるのです。 ■糖質制限で食べてよいもの、注意すべきもの肉類食べてよい食品 牛、豚、鶏、羊、加工品 魚介類食べてよい食品 魚、貝、甲殻類など 乳製品食べてよい食品 チーズ、バターなど 卵※注意食品なし 豆類食べてよい食品 大豆(ゆで)、大豆製品 野菜類食べてよい食品 葉物など 種実類食べてよい食品 クルミ、ごまなど キノコ類※注意食品なし 藻類食べてよい食品 のり、わかめなど 調味料食べてよい食品 醤油、みそ、塩、酢など 油脂類※注意食品なし 嗜好飲料食べてよい食品 焼酎、コーヒーなど 穀類・いも類食べてよい食品 こんにゃく 果実類食べてよい食品 アボガド 菓子類食べてよい食品 - ■糖質制限の効果糖質制限は次のような様々な疾病・症状に対する治療法として確立されつつあります。 てんかん、アルツハイマー病、がん、糖尿病、肥満、メタボ、アトピー、アレルギー疾患、歯周病、認知症、加齢による変化への応用 とくに、1日15g以下の糖質制限食は「スーパーケトジェニック(ケトン食)」と呼ばれ、注目されています。 ※参考書籍 |
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Q3 | 歯科治療と糖尿病の関係って? |
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A3 | 糖尿病になると、免疫反応が低下して炎症が起きやすくなったり、血流が悪くなって傷の治りが悪くなってしまいます。そのため歯科治療のなかでも、とくに抜歯、歯ぐきの手術などの外科処置をする際に、特別な配慮が必要となります。 |
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Q4 | 歯周病は治癒する病気でないって本当ですか? |
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A4 | 歯肉炎の段階であれば健口に戻ることができますが、ひとたび歯周炎を発症し歯周組織の破壊が起きると、もはや歯肉炎に戻ることはできません。すなわち、健口と歯肉炎は“可逆的”な関係にありますが、歯肉炎から歯周炎への進行は一方通行であり“不可逆的”なのです。 海外の学術団体であるEFPとAAPは、まさしく糖尿病と同じように、“歯周病は治癒する病気ではない”ことを宣言しています。「歯周炎患者は生涯にわたり歯周炎患者であるのだから、いくら状態が安定していても、隠れたリスクを過小評価してはいけない」と警鐘を鳴らしています。 ※参考書籍 |
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Q5 | 糖尿病の患者さんが歯周病の治療を受けると、検査値が改善されるって本当ですか? |
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A5 | 本当です。 現在では、「糖尿病患者さんが歯周病の治療を受けると、ヘモグロビンA1cは0.4%~0.7%改善する」ことが明らかになっています(1)。例えば、ヘモグロビンA1c7.0%の日とは歯周病を治療すると6.3%まで低下する可能性があります。糖尿病の飲み薬でも、ヘモグロビンA1cを0.7%低下させることは、なかなか難しいことですから、歯周病の治療は糖尿病患者さんにとって素晴らしい福音となることでしょう。 18年6月、オランダのアムステルダムで開催された欧州歯周病学会にて、米国と欧州の歯周病学会は共同で19年ぶりに新しい歯周病の分類を発表しました。そして、この新分類の中に糖尿病患者さんの危険因子として、糖尿病が登場したのです。「ヘモグロビンA1c7.0%以上の場合は、歯周病が進行しやすいので、特に注意が必要」と明記されました。歯周病専門医が、本気で糖尿病のことまで注意を払う時代がやってきたのです。 (1)西田亙:糖尿病療養指導士に知ってほしい 歯科のこと、医歯薬出版株式会社、東京、2018 ※参考書籍 |
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Q6 | 抜歯をしたあと、その後の経過を見せに何度か通院しなければならないそうです。糖尿病があるからでしょうか? |
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A6 | 糖尿病の患者さんは傷が治りにくいため患者さんによっては、治療後に何度か診せていただくことがあります。 |
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Q7 | 糖尿病には運動がいいと聞きます。本当ですか? |
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A7 | 本当です。 様々な研究機関から報告がありますので、ご紹介します。
東京ガス研究定期健診受診者の有酸素運動能力(体力)の変化と、糖尿病発症率について7年間観察しました。有酸素運動能力の変化を低下、やや低下、やや増加、増加の四つに分けて、糖尿病発症率を比較すると、1.0、0.64、0.40、0.33となりました。 このことから、運動不足(有酸素運動能力低下)は、日本人の2型糖尿病発症の危険因子と考えられます。
関西ヘルスケア研究通勤時の片道歩行時間が10分以下を基準とし、21分以上の群では発症リスクが27%低下しました。通勤(歩行)時間は、2型糖尿病の発症に関して、他の要因と独立した効果を示しています。
日本糖尿病合併症研究日本人の2型糖尿病患者さんを対象とした調査で、余暇時間の運動量に関して、「高運動量群」では、「低運動量群」に比べて、脳卒中発症と死亡率が明らかに低下していました。糖尿病患者さんでは、余暇時間の運動量が少ないと、脳卒中の起こる危険性が高まります。
このように、運動にはいろいろな効果があります。食後の運動実施は食事による血糖上昇を抑制し、血糖コントロール状態の改善が期待できます。一般的に週に150分以上実施するべきといわれています。なお、ヘモグロビンAlcレベルの低下は、運動量(頻度)の増加とは相関がありますが、運動強度とは相関がないことが判明しています。
※参考書籍 |
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Q8 | 糖尿病になると歯周病になりやすいのですか? |
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A8 | その通りです。糖尿病になると歯周病になりやすいです。 2型糖尿病患者は非糖尿病患者に比較して、歯周病発症率が2.6倍高いことが報告されています1)。 1)Nelson RG, Shloss,am M, Buddinf LM, Pettitt DJ, Saad MF, Genco RJ, Knowler WC, Periodntal disease and NIDDM in Pima Indians. Diabetes Care. 1990; 13: 836-40. ※参考書籍 |
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Q9 | 糖尿病は歯周病を悪化させますか? |
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A9 | 血糖コントロール不良の糖尿病は歯周病を悪化させます。 血糖コントロールの状態と歯周病の関係を調べた研究では、血糖コントロールが極めて不良な2型糖尿病患者(HbA1c ≧ 9%)は、非糖尿病者やHbA1c < 9%の2型糖尿病患者と比較して歯槽骨吸収のリスクがより高いことが示されています1)。ほかにも、血糖コントロールが極めて不良な2型糖尿病患者(HbA1c > 9%)は、非糖尿病者に比べて歯周炎のリスクは2.9倍であるが、HbA1c ≦ 9%では、非糖尿病者と比較して進行した歯周炎が多い傾向はあるものの、そのリスクに統計学的に有意な差はなかったとの報告があります2)。1型糖尿病の血糖コントロールに関しても、血糖コントロールの不良な糖尿病患者では、血糖コントロールのよい患者に比べ、歯槽骨吸収が多いことが報告されています3, 4)。メタアナリシスによる解析では、糖尿病患者では非糖尿病者と比較して歯周組織の状態が悪化していることが示されています5)。特に2型糖尿病は歯周炎の危険因子となる結果が得られています6)。 以上のことから、血糖コントロール不良の糖尿病は歯周病の進行に関与し、歯周病を悪化させると判断されます。 1)Taylor GW, Burt BA, Becker MP, Genco RJ, Shlossman M. Glycemic control and alveolar bone loss progression in type 2 diabetes. Ann Periodontol. 1998; 3: 30-9. 2)Tsai C, Hayes C, Taylor GW. Glycemic control of type 2 diabetes and severe periodontal disease in the US adult population. Community Dent Oral Epidemiol. 2002; 30: 182-92. 3)Tervonen T, Karjalainen K, Knuuttila M, Huumonen S. Alveolar bone loss in type 1 diabetic subjects. J Clin Periodontol. 2000; 27: 567-71. 4)Seppälä B, Seppälä M, Ainamo J. A longitudinal study on insulin-dependent diabetes mellitus and periodontal disease. J Clin Periodontol. 1993; 20: 161-5. 5)Khader YS, Dauod AS, El-Qaderi SS, Alkafajei A, Batayha WQ. Periodontal status of diabetics compared with nondiabetics: a meta-analysis. J Diabetes Complications. 2006; 20: 59-68. 6)Chávarry NG, Vettore MV, Sansone C, Sheiham A. The relationship between diabetes mellitus and destructive periodontal disease: a meta-analysis. Oral Health Prev Dent. 2009; 7: 107-27. ※参考書籍 |
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Q10 | 血糖コントロールによって歯周病が改善しますか? |
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A10 | コントロールされていない糖尿病患者では歯周病が重症化し、歯を失うリスクも高いことから、血糖コントロールを行うことは重要です。血糖コントロールが歯周病に与える影響について、血糖コントロールを行わない群をコントロールとしてランダム化比較試験を行うことは倫理的に困難です。また、血糖コントロールを強化療法群と通常療法群に分けて歯周病に与える影響について検討したランダム化比較試験はいまだ報告されていません。前後比較試験においては、糖尿病治療による血糖コントロールの改善に伴い歯肉の炎症の改善がみられましたが、歯周ポケットやアタッチメントレベルの改善は認められていません。 糖尿病治療そのものによる歯周組織の改善については報告が少なく、さらなる研究が必要です。しかし糖尿病治療による歯周組織の改善は限定的であり、原因であるプラーク細菌に対する歯周治療を行わずに、糖尿病の治療のみで歯周病の改善を期待することは推奨されていません。ただし、コントロール不良の糖尿病は歯周病のリスク要因になると考えられるため、歯周治療を成功させるうえでも糖尿病管理を徹底することは必須です。 糖尿病治療が歯周病の病態に与える影響については、ほとんど報告が認められていませんが、糖尿病治療による血糖コントロールの改善によって歯肉の炎症は改善するものの、歯周ポケットやアタッチメントレベルに有意な改善は認められないという報告があります1)。 1)Katagiri S, Nitta H, Nagasawa T, Izumi Y, Kanazawa M, Matsuo A, Chiba H, Fukui M, Nakamura N, Oseko F, Kanamura N, Inagaki K, Noguchi T, Naruse K, Matsubara T, Miyazaki S, Miyauchi T, Ando Y, Hanada N, Inoue S. Effect of glycemic control on periodontitis in type 2 diabetic patients with periodontal disease. J Diabetes Investig. 2013; 4: 320-5. ※参考書籍 |
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