糖尿病

Q21 糖尿病患者に対して口腔清掃習慣を確立するような患者教育は、良好な血糖コントロールの維持に有効ですか?
A21

良好な口腔清掃習慣は、糖尿病に関する患者の自己効力感を高め、糖尿病の発症や悪化を予防できる可能性があります。

歯周病と糖尿病の発症と悪化は、不良な口腔清掃習慣および生活習慣(食事、運動、睡眠、ストレス、喫煙、飲酒)と関連しています1, 2)

1)Zini A, Sgaan-Cohen HD, Marcenes W, Socio-economic position, smoking, and plaque. A pathway to severe chronic periodontitis. J Clin Periodontol. 2011; 38: 229-35.

2)Lagas EJP, Costa FO, Lages EMB, Costa LOM, Cortelli SC, Nobre-Franco GC, Cyrino RM, Cortelli JR. Risk variables in the association between frequency of alcohol consumption and periodontitis. J Clin Periodontol. 2012; 39: 115-22.

※参考書籍
 「糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン 改訂第2版 2014」
 特定非営利活動法人 日本歯周病学会 編  日本歯周病学会

Q22 糖尿病患者に対する歯周治療で、スケーリング・ルートプレーニング(SRP)単独療法と比べ、抗菌療法(局所あるいは経口)の併用は有効ですか?
A22

歯周炎を合併した糖尿病患者に対する歯周基本治療では抗菌療法の併用を考慮するべきです。とりわけ、糖尿病を合併した広汎型慢性歯周炎、あるいは重度の糖尿病関連性歯周炎やSRPで器具の到達が困難と判断される重度歯周炎症例に対しては推奨されます。

歯周病患者に対する抗菌療法のこれまでの研究報告をまとめると、通常の機械的プラークコントロールに反応が良好な全身的に健康な慢性歯周炎患者に対して、抗菌療法を併用した場合の付加的効果は、あまり期待できないというのがコンセンサスです。一方、通常の治療に対する反応が不良な治療抵抗性歯周炎患者や広範型重度歯周炎患者においては、抗菌療法の併用が有効と考えられています1)。さらに、血糖コントロール不良の糖尿病により、宿主の生体防御能が低下している易感染性の歯周炎患者や動脈硬化性疾患により血管内皮機能障害を有する歯周炎患者に対しては、歯周治療の反応性を向上させるとともに、全身および他臓器への悪影響を減少させる目的で、抗菌療法の併用が推奨されています1)

1)日本歯周病学会編. 歯周病患者における抗菌療法の指針. 2010.

※参考書籍
 「糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン 改訂第2版 2014」
 特定非営利活動法人 日本歯周病学会 編  日本歯周病学会

Q23 糖尿病患者に歯周外科治療等の観血的処置を行う際の血糖コントロールの目安はありますか?
A23

糖尿病患者に歯周外科治療等の観血的処置を行う際の直接的な血糖コントロール値の基準はありません。しかし、経皮冠動脈インターベンション(経皮冠動脈形成術)を行った日本人糖尿病患者における研究では、HbA1cが6.9%未満の患者は、6.9%以上の患者より治療結果は良好でした1)。相対的に侵襲性の低い歯周外科治療ではHbA1c6.9%前後を参考値としてよいと考えられます。

1)Ike A, Nishikawa H, Shirai K, Kuwano T, Fukuda Y, Takamiya Y, Yanagi D, Kubota K, Tsuchiya Y, Zhang B, Miura S, Saku K. Impact of glycemic control on the clinical outcome in diabetic patients with percutaneous coronary .intervention : from the FU-refistry. Circ J. 2011; 75: 791-9.

(日本語による解説:日内会誌. 2012; 101: 504-11.)

※参考書籍
 「糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン 改訂第2版 2014」
 特定非営利活動法人 日本歯周病学会 編  日本歯周病学会

Q24 糖尿病患者の抜歯や歯周基本治療、歯周外科治療の際にワーファリンの服用は中止すべきでしょうか?
A24

ワーファリン服用患者に関しては、休薬によって生じる可能性のあるイベントのリスクは、服用持続によって生じる観血的処置の際の出血のリスクを上回ると推定され、抜歯や歯周基本治療、歯周外科治療などの際に休薬は行わないことが勧められます。

※参考書籍
 「糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン 改訂第2版 2014」
 特定非営利活動法人 日本歯周病学会 編  日本歯周病学会

Q25 糖尿病患者に外科処置を行うときには、より徹底した抗菌薬投与を選択すべきでしょうか?
A25

血糖コントロールされた糖尿病患者における歯周外科治療後の手術部位感染(Surgical site infection : SSI)のリスクは、健常者と同程度であるため、徹底した抗菌薬投与を選択する必要はありません。しかし、血糖コントロールが不良の糖尿病患者の外科処置に際しては感染のリスクがあるため、術前、術後の抗菌薬の予防投与を行うことが望ましいです。

※参考書籍
 「糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン 改訂第2版 2014」
 特定非営利活動法人 日本歯周病学会 編  日本歯周病学会

Q26 糖尿病患者にインプラント治療を行うと非糖尿病者と同等の治療結果を得ることができるでしょうか?
A26

コントロール良好な糖尿病患者に対するインプラント治療歯、成功率、生存率ともに高く、非糖尿病者と同等の治療結果が得られるとの報告があるが、それらに否定的なものも存在します。また、多くの場合、コントロールの基準があいまいなため、積極的に推奨できません。

※参考書籍
 「糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン 改訂第2版 2014」
 特定非営利活動法人 日本歯周病学会 編  日本歯周病学会

Q27 糖尿病だと歯周病になりやすいだけでなく、逆に歯周病で糖尿病が悪くなるというのはホントですか?
A27

まだナゾも多いのですが、近年の研究では歯周病になると血糖値のコントロールを邪魔する毒素が出ることがわかってきました。
どうやら歯周病と糖尿病は、お互いに悪さをし合っているようです。
運動しても食事療法をしても糖尿病がよくならなかった人が、歯周病の治療をしたら糖尿病のデータが改善した、という研究結果も出ています。歯周病菌の出す毒素とからだの免疫機能が戦うと、インスリンの働きを鈍らせる物質が出て、血糖値のコントロールが難しくなるからだと考えられています。糖尿病に限らず、心筋梗塞、動脈硬化などを悪化させることもわかってきています。お口の健康はもちろん、全身の健康のためにも、歯周病の治療を早期にはじめましょう!

※参考書籍 「nico 2011.5 クインテッセンス出版株式会社」

Q28 糖尿病の治療をしていますが、歯の治療前に注意することはありますか?
A28

安心・安全な歯科医療をご提供し患者さんの全身状態をよりよく保つためには患者さんからの情報提供が欠かせません。以下の6つのポイントを確認しましょう。

1.血糖値について教えて下さい。

糖尿病の治療を受けておらず、空腹時血糖値が120mg/dlを超えていて糖化ヘモグロビン(HbA1c)の値も高いかた、また、治療を受けてはいても130mg/dlほどある患者さんの場合、感染による重症化を避けるため、血糖値のコントロールができるまで歯科治療を延期させていただくことがあります。ふだんから糖尿病の治療を受けてコントロールしておくことがとても大事です。
コントロールができていて、重篤な合併症がなければ、通常は歯科医院での治療が可能ですのでご安心ください。

2.現在どんな糖尿病治療を受けていますか?

現在受けておられる糖尿病の治療は、食事療法のみでしょうか、飲み薬を飲んでおられるのでしょうか、あるいはインスリン治療を受けておられるのでしょうか?
ご来院の際には、問診表に現在の治療内容、服用している薬の量や服用回数などを、ご面倒でもできるだけ詳しくご記入ください。
なお、お薬手帳、あるいは実物のお薬をお持ちいただけるとありがたいです。

3.糖尿病による合併症はありますか?

糖尿病になるとさまざまな合併症を引き起こしやすくなります。たとえば、しびれや筋力低下、痛みに鈍感になる「神経障害」。網膜にある毛細血管が詰まって起きる「網膜症」。腎臓の毛細血管が硬化して血液のろ過機能が低下する「腎症」。心筋梗塞、狭心症、脳梗塞などの原因になる「血管硬化」など。こうした合併症の治療や処方されている薬には、歯科治療の安全性を左右するものが少なくありません。
お薬手帳をお持ちいただき、できるだけ詳しく問診表にご記入をお願いいたします。

4.通院している病院を教えて下さい。

糖尿病や、糖尿病の合併症をお持ちの患者さんには、歯科治療をする際にも特別な配慮が必要な場合があります。
そうした際には、内科の先生と連携をとりながら治療を進める必要も出てきます。現在通院している病院名や、主治医の先生のお名前をお教えください。

5.糖尿病患者さんには外科後の感染予防のため事前に抗生剤をお飲みいただきます。

糖尿病の患者さんは細菌感染を起こしやすく、外科処置を行う際などは感染を予防するために抗生剤の事前投与が必要なことがあります。
当日は、抗生剤の血中濃度が高くなるよう、治療の2~3時間前に飲んでおきましょう。
前日の晩、当日の朝、当日の昼など、数回飲んでおけばさらに安心です。歯科医師の指示通り、必ず忘れずに飲みましょう。

6.大きな病院をご紹介することも。

問診や診療の結果、血糖値がコントロールされていなかったり、重篤な合併症がある患者さんの場合、また症例に応じて、さらなる安全を期して、入院施設が整っていたり全身管理のできる総合病院や大学病院の歯科・口腔外科をご紹介させていただくこともあります。
ご理解をお願いいたします。


※参考書籍 「nico 2011.5 クインテッセンス出版株式会社」

Q29 糖尿病の治療をしていますが、歯の治療当日と治療後に注意することはありますか?
A29

いつものように血糖値をコントロールしよい体調を保ちながら治療を受けるための大切なポイントと、治療後、順調に回復するための重要な注意事項を整理してみました。
ぜひ参考になさってください。

1.インスリンやお薬はいつもどおりに!

抜歯などの外科処置を受けるかたのなかに「痛くて食事ができないと血糖値が下がるだろう」と、低血糖になることを心配して、傷が治るまでインスリンや服薬による治療を休んでしまう患者さんがおられます。
ところが人体は、食事をしないとその代わりに、筋肉のタンパク質から糖がさかんに作られる仕組みになっているため、結果的に血液は高血糖になりがち。治療を休んだ分血糖値のコントロールが不良となり、傷の治りが遅れ、感染が重症化しやすくなってしまうのです。インスリンやお薬は、必ずいつもどおりに使い続けましょう!
また、当日はインスリンやお薬をお持ちください。

2.治療前の食事は必ず食べましょう。

「治療を受けるときに気分が悪くなるといけないから」と、食事を抜いて来院されるかたがときどきおられます。
でも、これは危険。というのも、ただでさえインスリン不足で細胞に糖をうまく取り込めない糖尿病のかたの場合、低血糖発作を起こしやすくなるのです。
大脳は血糖の低下にたいへん弱く、50mg/dl以下の低血糖が続くと意識を失ってしまいます。
治療前には食事をすませ、できれば食後1時間くらいの時間帯に治療を受けましょう。

3.甘いものをお持ちください。

低血糖発作を起こしたときは、糖分を摂るとすぐに回復します。そこで、発作が起きてしまったときのために、念のため甘いものをお持ちください。
飴や砂糖、砂糖水、糖分のたくさん入ったジュースなどがおすすめです。ノンシュガー、ノンカロリーの飴ではなく、黒飴や氷砂糖のような昔ながらのものがよいでしょう。
治療後に麻酔や痛みのためになかなか食事ができないときも、砂糖水などで糖分を補いましょう。

4.抗生剤の服用を忘れずに。

糖尿病の患者さんは、感染症を起こしやすくなっています。そこで感染予防のために、治療前日くらいから抗生剤を飲んでいただきます。
そして、治療後も歯科医師の処方どおり忘れずにお飲みください。抗生剤は、一定の期間一定の血中濃度が保たれないと効果がありません。
中途半端な飲みかたをすると耐性菌が生まれる原因にも。
処方どおりにお飲みいただくことがたいへん重要です。

5.治療後も何度か来院をお願いします。

患者さんの糖尿病の程度によるのですが、治療後に何度か消毒や経過観察のためにご来院いただくことがあります。糖尿病のかたの場合、一度感染を起こしてしまうと治りにくく重症化しやすいので、こまめに消毒しておくと安心です。
歯科医師が手厚くケアをするのは糖尿病をよく理解している証拠。
「この先生に出会えてラッキー」と思っていただき、ぜひ予約どおりの通院をお願いいたします。


※参考書籍 「nico 2011.5 クインテッセンス出版株式会社」

Q30 糖尿病でも歯が悪くならないように歯周病予防をしたいと思います。どんなことに気をつけるとよいですか?
A30

毎日のブラッシングをていねいにすること。そして、半年に一度は定期健診においでください。歯周ポケットに隠れた歯石やプラークは自分では取り切れません。
プロの技で、きれいにしてもらいましょう。

※参考書籍 「nico 2011.5 クインテッセンス出版株式会社」

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