歯・お口の状態について
Q91 | 歯ぐきが腫れているようですが、何が原因ですか? |
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A91 | 歯ぐきの腫れには2つの理由があります。 まず1つ目は、歯を磨かないことで浮腫性炎症を起こした場合です。この場合、炎症で血管の透過性が上がって、歯肉結合組織が浸出液で“水浸し状態”になるためです。ブラッシングをすると、“水はけ”がよくなって元に戻ります。 2つ目は、降圧剤、免疫抑制剤、抗てんかん薬などを服用している患者さんに起こる“薬剤性歯肉増殖症”です。薬さえ飲めば必ず発症するというわけではなく、個人差が大きいです。ニフェジピンのような降圧剤での発症率は15~20%、シクロスポリンのような免疫抑制剤での発症率は25~30%、そしてフェニトインのような抗てんかん薬で約50%といわれています。この個人差には遺伝子の要因がかかわっている可能性があるようです。
※参考書籍 |
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Q92 | 顎関節症の自覚的症状について教えてください。 |
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A92 |
次のようなものがあります。
※参考書籍 |
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Q93 | 顎関節症と間違えやすい疾患はどのようなものがありますか? |
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A93 | 次の3つの疾患がよく間違われます。 智歯周囲炎最も間違う頻度が高く、智歯周囲歯肉の圧痛、顎下リンパ節の圧痛で鑑別します。 根尖性歯周炎・歯髄炎自発痛、歯の打診痛、顎下リンパ節腫大や圧痛、X線所見で鑑別します。 関節突起骨折単純X線撮影では判定できない場合も、問診(外傷の確認)、下顎骨を押して疼痛が出現するか、などから鑑別します。 ※参考書籍 |
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Q94 | 顎関節症の関節痛に対して消炎鎮痛薬は有効ですか? |
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A94 | 顎関節症の関節痛がある場合、消炎鎮痛薬は有効です。
顎関節症の関節痛に対する消炎鎮痛薬診療ガイドライン(日本薬物療法学会)より ※参考書籍 |
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Q95 | 顎関節症患者に特有の生活習慣ってあるんですか? |
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A95 |
※参考書籍 |
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Q96 | 最近歯ぐきが落ちてきました。どうして? |
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A96 | 歯肉退縮といっても2つの種類があり、それぞれで発症メカニズムが異なります。 1つ目は歯周病の進行に伴うもので、炎症性歯肉退縮と呼ばれます。歯周病によって付着や支持骨を失い、それに伴って歯肉辺縁が下がります。好発部位は歯間部で、歯間乳頭が下がって歯と歯の間に隙間ができます。 もう1つは、バランスの悪い組織に過剰なブラッシング圧などが加わることによって起こるもので、非炎症性歯肉退縮と呼ばれます。弱い組織に外傷がはたらいて起こるので、細菌による炎症があるわけではありません(外傷による炎症はあります)。そのため非感染性歯肉退縮ということもあり、唇頬側中央部が好発部位です。
※参考書籍 |
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Q97 | 顎関節症の治療における生活指導について教えてください。 |
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A97 |
痛み、あるいは機能障害のある患者さんに、歯科医院が一方的に治療をしても患者さんが病気を治るように努力をし、注意をしていただかなくては、治療が長引いたり、不可能になってしまったりします。このため、生活指導は不可欠なものです。 1.開口量を制限してください。治療を開始してから2~3か月は大きく口を開けてはいけません。大きな食べ物は丸かじりせず、小さく切ってから、口の中に入れるようにしてください。もし、あくびが出始めたならば、すばやくコブシを下顎にあて、強く押し、口が開かないようにすることが必要です。
2.硬い食べ物を摂らないようにしてください。フランスパンやスルメ等の硬い食べ物は、顎関節や筋肉に大きな負荷を与えてしまいます。また、チューインガムも長時間に及んで顎に負担をかけてしまいます。普通の食事も長い時間をかけないように努めてください。
3.下顎を前に出すような動作をやめてください。下顎を前に出すと外側翼突筋が緊張するため、注意が必要です。下顎を前方に出すような、頬杖、前歯でカチカチする、舌の癖、口紅を塗る時に下唇を前に出す、などは避けてください。
4.正しい姿勢で寝てください。就寝姿勢により頭の位置が変化するとともに下顎の位置にも影響するため、どのような姿勢を取るかは重要です。背骨はまっすぐに伸ばし、枕は硬いもので直径15cm位のものを適当とし、首の正常な湾曲に沿った円筒形のものがよいでしょう。バスタオルを硬くまるめて、直径15cmぐらいにして、これを首の湾曲に沿って首の上がる角度が15度くらいになるような、仰向けで寝ることが理想的です。 あまり大きな枕で下あごが前に出るようなものは避けなければいけません。枕のあて方により下顎の位置が変化してくるため枕と頭の位置も考えなければなりません。うつ伏せで寝る習慣や枕を顎の下にあてることは禁止しないといけません。
5.ストレスを回避しましょう。身体の緊張は心の緊張と密接に関係しています。現代病の根源である欲求不満、情緒不安、焦燥、精神疲労、ノイローゼ、不眠、過緊張を回避する必要があります。
※参考書籍 |
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Q98 | 等尺性筋訓練法について教えてください。 |
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A98 |
等尺性機能訓練法はアイソメトリックトレーニングとして筋力低下のあるものに対して、その増強を目的として行うものであり、等尺性筋収縮により筋力が高まることが知られています。 トレーニングの目的・効果は3つに分類されます。 1.骨と靭帯はトレーニングによって可動性あるいは可動域の増大につながってくる。 (顎関節症においては、特に開口量と関係が深い。) 2.神経系は、与えられた刺激に対し可能な限りすみやかに反応する能力をつける。 3.循環系は長距離ランナーのように与えられた負荷においてできる限り長時間対応できる能力を養う。
これらは最終的には筋力に関係してきます。筋力の増強は筋力を日常使っている程度以上に出さなくてはいけません。日常使っている程度の筋力では一日何回繰り返しても筋力は増強できません。
日常使っている筋力以上に力を出してトレーニングする方法がアイソメトリックトレーニングです。 (強い力で筋肉を拮抗して力を連続的に入れるため、急性期の機能障害には適用できません。ある程度症状が軽減してから咀嚼筋の筋力増強のために行うべきです) トレーニング方法A.下顎を閉口しようとする動きに対抗して、下顎を引き下げる口のうちに指をかけ、閉じようとする動作に対し抵抗する力で下方に引っ張ります。
B.下顎を開口しようとする動きに対し、下方より突き上げる下顎を閉じ、顎にコブシをあて、開こうとする動作に対し、抵抗する力を加えます。
上記のA、Bを、10秒間ずつ10回繰り返して、1日に3セット行います。
※参考書籍 |
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Q99 | 酸蝕歯って何ですか? |
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A99 | 「むし歯菌が出す酸によって歯が溶ける」のがむし歯です。酸蝕とは、それとは違って、酸性の食べ物や飲み物に歯が触れることで起こります。 実は、どんな人でも日常的に酸の影響を受けているのですが、唾液の力によってエナメル質が補修され、そのバランスが保たれているおかげで歯の健康が維持されています。でも、そのバランスが崩れて、酸の影響を過剰に受けるようになったときに、酸蝕という問題が生まれてきます。その度合いが大きいものを、将来問題になりそうだというものも含めて「酸蝕歯」と呼んでいます。 口のなかのpHは、ふつう唾液の力によって中性(約pH7)に保たれています。しかし、酸性の食べ物・飲み物を口に入れると、当然ながら口のなかは酸性にかたむき、エナメル質が溶けはじめます。これを「脱灰」といいます。しかし一方では、唾液が酸を中和して、唾液に含まれるカルシウムなどにより歯を修復してくれます。これを「再石灰化」といいます。通常はこの「脱灰+再石灰化」のバランスが保たれて、歯の健康が維持されます。でも、酸性の飲食物に長く、あるいはしばしば触れたり、唾液の減少などが原因で再石灰化が進まないと、バランスが崩れ、脱灰が進行してしまいます。 むし歯・歯周病との違い酸蝕症は、化学的溶解を原因とし、口腔内細菌の関与がありません。歯みがきだけでは予防できない歯の疾患です。重要なことは口のなかの酸のコントロールとクリアランスの促進です。 発症部位(酸蝕の拡散程度)が変化する酸蝕症は、三大好発部位(小窩裂溝、歯頚部、隣接面)を有するむし歯とは異なり、その要因や程度(重症度)により発症部位が変化するため、個々の症例ごとに口腔内全体を細かく観察する必要があります。 酸蝕+αがダメージを加速する臨床の現場において、酸蝕のみが関与すると断言できる症例は少なく、多くの酸蝕症例は、単なる化学的溶解に咬耗・摩耗が加わることによって、その進行が加速する傾向があります。 酸蝕症の調査・頻度国内調査では、約4人に1人が酸蝕症に罹患していることが明らかになっています。日常の臨床のなかで、エナメル質段階の酸蝕症を見逃さず、診断・臨床対応することが必要です。 ※参考書籍 「nico 2009.1クインテッセンス出版株式会社」 |
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Q100 | 生活の中でどんなことに注意すればよいですか? |
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A100 |
酸蝕歯になりやすいかどうかは食習慣、そして生活習慣によります。よくあるリスク習慣をあげてみましょう。 1.毎日のジョギング後の水分補給にビタミンドリンクや黒酢ドリンクを愛飲している。健康意識の高いかたで、スポーツの後の水分補給に黒酢ドリンクやビタミンドリンクなどを愛飲なさっているかたがいます。からだにはよくても、じつは歯が溶けやすいため注意が必要です。走った後は、口のなかがカラカラ。しかも汗をかいて体内の水分が減ると、唾液の分泌量はぐっと減っています。こうして唾液の力が弱まっているときに習慣的に酸性の飲み物を飲むと、酸蝕歯になりやすくなります。 2.部活中、熱中症の予防のため頻回に、少量ずつスポーツ飲料を飲んでいる。ことに暑い季節のスポーツでは、熱中症や脱水症状などにならないよう、水分をこまめに摂ることがとても重要です。でも、この飲み物がもしも酸性の強いスポーツ飲料なら、歯の健康が心配です。こまめに飲むと、歯と酸との接触時間が増え、しかも部活となると、毎日、数時間にわたり飲むことになります。ことに中高生の場合、奥歯の永久歯はまだ生えたてで軟らかく、成人の歯に比べてとくに溶けやすいのです。 3.朝食は必ず健康のためにグレープフルーツを食べその直後に歯みがきしている。毎日の食事や生活スタイルを習慣化して、同じサイクルを繰り返すことで体調管理に役立てて、健康に気を配るかたは多いことでしょう。しかし、酸蝕症のリスクがそのサイクルの中に組み込まれていると、良かれと思ってしていることが、酸蝕歯の原因になってしまうことがあります。柑橘系のくだものはとくに酸性度が高く、エナメル質を軟化させます。そこへゴシゴシと歯みがきをすると、エナメル質が過剰に削られてしまうのです。 4.仕事で運転中は、やっぱり大好きなコーラ。信号で止まるごとに飲む。市販の清涼飲料水のなかでも、とくに酸性の強い飲料にコーラがあります。以前はビンに入っていて一気に飲むイメージでしたが、最近はペットボトル入りになって、少しずつ飲むのに便利になりました。でも、「少しずつ」飲むと、酸と歯が接触する時間が結果的に長くなり、酸蝕歯のリスクが高まってしまいます。ことに、仕事で日常的に運転をしているかたは、停車するごとに少しずつ飲むことが多いでしょう。注意が必要です。 5.赤ちゃんがぐずるとき哺乳瓶でジュースを飲ませると満足してよく寝てくれる。赤ちゃんの生えたての乳歯は軟らかく酸性の飲み物に対してとくにデリケートです。甘い飲み物が好きな赤ちゃんに、ほしがるたびに哺乳瓶やマグでくだもののジュースを飲ませていると酸蝕症のリスクがたいへん高くなります。ことに眠れずにぐずるときに飲ませ、赤ちゃんがそのまま寝てしまうことになると、寝ているあいだは唾液量が減るので、口のなかに酸が長く留まってしまうのです。 6.お酒はチューハイかワイン。ちびちび飲むのが好きでつまみはいらない柑橘系の果汁の入ったチューハイやワインは、口当たりがよく飲みやすいお酒です。でもこれを毎日晩酌にチビチビと飲み続けると、酸蝕歯のリスクが高まります。お酒は少しずつ飲むほうが、からだへの負担が少ないですが、酸に触れる時間が長くなるため、歯への負担は増えます。つまみを食べれば、まだしもその刺激で唾液の分泌が促進される可能性もありますが、つまみなしでは、唾液の力にすがるほんのわずかな望みも絶たれます。
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