小児全般

Q21 乳児の哺乳ですが、どのように実施したらよいでしょうか?
A21

乳児の哺乳についての支援方針・方法の実際例をご紹介します。

評価項目 支援方針 支援方法
探索反射

1)探索反射の促進

2)口腔周囲の脱感作

1)乳首の先で、口唇や口角をくすぐるように刺激する。

2)手指で口唇やその周囲を圧迫するように刺激する。

吸啜反射

1)吸啜圧の促進

2)吸啜リズムの促進

1)口腔内の陰圧を高めるよう口唇や頬を圧迫する、下顎を支える。

2)乳首で上顎の吸啜窩を前後に刺激する、下顎を刺激する。

嚥下反射

1)一回嚥下量増加の促進

1)一回嚥下可能な乳汁量を少しずつ増加させる。

吸啜/嚥下/呼吸の協調性

1)哺乳中の吸啜/嚥下の協調性の改善

1)乳汁の流量が小さい乳穴の乳首(母乳実感SSS)または低流量タイプの乳首(母乳相談室)を使用する。

連続哺乳

1)哺乳量/時間増加の促進

1)覚醒レベルの維持または向上。

 

※参考書籍
 「月刊 小児歯科臨床 2016.7」 東京臨床出版株式会社

Q22 うちの子は構育障害があるのですが、いつからトレーニングを始めればいいですか?
A22

子どもの場合はおよそ5歳頃です。言語の先生の指示に従って、30分程度集中して課題に取り組めることが条件となります。文字が読めること、ことばを一つ一つの音のつながりとして理解できれば指導がやりやすくなります。

大人の場合は、発音を必ず治したいという目的意識がはっきりしていることが大切で、開始年齢は問いません。

 

構音訓練の開始条件

・音の誤りが習慣化している

・自然治癒傾向が認められない

・構音障害の原因となる器質的疾患がないか、すでに医科・歯科的な対応が行われている

・構音訓練が実施できる程度の集中力があり、発達の遅れが軽度である

・構音障害による心理的ストレスが生じている可能性がある

・構音訓練を持続的に受けられる環境である

 

※参考書籍
 「MFT臨床 指導力アップ・アドバンス編」
 監修者 山口秀晴、大野粛英、高橋 治、橋本律子 わかば出版

Q23 最近顎関節症が子どもにも増えているそうですが、なぜですか?
A23

かつて、顎関節症は大人の病気だと言われていましたが、最近では小学校高学年から中学生にかけて発症していることが多く見受けられます。これは、あまり噛みごたえのあるものを食べなくなったため、顎の骨や筋肉の発達が悪いことが考えられます。噛む機能に影響するだけでなく、肩こりや、頭痛などの症状と顎関節症の症状とは90%以上同じ側で起こり、顎関節症の軽快と同時にこうした症状もなくなることが多いから、顎関節症とある種の不定愁訴とは関連があると言われています。

 

また、頬づえや就寝癖から発症することもあり、口を動かした時に「カクッ」「ジャリ」など音がするような顎関節症の初期に態癖の指導をすることにより、自然治癒、あるいは進行を止めることが可能な場合があります。

 

噛み癖も顎関節症の原因のひとつです。片噛みの癖があると同じ側の顎関節が圧迫され、顎関節症になることがあります。機能的な問題を不正咬合(受け口、開咬、交叉咬合、過蓋咬合)があると噛み合わせが不安定になり、顎関節症が発症しやすくなります。ストレスが原因と考えられている就寝時の歯ぎしりやくいしばりも原因のひとつです。

 

幼児期から噛みごたえのある食品を食べ、顎の骨や筋肉を鍛えることと、態癖に注意することが顎関節症の予防につながります。また、ストレスをためない生活も大切です。ただし、症状がある場合には、噛みごたえのあるものを長時間食べることや、大きな口を開けることは症状を悪化させることがあるので、注意が必要です。

 

※参考書籍
 「歯と口から伝える食育」
 岡崎 好秀・武井 典子 編著  東山書房

Q24 顔や歯並びの左右の対称性、非対称性について教えてください。
A24

対称性・非対称性については、以下の3点が報告されています。

1.下顎顔面の非対称性はあらゆる時期にさまざまな原因から生じ、また複数の原因が同時に存在することがある。

2.原因がなんであっても、ひとたび非対称性が生じると、適応的変化と代償的変化の作用がはたらいて周囲組織に影響を与える。若年者においては成長発育の抑制や神経筋パターンの変化が起きて、非対称の継続因子となる。

3.小児期の交叉咬合では、非対称の進行と代償的な変化を防ぐために早期に改善を行うことが必要である。

人間の眼は左右対称的に存在し、内耳の両側の三半規管とともに、頭位や体位の微妙なバランス感覚を保っています。そのため、自然や物体などの対象物を見る際、左右対称なものを見ると人は安定感を感じ、それをまた美しいと本能的に感じるのかもしれません。しかし、人間はすべて対称的になっているわけではなく、心臓は左側に存在し、利き腕、利き足、利き眼、利き噛み癖があり、体躯も顔貌も歯列も全く対称的だという人を探すほうが大変です。そのため、多くの人々が少なからず非対称的な体躯や顎顔面や歯列を持っていますが、非対称はどこまで許容範囲で、どのくらいから異常なのか、そしてどこから治し、どこまで治すのか、昔も今も将来も大変難しい問題です。

 

このように、「正常な」非対称が「異常な」非対称になるポイントを定義づけるのは簡単ではなく、しばしばそれは臨床家のバランス感覚と患者さんのアンバランスの認識によって決められています。頭蓋複合体における臨床的な顔面非対称性は、左右の顔面半側の違いがやっとわかるレベルから大きな不一致を見るところまでの広い範囲にわたります。

 

非対称性の咬合異常は、遺伝的要因環境的要因、または遺伝的要因と環境的要因の複合的な要因により発症しますが、その発症機序や発症時期も諸説様々で不明な点も多くあります。また、非対称性の咬合異常に対する治療法や治療開始時期も数多く述べられていますが、統一的な見解はありません。

 

※参考書籍
 「月刊 小児歯科臨床 2014.7」 東京臨床出版株式会社

Q25 うちの娘は歯ぐきにメラニン色素が沈着しています。どうしたらよいでしょうか?
A25

広島大学大学院医歯薬学総合研究科 小児歯科学研究室教授 香西 克之

同 学内講師 光畑 智恵子

■メラニン色素について

生体がメラニン色素を生成するのは紫外線から自己を守るための生理的な防御反応であり、可逆的反応(元に戻る)と言われています。しかし、酸化が進むことによって皮膚ではシミとなり、歯ぐきでは黒褐色の色素沈着が見られるようになります。

歯ぐきのメラニン色素の沈着は、成人だけでなく小児にもしばしば見られるということが知られています。さらに色素沈着の広がりや濃度の状態は個人差があり、また同じ子どもであっても加齢とともに沈着度は変化します。

近年、禁煙推進運動のキャンペーンでは、受動喫煙が子どもの歯ぐきの色素沈着を誘発することが取り上げられています。しかし多くの小児の患者さんを診ていると、歯ぐきのメラニン色素の沈着があっても周りに喫煙者がいないことも多いです。逆に明らかに受動喫煙環境下にいる小児でも健康的なピンク色の歯ぐきをしており、親への禁煙の動機付けにならないこともあります。

このことに関して調査した研究では、次のような報告があります。

「色素沈着のある子どもの70%が『親が喫煙者』である一方、色素沈着のない子どもでもその35%が『親が喫煙者』であった」

小児の歯肉メラニン色素沈着と 親の喫煙との関係

 

埴岡 隆:子供の口腔内へのタバコによる健康影響, 小児歯科臨床, 61:397-404, 2008

■メラニン色素が沈着している子供への対応

1)色素沈着に対する処置

まず歯ぐきのメラニン色素の沈着は、歯ぐきが病的な状態であるのではなく、紫外線から体を守る防御反応であることを知っておきましょう。その上で審美的な観点から除去を希望する子どもに処置をします。歯ぐきのメラニン色素沈着は粘膜表面から0.2mm程度の深さに多く分布するため、この厚みの組織を除去しなければなりません。主にレーザーによる沈着部の組織除去や歯ぐきの漂白法などが行われていますが、メラノサイトができなくなるわけではないため、歯肉沈着の原因を取り除かない限り、再び色素沈着を繰り返すことになります。

2)メラニン色素沈着を防ぐための対策

臨床的には日焼け、口腔乾燥(口呼吸)、受動喫煙(副流煙)、アスコルビン酸不足などの対策をするしかありません。

この中で受動喫煙の除去は、もしそれが主な原因である場合は大きな効果をもたらしますが、最初にメラニン色素沈着の誘因がなんであるかを明確に評価することが先決で、その次に関係する誘因因子を取り除いていくべきです。

※参考書籍
 「月刊 小児歯科臨床 2011.10」 東京臨床出版株式会社

 

 

Q26 赤ちゃんの発達の順序を守るためのポイントを教えてください。
A26
  • 首が据わるまでは頭を支える
  • 自力で座るまでは座らせない
  • 身体を固定する椅子は使わない
  • 自力で立つまでは立たせない
  • 歩行器は使わない

※参考 床矯正研究会

Q27 口唇の成長について教えてください。
A27

口唇は成長に伴い摂食機能の発達によりその運動機能が口唇形態に大きく影響することから、口唇診査は乳幼児の摂食機能の発達段階を知るためのスケールとして活用できると考えられます。

口唇の形態から口唇機能の発達の遅れや低下、摂食機能以外の口腔機能の発達への影響などを推測し、さらにはその背景にある育児や保育環境での子どもの生活を想像することができます。つまり、口唇の機能はすべての口腔機能に関わっていることから、口唇を健全に成長させることは口腔機能全体の質を高めることになります。

口唇の働きは、摂食機能の咀嚼や嚥下だけでなく、鼻呼吸の管理や構音機能、表情の形成や歯列と咬合の育成にまで広く関わっていることからも乳幼児の口唇診査は大変意義のあることだと考えられます。

 

口唇の動き

  • 摂食機能の捕食
  • 咀嚼中の食物の口腔外への漏出防止
  • 摂取した食物の温度やテクスチャーによる食物選択や危険回避
  • 咀嚼運動における食塊形成のための食塊の移送と把持
  • 嚥下における上中咽頭収縮筋による咽頭収縮の補助的働き
  • 鼻呼吸時の咽頭と口腔の2次閉鎖
  • 構音機能(口唇音の形成)
  • 前歯の歯列形態の支持(前歯歯列ガイドライン)
  • 口腔疾患予防(口腔乾燥、感染防止)
  • 口腔運動としての「吸う・吹く」などの運動形成
  • 表情の形成

 

※参考書籍
 「小児歯科臨床 2020年4月号」 東京臨床出版

Q28 ハイハイについて教えてください。
A28

ハイハイの役割

  • 骨格筋をしっかり育てる
  • 骨格筋が育つと、呼吸力が高くなる
  • 足の親指で地面を蹴れるようにする
  • 姿勢反射を高める
  • 目線が上がることで顔が成長する

ハイハイをしっかりするために

  • 目線を上にあげれる→眼球運動が大切
  • お尻が上にあげれる→それまでの寝方、抱き方が大切
  • ハイハイの練習は足の裏に手を添えて、お尻を上げる

※参考 床矯正研究会

Q29 離乳食はいつ与えたらよいですか?
A29

離乳食を食べるには、以下の3点に注目してください。

  1. 日中の授乳を3~4時間間隔にする
  2. 食べる前はできるだけ空腹に
  3. 3回食に慣れたら早期の授乳習慣を見直す時期

※授乳時間以外に欲しがる時は、一緒に遊んで授乳以外のかかわりを増やします。

遊ぶことの楽しさが、母乳離れを進めます。

離乳食の必要性

  1. 母乳・粉ミルクの栄養不足
  2. 咀嚼の練習
  3. 消化機能の発達(消化器への刺激)
  4. 味覚の形成(甘味、うま味以外の体験)
  5. 発達を育む(感覚器官・運動器官への刺激)

 

離乳食の好き嫌いの対応

離乳食時の好き嫌いは咀嚼機能にあっていない場合がほとんどです。柔らかすぎても硬すぎても嫌がることがあります。

※月齢だけでなく萌出状態にあった軟らかさ、大きさ、とろみなど調整してあげます。

※参考文献
 「子どもの健やかな発育を願って いつどういう支援をすればいいのか」
 鏡 宣昭 講師 セミナーレジュメより引用

Q30 卒乳の時期と方法を教えて下さい。
A30

生後12か月が「離乳完了時期」の目標とされていましたが、現在は年齢で決めるのではなく、それぞれの親子の状況に合わせて検討する必要があります。

卒乳の条件

  1. 母乳やミルク以外から十分な栄養と水分が取れること
  2. 家族の卒乳への受け入れ準備が整っていること

 

一般的な卒乳方法

  1. 卒乳を考えたら母乳を与えながら寝かしつけることをやめましょう
  2. 母乳を与える感覚を徐々に伸ばします
  3. 水分は時々与えます
  4. 1ヶ月くらい経過を見て食欲が安定したら母乳をやめてみます
  5. 3日与えないと欲しがらなくなります

 

※参考文献
 「子どもの健やかな発育を願って いつどういう支援をすればいいのか」
 鏡 宣昭 講師 セミナーレジュメより引用

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