乳歯・永久歯

Q1 乳歯から永久歯に生えかわる時期を教えてください。
A1

日本人乳歯の標準萌出時期

乳歯列のイメージ図

男児 標準萌出期間
歯種 上顎 下顎
A 乳中切歯 7か月~11か月 5か月~9か月
B 乳側切歯 9か月~1歳2か月 9か月~1歳3か月
C 乳犬歯 1歳2か月~1歳8か月 1歳2か月~1歳9か月
D 第一乳臼歯 1歳1か月~1歳7か月 1歳1か月~1歳6か月
E 第二乳臼歯 2歳0か月~2歳11か月 1歳11か月~2歳7か月

 

女児 標準萌出期間
歯種 上顎 下顎
A 乳中切歯 7か月~11か月 6か月~9か月
B 乳側切歯 9か月~1歳1か月 9か月~1歳2か月
C 乳犬歯 1歳3か月~1歳9か月 1歳4か月~1歳9か月
D 第一乳臼歯 1歳1か月~1歳7か月 1歳1か月~1歳7か月
E 第二乳臼歯 2歳1か月~2歳10か月 1歳11か月~2歳7か月
 

日本人永久歯の標準萌出時期

永久歯列のイメージ図

男子 標準萌出期間
歯種 上顎 下顎
1 中切歯 6歳6か月~7歳10か月 5歳6か月~7歳0か月
2 側切歯 7歳6か月~9歳2か月 6歳3か月~8歳3か月
3 犬歯 9歳10か月~12歳1か月 9歳2か月~11歳3か月
4 第一小臼歯 9歳1か月~11歳7か月 9歳5か月~11歳6か月
5 第二小臼歯 10歳3か月~13歳2か月 10歳4か月~13歳0か月
6 第一大臼歯 5歳11か月~8歳7か月 5歳10か月~7歳6か月
7 第二大臼歯 12歳1か月~14歳5か月 11歳3か月~13歳10か月

 

女子 標準萌出期間
歯種 上顎 下顎
1 中切歯 6歳3か月~7歳7か月 5歳5か月~6歳7か月
2 側切歯 7歳2か月~8歳8か月 6歳3か月~7歳8か月
3 犬歯 9歳2か月~11歳4か月 8歳8か月~10歳5か月
4 第一小臼歯 8歳11か月~11歳0か月 9歳1か月~11歳1か月
5 第二小臼歯 10歳1か月~12歳11か月 10歳2か月~13歳1か月
6 第一大臼歯 5歳10か月~8歳4か月 5歳6か月~7歳0か月
7 第二大臼歯 11歳9か月~14歳3か月 11歳2か月~13歳10か月

 

※個人差があるため、これは目安です。

 

乳歯の発育と口の機能について

1.乳歯の萌出時期

生後6~8か月頃に生え始め、2歳半から3歳頃に生えそろいます。一般に5~6か月までの遅れはよく見られます。

最初の乳歯は、下の真ん中の2本から生えてきます。離れたり少しねじれたりして出てくることもありますが、あまり心配はいりません。この歯は乳中切歯と呼ばれ、少し遅れてその隣の乳側切歯や、相対する上の乳切歯が生えてきます。1歳半くらいまでには1本離れたところに奥歯の第一乳臼歯が、また、2歳までには乳側切歯と第一乳臼歯の間に乳犬歯が生え、最後に一番後ろの乳歯である第二乳臼歯が2歳半から3歳頃にかけて生えてきます。

 

2.乳歯の萌出と咀嚼の発達

離乳の開始時期として推奨されている生後5~6か月は、乳切歯が生え始める時期とほぼ一致しています。

離乳の時期には、口唇での食物の取り込み(捕食)、口を閉じての飲み込み(成熟嚥下)、舌での押しつぶし、歯ぐきでの噛みつぶしなど、咀嚼のための基本的な動きが獲得されますが、まだ歯を使った咀嚼は主体ではありません。そのまま飲み込めるペースト状の食物から、舌でつぶせる程度の硬さの食物、歯ぐきでつぶせる食物と、口の動きや乳歯の生え方に合わせて食物の硬さや形状などを調整しながら離乳を進めていきます。

乳切歯が上下そろったら、少し大きめの食物を前歯で咬断する練習を行い、第一乳臼歯が生えたら奥歯で噛みつぶせる食物を与えるなど、歯を使った咀嚼を覚えさせていきます。第一乳臼歯が噛み合う1歳半頃に離乳は完了しますが、この時期にはまだ硬い食物、繊維のある食物、弾力性のある食物などの処理は難しいです。第二乳臼歯が萌出して噛み合うと、すりつぶし(臼磨)が可能になります。

乳歯列が完成する2歳半から3歳頃には、食物に応じて噛む力や噛む回数を調節することが上手になり、咀嚼の動きもリズミカルになります。こうして、ほぼ成人に近い咀嚼運動がみられるようになり、周囲の人たちと同じ食事が食べられるようになります。この時期には、噛み応えのある食品を食事に取り入れ、よく噛む習慣を身に付けていくことが重要です。

 

3.歯・口の発育と発音(構音)

発音のための構音(調音)の発達は、初期は「マ」、「パ」などの口唇音から始まり、「タ」のように舌の先を前歯の裏側の歯頚部に押し付ける歯頚音、続いて舌と口蓋や上下の口唇が接触して発音する「ラ」、「サ」など非接触音が発達し、ほぼ5~6歳頃に完成します。

 

※参考書籍
 「月刊 小児歯科臨床2020年4月」 東京臨床出版株式会社
 「『生きる力』を育む学校での歯・口の健康づくり」 公益財団法人 日本学校保健会

Q2 乳歯のブラッシング方法は?
A2

歯磨きは、歯とお口の健康を維持する大事な生活習慣です。小さいときから歯ブラシに慣れさせる工夫をしましょう。そして必ず保護者が年齢に適した歯磨きをしてあげてください。

乳児期

下に白っぽいカスが溜まります。ぬるま湯で湿らせたガーゼでカスを拭き取ってあげます。

生後7~8か月

前歯が生えてきています。歯の汚れは乳児のときと同じようにぬぐいます。かみ合う面を念入りに。

1歳が過ぎた頃

歯ブラシを持たせてみます。慣れさせたらお母さんが磨いてあげます。

3歳~5歳

乳歯が全部生え揃います。そろそろ自分で磨かせてあげますが、遊びを取り入れて楽しさを感じるようにすると嫌がりません。お母さんの仕上磨きがまだまだメインです。

5歳~6歳

毎食後、1日3回の歯磨きを習慣にしてください。6歳ごろまでには、最初の永久歯(第一大臼歯)が生えてきます。この歯は歯並びやかみ合わせの基本になる歯です。食べカスなどが溜まりやすいので、仕上げ磨きも忘れないようにしましょう。小学校2年生(8歳ごろ)までは仕上磨きをしてあげて下さい。

Q3 小学校の時期は、乳歯から永久歯へ生えかわる時期ですが、どんなことに注意したらいいのですか?
A3

1.前歯の生えかわりの時期は、口唇を閉じて食べ物を噛む。

できない子どもには口唇のトレーニングを!

1)破裂音の練習

口をしっかり閉じ、口の中を陰圧にしながら、「ぱっ」と音を立てて口を開けましょう。これを繰り返すことにより、口の周りの筋肉が鍛えられ、口が閉じやすくなります。

 

2)口輪筋のトレーニング

※口輪筋がかなり弱い場合や短期間で筋力をアップさせる方法

(必要なもの・・・ペットボトル、5円玉程度の大きさのボタン、紐)

ボタンとペットボトルを紐で結び、水を適量入れます。初めは水なしでもよいですが、筋力がついたら水野量を増やしていきます。口唇でボタンでくわえ、ペットボトルを1分間ぶらさげましょう。

 

3)その他

紐の両端にボタンを結び、ボタンを引っ張り合う「ボタン相撲」や、風船をふくらませる、細長いストローで水を吸うことなども口の周りの筋肉を鍛えるのに有効です。

 

2.上下の歯をしっかり噛んで(舌を口蓋にしっかりつけて)食べ物を飲み込む。

上手にできない子どもには舌のトレーニングを!

・ガムを使用した舌の挙上訓練とタッピング(舌を口蓋に打ちつける動作)

1)ガムを噛んで軟らかくした後、舌の上で丸めて舌の前のほうに置く
2)舌でガムを口蓋に貼りつける
3)口蓋についているガムを舌で押し広げる
4)ガムを舌で口蓋に押し付けたまま唾液を飲み込み、ガムの広がりを見る
(ガムが前後に伸びていれば良好)

※補足
噛みしめのトレーニング
1)~4)の後に、「5)ガムを強く噛みしめる

 

3.前歯がきちんと生えかわったら、食べ物を噛みちぎっているか確認する。

パンを食べるとき、前歯で噛みちぎっているかをチェックします。前歯を使うことを教えましょう。前歯を使っていないと、歯に備わっている感覚受容器が廃用性萎縮を起こし、固いものを噛めなくなるだけでなく、脳への情報不足により食べ方が学習できません。

 

4.食事中、できるだけ水やお茶、牛乳を飲まないように指導する。

よく噛むことによって唾液の分泌が促され、食塊をスムーズに飲み込めるようになります。

 

5.片噛みになっていないか確認する。

小学4、5年生頃は、側方歯が生えかわるため、片噛みになりやすいので要注意です。

 

※参考書籍
 「歯と口から伝える食育」
 岡崎 好秀・武井 典子 編著  東山書房

Q4 乳歯列期から永久歯列にうまく移行できないことってありますか?あれば理由も教えて下さい。
A4

うまく移行できないこともあります。
正常な噛み合わせを妨げると考えられる歯性の要素には次のようなものがあります。

・先天欠如歯の存在

・過剰歯の存在

・萌出している歯の歯冠形態や萌出位置の異常、う蝕等の有無

・乳歯の歯根形成不全や彎曲

・歯胚を含む未萌出永久歯の位置、乳歯・永久歯の予想される萌出の方向、順序および時期の異常

・乳歯の歯根吸収の早発または遅延

・歯の骨性癒着(アンキローシス)

これらについて異常がないかどうか、またあるとすればその原因は何かについて、リスク評価をすることが重要です。
リスク評価を正しくすることで、永久歯列期の矯正歯科治療の負荷を軽減することもできます。

 

※参考書籍
 「Elements of Orthodontics 高田の歯科矯正の学び方-わかる理論・治す技術-」
 高田 健治 編著  株式会社メデジットコーポレーション

Q5 小2の娘が歯科検診の結果を持ち帰りました。永久歯にむし歯があるらしく大ショックです。これから大事な永久歯を守っていくにはどんなことに気をつけるとよいですか?
A5

永久歯が生えると、みがく場所も範囲もガラリと変わるので注意が必要です。この機会に歯科医院でブラッシング指導を受け、フッ素やシーラントで予防していきましょう。

※参考書籍 「nico 2013.10 クインテッセンス出版株式会社」

Q6 乳歯が虫歯になりました。治療のために神経を抜くとその後に生えてくる永久歯に影響がありますか?
A6

乳歯の神経と永久歯の神経は同一と考えられる方がおられますが、別ものです。
それぞれの神経は独立しています。

しかし、ばい菌が残っていて乳歯の根っこが膿んでいる状態ですと、永久歯が白濁色や褐色に着色して萌出することがあります。このような場合、乳歯の神経を抜くことになります。神経を抜くと、歯根の吸収が上手く行われず、永久歯の萌出位置がずれる場合もあります。

乳歯であっても虫歯にならないようにしっかりケアしましょう。
当医院ではフッ素洗口をオススメしています。

Q7 親子で定期的にメインテナンスを受けると子どものむし歯予防の効果が高いそうですね?なぜでしょう?
A7

親御さんのお口の中がきれいになってむし歯菌の親子感染が減るのも一因でしょうが、見逃せないのが、ご家族の予防意識の変化です。親御さんもいっしょに実践してくださることでお子さんにも「予防するのは当たり前」という意識が生まれ、定着しやすいのだと思います。

 

※参考書籍 「nico 2016.4 クインテッセンス出版株式会社」

Q8 子どもの写真を撮ってもらったら、上の真ん中の所に過剰歯があると言われました。どうしたらよいでしょうか?
A8

上顎正中部の過剰歯は埋伏していることが多く、上顎前歯の離開萌出障害周囲の歯の歯軸の傾斜や捻転などの原因となります。

永久歯の前歯が生えてくるため、このような障害の原因となる場合には、永久前歯根尖部の形成が完了する時期の7~8歳ぐらいを目途に抜歯を考慮したほうがよいでしょう。(歯根完成後では永久歯の矯正治療が必要になることが多いため)

上顎正中部の過剰埋伏歯はその80%が口蓋側に存在し、歯列内に存在するのは約15%唇側に埋伏するのはわずか5%程度です。埋伏歯の位置を正確に把握するためにCT撮影を実施したほうがよいでしょう。

また、次のような状況では、抜歯が必要となります。

  1. 永久歯の正常な形成や萌出の障害
  2. 永久歯の歯根吸収
  3. 正中離開
  4. 含歯性嚢胞形成
  5. 永久歯の矯正治療時の障害

 

※参考書籍
 「月刊 小児歯科臨床 2015.8」
 東京臨床出版株式会社

  「床矯正研究会 2016」
 徳永 順一郎 先生

 「口腔外科ハンドマニュアル’20 日本口腔外科学会編」 クインテッセンス出版株式会社

Q9 埋まっている乳歯(埋伏乳歯)について教えてください。
A9

1歯または数歯の埋伏の原因

1)埋伏歯の歯胚の位置異常、萌出方向の異常

2)埋伏歯の大きさと形態の異常

3)埋伏歯の濾胞性膿疱または歯牙腫

4)隣接歯の歯根膿疱

5)顎骨の腫瘍

6)顎骨との癒着、骨の肥厚、歯肉の線維性肥厚

7)骨折

8)全身的疾患

くる病、先天性梅毒、内分泌腺障害、他

9)遺伝

常染色体優性遺伝

埋伏歯の頻度

乳歯は永久歯に比べ著しく少なく、永久歯では上顎犬歯および第三大臼歯が最も多い。
乳歯は乳臼歯に多い。

埋伏乳歯の特徴

1)口腔内に萌出せず、歯槽骨内部に滞留している。

2)低位乳臼歯のように咬合機能を営んだものと異なり、未だ機能を営むに至っていない。

3)X線的に埋伏乳臼歯の歯冠の位置が不正である。またその原因は、発育過程中における歯胚の位置異常が大きい。

埋伏乳歯の組織学的な所見

1)歯冠のエナメル質の表面に原生セメント質および第2セメント質の添加

2)歯根膜腔は狭く、シャーピー線維の発達および配列が悪い

3)歯周組織の機能構造が認められない

4)埋伏歯と周囲の顎骨との間に骨性癒着を起こす

埋伏歯による障害

1)埋伏歯が歯根を圧迫し、萌出している歯の転位をきたす

2)周囲の歯の歯根を吸収する

3)埋伏歯によって周囲神経の圧迫により、三叉神経痛を惹き起こす

4)口腔と埋伏歯との間に連絡が生じると、う蝕や顎骨骨髄炎を惹き起こす

多数の埋伏歯の原因

原因は不明ですが、全身的疾患および遺伝的な影響にあるとされています。

全身的疾患では、くる病、クレチン病、小児性粘液水腫、ダウン症候群、鎖骨頭蓋異骨症、外胚葉性異形症などの疾患にみられることがあります。

 

※参考書籍
 「月刊 小児歯科臨床 2016.5」 全国小児歯科開業医会(JSPP)

Q10 子どもが前歯をぶつけてしまい、前歯が埋もれてしまいました。そのままにしてもよいのでしょうか?
A10

次のような報告があります。

「外傷により乳前歯が埋入した場合、再萌出が期待され、整復固定処置により再度歯周組織に重篤な損傷を与える危険性も懸念されることから、後続永久歯胚以外の方向に埋入した乳前歯を整復固定せずに経過観察した。

その結果、被験24歯はすべて受傷後1カ月以内に再萌出を開始し、完全埋入群も含めて、受傷後半年までには80%以上の症例で歯冠全体が萌出した。受傷歯自身の予後では、臨床的に無症状に経過したものが6歯であり、歯髄腔狭窄が7歯、慢性根尖性歯周炎が9歯、歯髄腔狭窄と慢性根尖性歯周炎が合併して2歯に認められた。これらは埋入後整復固定処置を行った乳前歯の予後よりも幾分良好な成績と考えられた。

※参考書籍
 「月刊 小児歯科臨床 2000.4」 東京臨床出版株式会社

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