治療内容・方法について
Q121 | 根っこの処置が終わり、土台の補強をすることになりました。前は型を採って作ったのですが、今回は直接口腔内で作りました。同じグラスファイバーを使った土台ですが、どういう違いがあるのでしょうか? |
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A121 | 支台築造における直接法と間接法の比較(*)という論文データがありますので、紹介します。 *小林 平:ファイバーポストを用いた直接レジン支台築造の有用性. 辻本恭久編著:日本歯科評論増刊/最新マテリアル・ツールを活用した臨床テクニック, 114-119, 東京, 2021. 直説法利点
欠点
間接法利点
欠点
※参考書籍 |
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Q122 | 全身疾患をもっているとインプラント治療に影響すると言われましたが、本当ですか? |
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A122 | 高齢者でのリスク一般に高齢になることで全身疾患を保有する頻度が高くなるため、これがリスクになります。そのため、①現在健康であること(種々の検査に問題となる異常がない)、②これからの平均余命、③インプラント治療が最善か(他の補綴治療とインプラント治療との比較が重要)の3点に関して、歯科医師として患者さんへのインフォームド・コンセントを行うことが重要です。
若年者でのリスク成長が停止すれば治療は可能です。成長停止時期は個人差があるので、慎重に適用を検討しなければなりません。
喫煙喫煙は歯周病を悪化させます。喫煙を継続すると歯周病が悪化するだけでなく、インプラント周囲炎やインプラント周囲骨の吸収を惹起する可能性が高くなります。喫煙経験年数と1日の喫煙量、タバコの種類を確認し、インプラント治療に先立って禁煙指導を行います。
循環器疾患高血圧高血圧そのものはインプラントの予後に対するリスクファクターではありません。
心疾患代表的な疾患としては虚血性心疾患、不整脈、心不全、心臓弁膜症、心筋症、先天性心疾患などがあります。 虚血性心疾患には心筋梗塞と狭心症があり、術後の後遺心臓障害の評価のために医科との対診は不可欠です。生体情報モニタ下での手術、あるいは麻酔医の立ち合いで静脈内鎮静法を併用します。虚血性心疾患そのものはインプラント治療の予後に対するリスクファクターではありません。
脳血管障害(脳卒中)抗血栓療法を受けている患者さんへの対応は次の4つがあります。
抗血栓療法そのものはインプラント治療の予後に対するリスクファクターではありません。
血液疾患貧血のうち、日常的には鉄欠乏性貧血が多いです。日常生活に支障がない貧血患者さんでも、その程度により術後さまざまな障害が発生する可能性があります。 たとえば、酸素の運搬機能低下により組織の酸素欠乏が生じ、その結果、創傷治癒不全、局所の免疫能の低下となり、術後感染、インプラント周囲炎のリスクが大きくなります。原因が明らかでも、Hb:10g/dL未満であればインプラント体埋入手術は延期します。
消化器疾患消化器疾患としては、胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胃がん、肝機能障害、膵臓疾患などがあげられます。胃炎、胃・十二指腸潰瘍の既往がある患者さんでは術後の投薬などに注意を要します。
肝機能障害肝機能障害の代表はウイルス性肝炎、肝硬変、肝がんなどですが、急性期、あるいは末期でなければインプラント手術に直接の影響はないことが多いです。しかし、院内感染は大きな脅威となるため十分な注意が必要です。肝硬変では出血傾向があり、術中・術後の出血が問題です。 また、肝機能障害は、創傷治癒の遅延を招くため、インプラント治療の成功を妨げる全身的リスクとしても問題となることがあります。
腎機能障害腎機能障害では易感染症や口腔感染症が発現することがあり、循環器系疾患との合併症に注意します。
呼吸器疾患気管支喘息
慢性閉塞性肺疾患(COPD)慢性気管支炎、肺気腫またはその両者の併発による閉塞性換気障害を主徴とします。患者さんの大部分は喫煙歴があり、喫煙は最も重要なリスクファクターです。インプラント治療に際しては、ほとんどのCOPD患者に呼吸困難が認められるため、長時間の手術や治療を行うことができません。短時間でも症状憎悪の誘因となるようなストレス(疼痛、咽頭部への水の流れ込み、切削片や器具の誤嚥など)は極力避けなければなりません。
糖尿病糖尿病のリスクとしては次のようなものがあります。
糖尿病はインプラント体埋入手術、および予後に対するリスクファクターです。
骨粗鬆症骨粗鬆症のリスクとしては次のようなものがあります。
インプラント治療では、インプラント体埋入手術により骨への侵襲が加わることが問題となりますが、上部構造装着後も、インプラントには天然歯のような上皮付着の機構がないため、常に生体内環境と外部環境が交通している状態であり、インプラントの治療期間、あるいはメインテナンス期間すべてにわたってARONJ発生のリスクがあると考えられます。したがって、骨吸収抑制薬やビスフォスフォネート系薬剤を投与されている患者に対するインプラント治療では、処方医師と密接な連携を取り、慎重な手術、厳重なメインテナンスの対応が必要とされ、さらに将来的なインプラントの経過不良や顎骨壊死の可能性について十分なインフォームド・コンセントがなされなければなりません。
自己免疫疾患潰瘍性大腸炎、関節リウマチ、シェーグレン症候群、天疱瘡、膠原病などの自己免疫疾患に罹患している患者さんには、ステロイド薬が長期間にわたって投与されている可能性が高いです。ステロイド薬が投与されている患者さんのリスクには、副腎不全、易感染性、骨代謝への影響、口腔乾燥などがあります。
骨代謝への影響ステロイド薬が骨形成・骨吸収に影響を及ぼします。そのため、ステロイド薬はオッセオインテグレーションの獲得・維持においても大きな問題となります。また、続発性骨粗鬆症のうち最も頻度の高いものは、ステロイドの長期投与により生じるステロイド性骨粗鬆症です。ステロイド性骨粗鬆症のガイドラインによれば、第一選択薬はビスフォスフォネート系薬剤であるため、ステロイド薬投与患者のインプラント治療は、オッセオインテグレーションの獲得・維持についても大きなリスクを背負っているばかりではなく、その治療薬によるARONJ発現のリスクも伴っていることになります。
口腔乾燥口腔乾燥をきたす自己免疫疾患では口腔内清掃が困難な場合もあり、オッセオインテグレーション維持のリスクとなりうるので注意が必要です。
精神・神経系疾患精神疾患神経症、統合失調症、人格障害、うつ病などの精神疾患により、感情面の長期の安定が得られていなければインプラント治療は避けましょう。 うつ病における自殺の危険性や統合失調症における幻聴、幻覚、被害妄想などがインプラント治療を契機に発現、あるいは悪化する可能性があります。
パーキンソン病パーキンソン病とは、手指や下顎、上股の振戦、動作や歩行困難といった運動障害を示す進行性の精神変性疾患です。手指の運動障害が生じるため、インプラント治療を実施した後に十分なメインテナンスが期待できず、施術に対する身体保持も困難となることが予想されます。そのため、パーキンソン病を発症した患者さんへの新たなインプラント治療は避けるほうが望ましいです。また、インプラント治療を施行した患者がパーキンソン病を発症した場合には、早期の段階でインプラント上部構造を口腔管理が容易な形態へ改変することが望ましいです。
※参考書籍 |
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Q123 | 部分入れ歯の装着時、どんなことを診ていますか? |
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A123 | 部分入れ歯装着時に基準としている工程を紹介します。 1.装着前の点検・修正
2.口腔内へ
3.維持装置の適合(部分入れ歯)
4.床内面と顎堤の適合
5.床外形
6.研磨面形態・人工歯排列
7.咬合関係
8.維持装置の微調整(部分入れ歯)
9.患者指導
※参考書籍 |
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Q124 | 部分床義歯でも保険のレジン床と、自費の金属床では適合性がだいぶ違うんですね。同じようなクラスプが付いているのに、材料が違うと、なぜ適合性まで違うのですか? |
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A124 |
製作工程がまったく変わるからです。金属床は、クラスプから床までを同じ金属で一体成型ができるので、部品を別々に作ってあとで組み立てるよりもがぜん精度が高くなるのです。 ※参考書籍 「nico 2015.5 クインテッセンス出版株式会社」 |
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Q125 | ホワイトニングは1日何時間装着していたらいいの? |
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A125 | 最低2時間装着して頂きます。もししみる場合は1日置きや1時間ごとに装着することをおススメします。 |
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Q126 | 歯周病で抜歯しました。大ショックです。すぐにブリッジにしたいのですが、隣の歯も少しグラつくので、歯周病の治療が終わってから入れるそうです。すぐにブリッジが入らないものでしょうか? |
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A126 | 快適に使い続けられるブリッジにするには噛む力を支える支台歯がしっかりしていることが最低限の条件です。ブリッジをより長く快適に使うには支える歯の健康が最重要なのです。グラつく歯を支台歯にすると噛む力を支えられず、かえってこの支台歯まで傷めてしまいます。治療後に入れることをおすすめします。 ※参考書籍 「nico 2009.9 クインテッセンス出版株式会社」 |
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Q127 | 真ん中の前歯を2本失いました。そうしたら、隣の歯だけでなく犬歯まで削って土台4本分、計6本を連結する必要があるそうです。ずいぶん長いブリッジになってしまいます。いったいなぜこうなってしまうのでしょうか? |
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A127 | 歯の強さは、歯の種類ごとにさまざま。失った歯や支台歯になる歯の強度の指標をもとに、適正な耐久性のあるブリッジが設計されています。 ※参考書籍 「nico 2009.9 クインテッセンス出版株式会社」 |
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Q128 | 審美的にはどうなりますか? |
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A128 | 今のお口の状態や全身状態に左右されます。それぞれの患者さんにより状況が異なりますので先生によくお聞きになってください。 |
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Q129 | 保険の前歯ブリッジって白くできますよね?裏側も白いのですか? |
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A129 |
保険の治療では表側が白いレジン(歯科用プラスチック)で裏側には金属が見えます。耐久性を持たせるために、金属のフレームで裏打ちしてあるからです。裏も全部白い審美治療のブリッジはオールセラミックスでしたら可能です。違いをご紹介します。 1.レジン前装冠ブリッジ(保険治療)金属(金銀パラジウム合金)のフレームに白い硬質レジン(歯科用プラスチック)が盛ってあり、金属を使うことで十分な強度を確保しています。見える部分は白く、歯の裏側には金属のフレームが見えます。金属の影響で、時間がたつと支台歯とかぶせ物の継ぎ目あたりが黒くなってしまうことがあります。レジンは水分を吸うため、長く使っているうちに黄ばんできますが、近年のいちじるしい品質向上により、変色しにくくだいぶ改良されてきました。 2.メタルボンドブリッジ(自費治療)金属のフレームに白いセラミック(陶材)を貼ってあります。自然なツヤがあり、着色や黄ばみが起こりにくい素材です。金属のフレームがある分、十分な強度があります。ただし金属のフレームを使っているため、セラミック本来の光の透過性は残念ながらありません。フレームに金を使うと歯の色がぐっと明るくなり、銀色の金属を使うと暗めに見えます。また、裏から見ると少しだけ金属のフレームが見えますが、それほどは目立ちません。 3.オールセラミックスブリッジ(自費治療)すべてが白いセラミック(陶材)でできています。自然なツヤがあり光を通すので、口もとに明るい印象を与え、うつくしい仕上がりが期待できます。汚れにくく、着色や黄ばみが起こりにくい反面、硬くて割れやすい面があるので、噛み合う歯を傷めないよう、また過剰な力がかからないよう十分配慮して治療を行います。メタルフリーなので金属アレルギーの心配がありません。 ※参考書籍 「nico 2009.9 クインテッセンス出版株式会社」 |
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Q130 | ブリッジがむし歯になって再治療中です。作りものの歯がむし歯になるなんて、思ってもみなかったのですが・・・。 |
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A130 | 支台歯がすでに神経を取ってある歯の場合、むし歯になっても痛みを感じません。そのためむし歯の発見が遅れがちです。ブリッジの治療後も定期的に歯科医院のメインテナンスを受け、むし歯菌を減らしてお口の環境を良好に保っていきましょう。 ※参考書籍 「nico 2009.9 クインテッセンス出版株式会社」 |
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