歯内療法

Q21 痛くなくなったらもう通わなくていい?
A21

治療が順調に進むと、治療が終了する前に痛みや違和感が消え、治療の途中でもかなり楽になるはずです。
でも残念ながら、治療はまだ終わりではありません。歯のなかの細菌は減ったとはいえ、まだ生き残っています。そのまま放置すると、治療前の状態に戻ってしまいます。
もっと困るのは、仮の蓋のまま治療を中断すると、近い将来仮の蓋が破れ、あらたな細菌が歯のなかに入り込んでしまうことです。そうなると、治療が台無しどころか悪化すらしてしまいます。痛くなくなっても、かならず最後まで通いましょう!

※参考書籍 「nico 2009.4 クインテッセンス出版株式会社」

Q22 だいぶ前にシミて痛いのを我慢していたら痛みが消えたので「治った!」と思っていたんです。ところが先日その歯がすごく痛くなって今度神経を取らなきゃいけません。痛みがなくても、むし歯が悪くなることってあるんですか?
A22

むし歯の炎症で神経が死ぬと、歯の内部で痛みのセンサーが働かなくなりいったん痛みが消えるんです。油断していると、さらに炎症が拡大してしまいます。異常を感じたら放っておかず歯医者さんを受診しましょう!

※参考書籍 「nico 2017.6 クインテッセンス出版株式会社」

Q23 歯肉溝からの排膿は歯周病が原因なのでしょうか?
A23

歯周病だけでなく、根管由来の感染が原因の排膿もあります。

初発病変はエンド由来で、歯肉溝から排膿しているような例を、まず念頭において診断をするべきです。

 

エンド-ペリオ病変の分類方法についてのナラティブレビュー
Al-Fouzan KS. A new classification of endodontic-periodontal lesions. Int J Dent 2014; 2014: 919173.

 

※参考書籍
 「抜歯・小手術・顎関節症・粘膜疾患の迷信と真実」
 湯浅秀道、安藤彰啓 編著  クインテッセンス出版株式会社

Q24 どういう状態のことを「炎症がある」というのでしょうか?
A24

①発赤(赤くなる)、②発熱(熱が出る)、③疼痛(痛い)、④腫脹(腫れる)が知られており、これに⑤機能障害を加えて炎症の5徴候といいます。

 

※参考書籍
 「MUST OF DIFFICULT CASE」
 北村和夫 編著 株式会社 デンタルダイヤモンド社

Q25 よく急性炎症とか慢性炎症とかいいますが、どのように違うのですか?
A25

炎症は、その経過によって急性炎症慢性炎症に分けられます。

経過がすみやかで、早期に終息する炎症を急性炎症といいます。

一方、組織障害が長期にわたる場合や、原因となる病原がなかなか処理されない場合には炎症が長引き、4週間以上続く炎症を慢性炎症といいます。

 

※参考書籍
 「MUST OF DIFFICULT CASE」
 北村和夫 編著 株式会社 デンタルダイヤモンド社

Q26 副鼻腔炎と思い、耳鼻いんこう科に行きました。そうすると歯科医院に行くことを勧められました。どういうことでしょう?
A26

歯と副鼻腔炎、上顎洞炎の関係について、次のように注意喚起している論文があります。

慢性細菌性上顎洞炎の244症例を有する198人の患者の研究で、症例の40.6%に歯の病因を発見した。

Malen I, Lindahl L, Andreasson L, Rundcranz H: Chronic maxillary sinusitis. Definition, diagnosis and relation to dental infections and nasal polyposis. Acta Otolaryngol, 101: 320-327, 1986.

 

歯科病理学の証拠について上顎洞炎と一致する所見を有する82症例のCBCTをレビューし、これらのうち50%以上が歯に原因があると結論づけた。

Maillet M, Bowles WR, McClanahan, SL: Cone-Beam computed tomography evaluation of maxillary sinusitis. J Endod, 37: 753-757, 2011.

 

副鼻腔疾患が重度になるほど歯の病理に関連する可能性が高くなり、重度の影響を受けた上顎洞の最大86%の感染が歯に原因を有することを発見した。

Bomelli SR, Branstetter BF, Ferguson, BF: Frequency of a dental source for acute maxillary sinusitis. Laryngoscope, 119(3): 580-584, 2009.

 

片側副鼻腔炎の症例の72%が歯原性に原因があることを発見した。

Matsumoto Y, Ikeda T, Yokoi H, et al: Association between odontogenic infections and unilateral sinus opacification. Auris Nasus Larynx, 42: 288-293, 2015.

 

※参考書籍
 「MUST OF DIFFICULT CASE」
 北村和夫 編著 株式会社 デンタルダイヤモンド社

Q27 歯に原因はないのに歯に痛みが出ることってあるの?
A27

そのような痛みのことを「非歯原性疼痛」といいます。

痛みの特徴としては、下記が挙げられます。

1.(原因が見当たらないのに)自発痛が多数歯に及ぶ

2.痛みを説明できる歯科的原因が、局所に見当たらない

3.刺激的、灼熱的、非拍動性の歯痛(炎症性の痛みと異なる)

4.一定不変で間断のない歯痛(痛みに波がない)

5.継続的で再発性の歯痛

6.(痛みを感じている部位に)麻酔をしても痛みに変化がない(診断的局所麻酔)

7.理にかなった歯科治療を行っても、痛みに変化がない

 

口腔顔面痛の最新ガイドライン 改定第4版. クインテッセンス出版, 東京, 2009.

 

いわゆる炎症性の痛みとは異なる状態が存在する場合、非歯原性の痛みである可能性があります。

非歯原性疼痛は様々な要因によって引き起こされ、次のようなものがあります。

1.三叉神経痛

たとえば歯のブラッシングや食事あるいは顔を触った際のような、無害な刺激な後に引き起こされます。その痛みは突然発症し、鋭く撃つような電撃的な痛みで数秒で終わります。脳内の動脈や静脈による三叉神経の圧迫が原因ではないかと考えられています。

2.前三叉神経痛

顔面や歯にぼんやりした深い鈍痛を持続的だったり間欠的に感じる痛みのことです。三叉神経痛に移行することがあるため、“前三叉神経痛”と呼ばれています。

3.非定型歯痛(幻歯痛)

痛みは歯に入っている末梢神経ではじまりますが、中枢性の神経系の一部に変化をもたらし、歯痛を感じるように進行してしまいます。

4.慢性(複合性)局所疼痛症候群

慢性局所疼痛症候群(CRPS)は、末梢神経のダメージによって発症し、神経系の末梢および中枢部分を変化させ、非定型歯痛にみられるものと似ています。非定型歯痛との違いは、交感神経系が関わっていることです。交感神経系は神経系の一部であり、いろいろな働きがありますが、その部位の血管が狭くなっているのが原因です。痛みは、「焼けるような」と表現され、軽い接触や他の刺激が引き金となります。CRPSは腕や脚に頻繁に発症しますが、顔面にも起こることがあります。

5.神経血管痛(頭痛の関連痛)

偏頭痛、群発性頭痛、連続性片頭痛は脳の神経および血管の変化に由来するタイプの頭痛です。あるケースでは、三叉神経からの関連痛により、これらの頭痛が歯のなかに感じ歯痛となることもあります。痛みは持続的、激痛、拍動性、また緩和される時期もあります。

6.心臓由来の歯痛

狭心症や急性心筋梗塞といった心疾患では、関連痛が肩や腕または顎にさえ現れることがあります。また関連痛は歯にも表れることがあります。胸の痛みと関連していることもあります。歯痛が心臓由来である場合には、運動によって疼痛は増加し、投薬(たとえばニトログリセリン錠とか)により痛みは減少します。

7.上顎洞/鼻由来の歯痛

上顎洞粘膜や副鼻粘膜の問題が、上顎の歯に関連痛を引き起こすことがあります。上顎の数本の歯に鈍く持続性や拍動性の痛みを感じます。また目の下の部分に圧を伴うことがあり、頭を下に下げたり、咳や鼻をすすることで上顎洞に圧が加わると痛みが増してきます。冷水反応や咬合、打診反応のような歯の検査で、上顎洞由来の痛みは強くなってきます。

8.頸部における新生物あるいは他の病変

腫瘍は歯の神経の近くの部位にも現れることもあり、それにより歯が緩く感じたり、動いたり感じる原因になります。

9.唾液腺機能不全

唾液腺からの関連痛で歯の痛みを感じることがあります。また歯および周囲組織の健康を損ねることによって、唾液の欠如が起き、歯痛を引き起こすこともあります。

10.心理的な障害

心理学的障害は歯痛の原因ではなく、増幅因子と考えられています。

※参考書籍
 「痛みの特徴から主訴を解決する やさしい診査・診断学」
 宮下 裕志 著 クインテッセンス出版株式会社

Q28 根尖切除術ってなんですか?
A28

さまざまな症例のなかには、歯の上のほうからファイルをさし込んで掃除をするだけではうまく治らないものもあります。そうした難症例の歯を抜歯から救うために用いられるのが根尖切除術です。
これは外科的な歯内療法で、歯ぐきを切開し、歯槽骨歯根に向かって削って穴を開け、むし歯になった歯根の先などを切り取って細菌を取り去ります。根の先の切除後は、根の先のほうから根管を詰めて、歯ぐきを閉じます。炎症がなくなると、失われた歯槽骨は徐々に回復し、もと通りになっていきます。

※参考書籍 「nico 2009.4 クインテッセンス出版株式会社」

Q29 歯が原因で歯性上顎洞炎と言われましたが本当ですか?
A29

上顎洞炎の10~12%が歯性上顎洞炎であると言われてきましたが、コーンビームCT(CBCT)による診断が可能となった現在、その発生頻度は以下の報告のように高くなってきています。

・慢性上顎洞炎の感染原因は40%以上が歯に起因する(Patel)

・上顎洞炎を有する患者の上顎小、大臼歯部をCBCTにより診査した結果、50%以上に根尖病変が認められた(Maillet)

・上顎洞炎と診断された52人の患者のうち、55.7%は根尖が上顎洞内に突出しており、それらの79.3%は上顎洞粘膜が2mm以上肥厚していた(Yildirim)

歯性上顎洞炎の原因を報告した論文は少なく、インプラントが原因の歯性上顎洞炎が37.0%、抜歯によるものが29.6%、根尖病変に起因するものが11.1%であった(Lee)という報告があります。

副鼻腔の炎症は、鼻閉、鼻漏、後鼻漏といった鼻症状に加え頭痛、頬部痛、顔面圧迫痛を伴うもので、患者さんのQOLに大きくかかわる疾患です。

歯性上顎洞炎の経過には急性と慢性がありますが、急性期には片側性の頬部痛や鼻閉を伴うことが多く、鼻症状の前に歯痛をきたすこともあり、歯髄炎と誤って抜髄することのないよう注意が必要です。

※参考書籍
 「歯性上顎洞炎に対する歯内療法的対応」
 井澤 常泰, 日歯内療誌 35(3):117~124, 2014

Q30 歯が痛いのですが原因がわからないといわれ、歯科医院にいっても治りません。どういうことでしょうか?
A30

歯の痛みには、歯原性歯痛と非歯原性歯痛があります。

歯原性歯痛

歯や歯周組織に生じた器質障害や炎症により、当該部位あるいはその関連部位に自覚される歯痛のこと

非歯原性歯痛

歯や歯周組織以外に生じた痛みを、関連痛の一つとして歯や歯周組織に自覚される歯痛のこと

 

注意してほしいことは、非歯原性歯痛は主な原因が歯にないということであり、歯に問題がないということではないということです。

例えば、顔面痛で経過が長い場合は、しばしば知覚神経に可塑化を引き起こし、三叉神経痛様や帯状疱疹後神経痛様など、さまざまな痛みに姿を変えます。そこで、歯に何らかの問題があると、その歯を標的に顔面痛が非歯原性歯痛として現れ、歯痛化すると考えられています。

よく診査をしてみないとはっきりとしたことは言えませんが、もしかしたら非歯原性歯痛の可能性も考えられます。

※参考書籍
 「エンド難症例 メカニズムと臨床対応」
 恵比須 繫之 編  医歯薬出版株式会社

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