Question
ナイトガードはどういうときに必要なんですか?
Answer
ナイトガードの咬耗による睡眠時ブラキシズムの強さと補綴装置脱落の関係を調べた研究1)では、補綴装置が脱落した患者さんは睡眠時ブラキシズムが強いほど多く、合着後早期に脱落しており、15年後の脱落率は睡眠時ブラキシズムの程度が弱い群、中程度の群、強い群の順に9%、18%、24%であったことを報告しています。
したがって、術前に睡眠時ブラキシズムの有無やその程度を精査し、重度の睡眠時ブラキシズム患者である場合は、ナイトガードを使用して積極的に補綴装置や支台歯を保護することが望ましいです。
特に多数歯の欠損を伴うブリッジの症例や、セラミック等の前装材料を咬合面に使用した症例には配慮が必要です。また、可撤性義歯の症例で残存歯が少なく義歯非装着時の咬合支持が乏しい症例では、咬合性外傷を生じる危険性が高いため、ナイトガードあるいは夜間義歯の使用が勧められます2)。
睡眠時ブラキシズムがインプラントの機械的トラブルのリスクファクターとされています3)。
例えば、オッセオインテグレーション(インプラント体と骨の結合)が獲得される前に睡眠時ブラキシズムの力が特定のインプラント体に集中すると、脱落のリスクが増加します。また、オッセオインテグレーションが獲得された後であっても、睡眠時ブラキシズムによると考えられる上部構造の破損やスクリューの緩み等の問題が頻繁に報告されています4)。
その対処法も、やはりナイトガードの使用によって過大な咬合力から歯列を守ることが中心となっています。
1)友永章雄 他:Sleep Bruxismが修復物脱落に及ぼす影響. 補綴誌, 49 (2):221-230, 2005.
2)馬場一美, 加藤隆史:完全理解!睡眠時ブラキシズム-科学的根拠に基づき、補綴臨床において何をすべきか?第2部 補綴臨床編 睡眠時ブラキシズムから補綴装置を守る. The Quintesence, 30(2): 306-326, 2011.
3)田邉憲昌:インプラントの咬合付与について:日中のブラキシズムがインプラント上部構造に与える影響. 日口腔インプラント誌, 29(2): 79-85, 2016.
4)馬場一美:インプラントの咬合付与について:睡眠時ブラキシズム患者におけるインプラントの咬合管理. 日口腔インプラント誌, 29(2):71-78, 2016.
※参考書籍
「徹底解説!ナイトガード」
鈴木善貴、松香芳三、大倉一夫、安陪 晋、鴨居浩平 著
医師薬出版株式会社