Question

薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)に罹患していると言われました。どんな治療法がありますか?

Answer

保存療法と外科療法

治療法は大きく分けて、保存療法外科療法の2つがあります。

保存療法とは、抗菌薬により病変の拡大を防ぎながら、骨吸収抑制薬を休薬することにより骨のリモデリングの回復を待ち、腐骨分離がみられたら腐骨を除去する治療です。壊死骨部には血行がなく抗菌薬は移行しないため、抗菌薬投与のみで治癒することは稀です。

外科療法とは、外科手術を伴う治療です。

MRONJの治療法としては保存療法より外科療法のほうがすぐれていること、外科療法の術式としては壊死骨のみの切除よりも周囲骨を含めた切除のほうが治癒率が高いことが報告されています1)

保存療法は外科療法に比べて治癒率が低いだけではなく、腐骨分離まではかなりの長期間を要することから、長期間にわたり患者さんのQOLが低下すること、長期間の骨吸収抑制薬休薬による原疾患への悪影響が懸念されること、さらには保存療法中に病変の拡大を認めることがしばしばあることなど、さまざまな問題があり、外科療法を第一選択治療とするのが適切です。

外科療法を行う場合、休薬は治癒率には影響しないことが明らかになりました2)。保存療法の際の休薬には一定の効果はありますが、保存療法は一般に数カ月~数年を要することが多く、長期間の休薬が原疾患に与える悪影響を考慮すると、MRONJ治療中の骨吸収抑制薬の休薬は行わないほうがよいと考えられます。

ステージごとの治療法

ステージ1

保存的治療(抗菌性洗口液、洗浄、局所的抗菌薬の注入など)または外科的治療(壊死骨+周囲骨切除など)

ステージ2

保存的治療と外科的治療(壊死骨+周囲骨切除など)のいずれも適応されるが、外科的治療のほうが治癒率は高く、全身状態が許せば外科低治療を優先する

患者の状態や希望等により外科的治療が選択されない場合は、保存的治療(抗菌性洗口液、洗浄、抗菌薬全身投与など)を行う

ステージ3

外科的治療(壊死骨+周囲骨切除、区域切除など)

患者の状態や希望等により外科的治療が選択されない場合は、保存的治療を行う

1)Hayashida S, Soutome S, Yanamoto S, Fujita S, Hasegawa T, Komori T, Kojima Y, Miyamoto H, Shibuya Y, Ueda N, Kirita T, Nakahara H, Shinohara M, Umeda M. Evaluation of the treatment strategies for medication-related osteonecrosis of the jaws (MRONJ) and the factors affecting treatment outcome: A multicenter retrospective study with propensity score matching analysis. J Bone Miner Res 2017: 32(10): 2022-2029.

2)Hayashida S, Yanamoto S, Fujita S, Hasegawa T, Komori T, Kojima Y, Miyamoto H, Shibuya Y, Ueda N, Kirita T, Nakahara H, Shinohara M, Kondo E, Kurita H, Umeda M. Drug holiday clinical relevance verification for antiresorptive agents in medication-related osteonecrosis cases of the jaw. J Bone Miner Metab 2019; (in press).

※参考書籍
 「周術期等口腔機能管理の実際がよくわかる本」
 編著 梅田正博/五月女さき子  クインテッセンス出版株式会社

 「薬剤関連顎骨壊死の病態と管理:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2023」
 顎骨壊死検討委員会

お探しの情報は何ですか?

関連記事

このページを見た人は以下のページも見ています