Question

噛むことが脳に影響するって本当?

Answer

2012年の9月、アメリカの神経科学専門誌『Neuro Molecular Medicine』に掲載された岡山大学・森田グループの江國先生のラットを用いた研究論文1)があります。咬合の不調和は、アルツハイマー病の原因となるアミロイドβを脳内に正常値の3倍にまで大量に増加させ、更に咬合を改善することにより脳内のアミロイドβを正常値まで減少させることを動物実験で明らかにした研究です。これは咬合の改善が、40歳ごろからでも発症するアルツハイマー病の有効な予防と治療法になる可能性を示唆しており、咬合治療の意義と歯科の重要性を示す画期的なものだと考えられます。

世界一の長寿国となったわが国は、更に超高齢化が進み、2014年現在既に約4人に1人が65歳以上の高齢者で、激増する認知症への対応が急務の重大な問題になっています。その認知症患者のなんと67.4%がアルツハイマー型認知症であり、その割合は近年急速に増え続けています。

以前から、高齢者の義歯の咬合をきちんと治したり、新義歯を装着すると、「急にすごく頭がはっきりして、認知症が進行しなくなったようだ」とご家族や介護にあたっている方がびっくりして知らせてくれることは、多くの歯科医師がしばしば経験していることです。この江國論文は、歯科だけができる咬合改善治療とホームドクターとしての咬合管理の重要性、そして歯科が果たす役割の大きさを明示しています。

また、近年ファンクショナルMRIによる脳機能の研究が広く行われています。下の図は九州歯科大学の鱒見グループによる画像です。スプリントを用いた咬合治療前後の大脳皮質前頭前野の活動を示しており、咬合の改善が脳機能の活性化に有効なことをこの結果が明示しています。この大脳皮質前頭前野のワーキングメモリーは、記憶、計画、意欲にかかわるので、この研究結果も高齢者に限らずいずれの年齢層においても、咬合治療と日ごろの咬合管理がいかに大切かを示しています。

このように、咬合が脳へ顕著な影響を及ぼしていることが各方面の研究により明確に示されるようになったことで、歯科の役割の重大さと歯科医療人としてのやりがいの大きさを強く感じます。

咬合と脳の関係

スプリントを用いた咬合治療前(左)と比較して、治療後(右)には、大脳皮質前頭前野の著明な活性化が認められます。2)

※参考書籍
 「小出馨の臨床が楽しくなる咬合治療」 小出馨 監修 デンタルダイヤモンド社

1)Ekuni D, Tomofuji T, Irie K, Azuma T, Endo Y, Kasuyama K, Morita M : Occlusal disharmony increases amyloid-β in the rat hippocampus. Neuromolecular Med, 13 : 197-203, 2011.

 2)槙原絵理、鱒見進一、田中達朗、森本泰宏、吉野賢一、有田正博、八木まゆみ:スプリント装着の有無がクレンチング時の脳活動に及ぼす影響. 日顎誌, 20(1):6-10, 2008.

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