Question

歯科金属アレルギーについて教えてください。

Answer

●歯科金属アレルギーとは?

歯科金属アレルギーによる症状は、口腔内の金属が接触している部位に現れるとは限りません。
むしろ、口腔領域から離れた遠隔の皮膚に現れることが多いのです。よって、まず患者さんは歯科ではなく、その症状に対する医院を受診することになります。アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2012では、専門医に紹介するタイミングとして、「ガイドラインにしたがって1か月程度治療しても皮疹の改善が得られない場合」と記載されています。そのことを参考にし、医師による適切な治療を1ヶ月以上受けても、症状が改善しない場合には、より専門的な対応が必要であり、その1つとして、歯科金属アレルギーを疑うことができるのです。

●歯科金属アレルギーにかかっている人の割合

年齢別では、男女ともに20~29歳がもっとも多く、次に30~39歳の順となっています。これらを合わせると全体の66.3%(男性70.0%、女性64.9%)です。
年齢分布は4~80歳で、平均年齢は33歳(男性31歳、女性34歳)となっています。

性別は全体で、女性が男性の2.6倍以上となっています。各年齢層すべてにおいても男性より女性のほうが多く、とくに50~59歳では女性が男性の4倍以上で最大の差があるという結果が出ています。

●歯科金属アレルギーによる疾患

疾患数は、アトピー性皮膚炎が67.5%と圧倒的に多く、ついで掌蹠膿疱症9.4%湿疹8.5%の順です。
一方、口腔内違和感・口内炎および口腔扁平苔癬を合わせた口腔領域の症状をみてみると、全体では全疾患中2.1%(男性0.4%、女性2.1%)ときわめて少ないことがわかっています。
つまり、歯科金属アレルギーは、口腔内の金属が原因にあるにもかかわらず、その症状は口腔内にほとんど発症せず、口腔内から遠隔の皮膚に発症することが極めて多いということです。他にも、乾癬、にきび、脱毛症などもあります。

●お口の中の金属はなぜ腐食するの?

お口の中は金属を非常に腐食させやすい環境となっており、様々な原因で腐食します。

■プラークや電解質溶液(唾液)などと、つねに接触する
■有機酸などの金属を腐食する物質が存在する
■飲食物の摂取によってpHも温度も変化する
■金属修復物は隣接する歯間部で隙間腐食を起こす
■異種金属の接触によるガルバニー腐食が起こる
■咬合力による応力腐食が起こる
■歯ブラシなどによる擦過腐食が起こる

 ●金属アレルギーを起こしている可能性のある金属を取り除いたのに、なかなか症状が改善しないのはなぜ?

症例の調査・研究からわかったことをまとめておきます。

1. 金属アレルギーの場合、金属が体内に侵入するルートは、歯科金属だけからはなく、いろいろなルートがあった。

2. アレルギー患者は、金属以外のさまざまなものに反応した。

3. 長期に使用していたステロイドを中止すると、症状が急激に悪化することがあった。

※また歯科金属が原因であったとしても、取り除いた後1年以上症状の改善が見られないこともあります。

(別注1)

・歯科金属以外の金属による悪化にも注意を払いましょう!

全身性接触皮膚炎では、歯科金属だけでなく、金属を多く含む食品から経消化管的に吸収される金属についても注意する必要があります。たとえば、ピーナッツなどの種実類や、大豆やお茶には、ニッケルが多く含まれています。しかも、実際に私たちは加工品の形で摂取するため、知らず知らずのうちにニッケルを吸収している可能性すらあります。また、缶詰製品や金属製調理器具からも金属を吸収することもあります。もちろん、水道水中にも金属は含まれており、長時間、水道を使用していない朝一番の水道水には金属濃度が高いこともわかっています。その場合、流し始めてから1分間以上はその水道水を使用しないなどの対応策も有効です。授乳中の母親がクロムを多く含むチョコレートとココアを毎日多量に摂取していたため、その母乳中にクロムが含まれてしまい、母乳を飲んだ乳児の足の裏に汗疱状湿疹が発症したという報告もあります。

このように、日常生活のなかで、金属を吸収する機会が多いことも知っておきましょう。

(別注2)

・水銀について

歯科金属アレルギーの原因金属に関する科学的にエビデンスレベルの高い根拠は、あまり提示されていません。唯一エビデンスとよべる根拠が示されているのは水銀です。歯科用アマルガムの使用によって周辺粘膜に発症する口腔扁平苔癬の原因が水銀である可能性は高いとされています。

(別注3)

・金属アレルギー発症のメカニズム

にきびや湿疹の原因としてニッケルを多く含むチョコレートなどの食品がアレルギーを引き起こすことはよく知られています。また、現在でも掌蹠膿疱症の治療の第一選択は扁桃腺摘出術であることからもわかるように、体の中の慢性炎症の存在がこれら疾患の原因になっていることもあります。すなわち、歯科金属を原因とするアレルギー疾患があったとしても、それが多因子によって引き起こされている疾患である可能性を考えなければならないということになるでしょう。

金属アレルギーの発症については、上皮を通り抜けた金属イオンが何らかのタンパク質と結合して細胞表面上にくっつけることによって(抗原提示)、アレルギー反応をおこしうる状態(感作)になるとされています。しかし、どのように引き起こされるのかの過程についてはほとんど解明されていません。

つまり、体内に存在する金属、食品として摂取する金属、接触する金属など、あらゆる可能性を否定せず、かつ感染や他疾患の存在にも配慮する必要があるということです。もちろん、金属アレルギーが多因子による疾患であっても、金属の除去だけで症状が改善されることもあるということも押さえておきましょう。

※参考書籍
 「見分けて治そう!歯科金属・材料・アレルギー」
 編著 高永和、高理恵子 クインテッセンス出版株式会社

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