治療内容・方法について
Q281 | 矯正治療の後、歯がグラグラしているんですが、大丈夫でしょうか? |
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A281 | 歯の移動は歯周組織の変化の結果です。矯正力が消え咬合力に対し自然に反応できるようになると、3~4カ月後に歯周組織のリモデリングが完了し、歯の動揺はなくなります。ただし、歯肉線維は反応が遅いため、1年たっても歯の位置の不安定化の一因となります。 ※参考書籍 |
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Q282 | 年を取ると下顎の前歯がでこぼこしてきたことに気づきました。なぜですか? |
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A282 | 矯正治療を受けていなくても加齢とともに20年で1.8mm、あるいは40年で1mmとわずかですが下顎の叢生(前歯の歯列が重なり合い、乱れている状態。でこぼこした歯並びの状態。)が増加するものと考えられます。 叢生を起こす因子は、筋圧や舌圧、咬合圧などの生理的なものであると考えられます。 ※参考書籍 |
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Q283 | 寝たきりの父がインプラントを入れており、痛みを訴えています。どうしたらいいでしょうか? |
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A283 | 原因療法としては、インプラントを除去するということになるでしょう。しかしながら、外科処置になりますので、多大な負担がかかります。患者さんができる方法は、急性炎症の緩和、病状の進行を阻止する対症療法となります。以下を参考にしてください。 1.ブラッシングの強化家族や介護者への口腔内(インプラントなど)の状況説明と口腔衛生方法の指導を行い、口腔内の清掃を強化します。 萩原芳幸, 森野智子, 関みつ子, ほか. 介護老人福祉施設における口腔ケアの実態:インプラント治療が施されている入居者への対応および口腔ケアの問題点の抽出. 老年歯医2012; 27; 104-113. 2.機械的クリーニング(CIST:A)インプラント周囲のプラークや食物残渣、歯石を除去します。 3.殺菌療法(CIST:B)抗菌薬を用いてインプラント周囲の局所洗浄を行います。 4.抗菌薬療法(CIST:C)抗菌薬の全身投与や徐放性抗菌薬の局所投与を行います。 5.インプラント周囲炎の深部波及が緩解しない場合外科処置、インプラントの撤去・スリーピング、インプラント補綴装置の改造(口腔衛生管理を行いやすい補綴装置への移行や改造)など訪問現場での対応は不可能となり、診療室での処置が望ましいです。 ※参考書籍 「日本口腔インプラント学会誌 2018.12 vol.31 No.4」 |
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Q284 | 矯正用インプラントを入れるのは痛いですか? |
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A284 |
いいえ、入れるときには麻酔をしますので強い痛みはありません。 |
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Q285 | 歯根の治療後、痛みが出たので再治療の必要があるのでしょうか? |
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A285 | 治療をして、「痛むから再治療してほしい」という患者さんもおられるのですが、治療をして歯のなかをかき回すと、その刺激でさらに痛くなって逆効果です。そのため、申し訳ないのですが、痛み止めや抗生物質を飲んで炎症がおさまるのを待つのがもっとも得策です。 |
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Q286 | 根管治療後に発症する通常の術後疼痛はなぜ起こるの? |
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A286 |
術後疼痛は、患者が歯科医院を離れた後に急性的に起こる痛みのことで、その発症率は条件や文献によって大きな幅があります。軽微なものも含めると、根管治療を受けた65%の患者に何らかの疼痛や深い症状がみられるとされています。 Glassman G, Krasner P, Morse DR, Rankow H, Lang J, Furst ML. A prospective randomized double-blind trial on efficacy of dexamethasone for endodontic interappointment pain in teeth with asymptomatic inflamed pulps. Oral Surg Oral Med Oral Pathol. 1989; 67(1): 96-100.そのうちの20~25%は鎮痛剤が必要であったり(中等度の疼痛)、鎮痛剤でも効果がない重度の疼痛を経験するとの報告があります。 Marshall JG, Liesinger AW. Factors associated with endodontic posttreatment pain. J Endod. 1993; 19(11): 573-575.痛みの強度の分類
痛みのピークは12時間以内で、ほとんどは48~72時間以内に治まり、長くても7日間で治まるとする報告が多くあります。 Jaclyn G, Pak BS, White SN. Pain prevalence and severity before, during, and after root canal treatment: A systematic review. J Endod. 2011; 37(4): 429-438.痛みの原因は、根尖歯周組織に与えられた刺激により起こった急性炎症と考えられています。根尖部への刺激には、機械的刺激(咬合、暴力的な器具操作等)、化学的刺激(根管洗浄液、貼薬剤、充填材等)、細菌学的刺激があります。 ※参考書籍 |
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Q287 | 根管充填後に痛みが生じた場合、どのように対処すべきでしょうか? |
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A287 |
原因としては、根尖部からのシーラーの微小な溢出による刺激が考えられます。しかし、一過性の可逆的変化と考えられ、7日以内に消失することが多いとされています。そのため、経過観察をすることが重要となります。 Wang C, et al. Int Endod J. 2010; 43(8): 692-697. ※参考書籍 |
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Q288 | 根尖病変を有する歯の治療後に打診痛が残る場合、どのように対処すべきでしょうか? |
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A288 |
慢性的な炎症刺激が根尖部に発生すると、隣接する歯の根尖組織にも軸索発芽が誘導されます。これにより、病変が治癒した後も打診痛が残ることがあります。外傷性神経腫の形成は少ないと考えられますので、再治療はせずに経過観察を行います。 Byers MR, et al. Crit Rev Oral Biol Med. 1999; 10(1): 4-39. ※参考書籍 |
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Q289 | なぜ保定治療が必要なの? |
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A289 | 次のような報告があります。 「全症例の2/3は前歯部に叢生を認めた。重度の叢生を呈した症例では、治療前よりも叢生量が減少していたが、軽度の叢生を呈した症例では、治療前よりも叢生量が増加していた。」 下顎前歯部の排列における安定性と後戻り―エッジワイズ装置による第一小臼歯抜歯症例 Am J Orthod 1981;80(4):349-365. そのため、矯正装置をはずしたあとはリテーナーを使って保定治療をします。歯の移動後には当分の間、歯の支持組織の変化が依然として続いている状態です。 おとなのかたの治療ではとくに治療前の歯並びや噛み合わせによる癖が強固に定着していることが多いので、保定を行わず歯が自由な状態に置かれると、せっかくきれいに並んだ歯が以前の位置に向かって後戻りしたり、思わぬ方向に移動したりすることがあります。 歯の移動が目的通りに完了したとしても、それで矯正治療が終わったわけではないのです。その傾向は切歯、特に下顎切歯で最も著しいといわれています。叢生矯正後の下顎切歯は、たとえ適切な保定を行っても矯正後の安定を得ることはなかなかむずかしいもので、成功裡に矯正を行った症例でも20%に顕著な後戻りが見られるといいます。 装置をはずしたあとの保定治療は通常1年半ほどで、きれいな口もとを維持していただくために、たいへん大切な治療期間です。リテーナーの使用を忘れないようにしましょう。保定治療の終了後は、半年~1年に一度の定期的メインテナンスを受けましょう。 歯並びや噛み合わせだけでなく、むし歯、歯周病の有無、そしてフィックスリテーナーの管理など、お口の状態のチェックを定期的に受けておくと安心です。また、きれいになった歯の健康を守るため、プロフェッショナルクリーニングもおすすめです。 きれいで快適になったお口を、ぜひ長く維持していきましょう。 「矯正歯科の基礎知識」 飯塚 哲夫 著 愛育社 「矯正歯科のための重要16キーワードベスト320論文」 |
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Q290 | 取り外し式の矯正装置について教えて下さい。 |
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A290 |
可徹式矯正装置とは、「自分自身で取り外し可能な矯正装置」のことです。 種類狭義では口腔内に装着される装置(顎内装置 intraoral appliances)のみを指しますが、広義には次のようなものがあります。 1.アクティブプレート(床矯正装置)1歯または2歯を移動するためにスプリングまたはスクリューをつけた床装置 2.機能的装置アクチベータ 3.顎外装置ヘッドギア装置(顎外固定装置) 長所1.アーチワイヤーなど鋭利な突起部がほとんどないので、固定式装置と比べて安全です。 2.装置使用中に痛みなどの問題が発生しても患者さん自身が装置を取り外し、応急対応することで問題を軽減または解決できます。 3.大事な会合などで装置が見えないようにしたいときに、患者さん自身が装置を一時的に外すことができます。 4.装置の調節に要する治療時間(チェアタイム)が、固定式矯正装置に比べて短くなります。 5.矯正力による組織の障害のリスクが低くなります。 6.固定式矯正装置と比べて、口腔内を清潔に保ちやすくなります。 短所1.口蓋が浅い場合や臨床歯冠高が短い歯、脱落の時期が近い乳歯を鉤歯にすると、装置の安定が得られにくくなります。その結果、矯正力が有効に歯に伝えられにくく、また固定を歯に求める場合には、固定の喪失(アンカレッジロス anchorage loss)が起こりやすくなります。 2.基本的には歯の傾斜移動しか期待できません。 3.効果は装置の使用時間に大きく依存しますので、患者さんの理解と協力が不可欠となります。 4.容易に取り外れるために紛失するリスクがあります。例えば、レストランで食事前に外したときにティッシュペーパーに包んでおいたところテーブルに置き忘れてしまった、愛犬がくわえて行ってしまったなどの事例があります。
※参考書籍 |
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