歯の痛み

Q1 昨日で歯の神経を取る治療が終わりましたが、まだなんとなく違和感があります。神経を取ったのに変じゃないですか?
A1 歯の中心を通る歯髄は痛みの受容器のほんの一部分で、歯の周辺には網の目状にネットワークが広がっています。痛みを感じるセンサーは歯髄だけでなく歯の外側の歯根膜や、歯槽骨などいろいろなところにあるのです。
処置後数日の違和感は通常の症状なので心配しないでまずは様子を見ましょう。

※参考書籍 「nico 2014.3 臨時増刊号 クインテッセンス出版株式会社」
Q2 矯正治療中の痛みについて教えてください。
A2

ある歯科医院の矯正治療中の患者さんへのアンケート集計結果がありますので参考にしてください。

1.歯が動く痛みを感じたこと

歯が動く痛みを感じたこと(ある94%、ない6%)

2.装置があたって痛いと感じたこと

装置があたって痛いと感じたこと(ある90%、ない10%)

3.「歯が動く痛み」について、装置付けてから何日くらい痛みが続いたか?

「歯が動く痛み」について、装置付けてから何日くらい痛みが続いたか?(1日5%、2~3日65%、4~5日20%、6日以上10%)

4.「歯が動く痛み」について、最も痛かったのは何日目か?

「歯が動く痛み」について、最も痛かったのは何日目か?(初日5%、翌日75%、2日後4%、3日後以降7%)

5.どのようなときに最も痛かったですか?

1位 食事のとき

2位 常に

3位 歯を噛みしめたとき

4位 食事のときと歯を噛みしめたとき

6.これまでの治療で最も痛かったのはいつですか?

1位 初めて装置がついたとき

2位 ワイヤーを新しく交換したとき

3位 セパレーション

4位 口内炎が治らないとき

5位 装置で頬が切れたとき

6位 装置を外した時

 

7.唇や頬に装置があたる痛みについて、装置があたる痛みには慣れたか?

唇や頬に装置があたる痛みについて、装置があたる痛みには慣れたか?(慣れた94%、慣れない6%)

8.唇や頬に装置があたる痛みについて、装置があたる痛みに慣れるまでの期間は?

唇や頬に装置があたる痛みについて、装置があたる痛みに慣れるまでの期間は?(1週間以内60%、2~3週間30%、1ヶ月以上10%)

 

※参考サイト
 経営コンサルタント 野々村太郎のブログ

 

Q3 神経を抜いたのになぜまだ痛むのですか?
A3 細菌感染が広がって周りの歯根膜や歯槽骨にも感染が及んでいると、痛みや違和感が治まるまで少し時間がかかります。

※参考書籍 「nico 2014.3 臨時増刊号 クインテッセンス出版株式会社」
Q4 最近舌が痛いんですが、どんな原因が考えられますか?
A4

舌の痛みを訴える患者さんについては、まずは医療面接(問診・問診票)と診察により、舌に肉眼的な異常があるかどうかを確認します。

舌に肉眼的な異常がある場合

①侵害受容性疼痛

例)外傷性/非外傷性の舌炎、粘膜病変、全身疾患や薬の副作用に起因する口腔乾燥症など

 

舌に肉眼的な異常がない場合

①神経障害性疼痛

例)三叉神経痛、舌咽神経痛、外傷性神経障害性疼痛、帯状疱疹性神経痛/帯状疱疹後神経痛

 

②心理社会的疼痛

例)心理状態、社会的ストレス、患者の性格、精神疾患

 

③特発性疼痛

舌痛症/口腔灼熱感症候群

 

侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、心理社会的疼痛は、それぞれ併発する可能性があります。

 

※参考書籍
 「『舌が痛い!』という患者さんが歯科医院に来院した時に読む本」
 監著 和気裕之/依田哲也 クインテッセンス出版株式会社

Q5 この間からむし歯が痛くて、「歯医者さんに行かなきゃ」と思っていたらいつの間にか痛みが消えました。自然に炎症が治まったってことですか?
A5 とんでもない、違います。「痛みが消えた」とホッとしてはいけません!
歯髄が死んでしまうほど歯の破壊が進んで痛みが消えただけです。炎症がひどすぎて歯髄が死んでしまったか歯のなかに溜まり歯髄を圧迫していた膿が何かの拍子に排出されたのでしょう。すぐに歯科医院に行きましょう。
このままでは歯を失ってしまいますよ。

※参考書籍 「nico 2014.3 臨時増刊号 クインテッセンス出版株式会社」
Q6 痛みの原因を調べるとき、検査しても痛くない歯が原因とされることがあります。なぜでしょうか?
A6

様々な診査・検査が行われますが、それらは絶対的なものではありません。問題がない歯に反応がでることを「偽陽性」、問題のある歯に反応がないことを「偽陰性」といいます。

偽陽性を起こす原因

  • 疼痛や刺激に対する患者の過剰な意識
  • 複根管歯において、歯髄の壊死している根管と健全な根管が混在している場合
  • 歯のみに電気刺激を加えることができないために、歯肉が反応した場合
  • 被検歯のみに電気刺激を加えることができないために、隣在歯が反応した場合
  • 歯髄のC線維が血液供給を失った後もしばらく機能するために、生活反応が出てしまう場合

偽陰性を起こす原因

  • 電極と歯がしっかり接触していない
  • 絶縁性の非金属に被覆されているために、電気伝導が不十分な場合
  • 加齢により歯髄が厚い第二象牙質で被覆されている場合
  • 大きな修復や摩耗により厚い修復象牙質や第三象牙質が歯髄を被覆している場合
  • 感覚(疼痛)の閾値が高い場合

 

※参考書籍
 「66症例に学ぶ 歯科臨床の問題解決」
 Edward W. Odell 医歯薬出版株式会社

Q7 歯に原因はないのに歯に痛みが出ることってあるの?
A7

そのような痛みのことを「非歯原性疼痛」といいます。非歯原性疼痛は様々な要因によって引き起こされ、次のようなものがあります。

1.三叉神経痛

たとえば歯のブラッシングや食事あるいは顔を触った際のような、無害な刺激な後に引き起こされます。その痛みは突然発症し、鋭く撃つような電撃的な痛みで数秒で終わります。脳内の動脈や静脈による三叉神経の圧迫が原因ではないかと考えられています。

2.前三叉神経痛

顔面や歯にぼんやりした深い鈍痛を持続的だったり間欠的に感じる痛みのことです。三叉神経痛に移行することがあるため、“前三叉神経痛”と呼ばれています。

3.非定型歯痛(幻歯痛)

痛みは歯に入っている末梢神経ではじまりますが、中枢性の神経系の一部に変化をもたらし、歯痛を感じるように進行してしまいます。

4.慢性(複合性)局所疼痛症候群

慢性局所疼痛症候群(CRPS)は、末梢神経のダメージによって発症し、神経系の末梢および中枢部分を変化させ、非定型歯痛にみられるものと似ています。非定型歯痛との違いは、交感神経系が関わっていることです。交感神経系は神経系の一部であり、いろいろな働きがありますが、その部位の血管が狭くなっているのが原因です。痛みは、「焼けるような」と表現され、軽い接触や他の刺激が引き金となります。CRPSは腕や脚に頻繁に発症しますが、顔面にも起こることがあります。

5.神経血管痛(頭痛の関連痛)

偏頭痛、群発性頭痛、連続性片頭痛は脳の神経および血管の変化に由来するタイプの頭痛です。あるケースでは、三叉神経からの関連痛により、これらの頭痛が歯のなかに感じ歯痛となることもあります。痛みは持続的、激痛、拍動性、また緩和される時期もあります。

6.心臓由来の歯痛

狭心症や急性心筋梗塞といった心疾患では、関連痛が肩や腕または顎にさえ現れることがあります。また関連痛は歯にも表れることがあります。胸の痛みと関連していることもあります。歯痛が心臓由来である場合には、運動によって疼痛は増加し、投薬(たとえばニトログリセリン錠とか)により痛みは減少します。

7.上顎洞/鼻由来の歯痛

上顎洞粘膜や副鼻粘膜の問題が、上顎の歯に関連痛を引き起こすことがあります。上顎の数本の歯に鈍く持続性や拍動性の痛みを感じます。また目の下の部分に圧を伴うことがあり、頭を下に下げたり、咳や鼻をすすることで上顎洞に圧が加わると痛みが増してきます。冷水反応や咬合、打診反応のような歯の検査で、上顎洞由来の痛みは強くなってきます。

8.頸部における新生物あるいは他の病変

腫瘍は歯の神経の近くの部位にも現れることもあり、それにより歯が緩く感じたり、動いたり感じる原因になります。

9.唾液腺機能不全

唾液腺からの関連痛で歯の痛みを感じることがあります。また歯および周囲組織の健康を損ねることによって、唾液の欠如が起き、歯痛を引き起こすこともあります。

10.心理的な障害

心理学的障害は歯痛の原因ではなく、増幅因子と考えられています。

※参考書籍
 「痛みの特徴から主訴を解決する やさしい診査・診断学」
 宮下 裕志 著 クインテッセンス出版株式会社

Q8 歯が原因でない歯痛の特徴を教えてください。
A8

痛みの特徴としては、下記が挙げられます。

1.(原因が見当たらないのに)自発痛が多数歯に及ぶ

2.痛みを説明できる歯科的原因が、局所に見当たらない

3.刺激的、灼熱的、非拍動性の歯痛(炎症性の痛みと異なる)

4.一定不変で間断のない歯痛(痛みに波がない)

5.継続的で再発性の歯痛

6.(痛みを感じている部位に)麻酔をしても痛みに変化がない(診断的局所麻酔)

7.理にかなった歯科治療を行っても、痛みに変化がない

 

口腔顔面痛の最新ガイドライン 改定第4版. クインテッセンス出版, 東京, 2009.

 

いわゆる炎症性の痛みとは異なる状態が存在する場合、非歯原性の痛みである可能性があります。

 

※参考書籍
 「歯内療法の三種の神器」 北村 和夫 著  デンタルダイヤモンド社

Q9 歯が原因で歯性上顎洞炎と言われましたが本当ですか?
A9

上顎洞炎の10~12%が歯性上顎洞炎であると言われてきましたが、コーンビームCT(CBCT)による診断が可能となった現在、その発生頻度は以下の報告のように高くなってきています。

・慢性上顎洞炎の感染原因は40%以上が歯に起因する(Patel)

・上顎洞炎を有する患者の上顎小、大臼歯部をCBCTにより診査した結果、50%以上に根尖病変が認められた(Maillet)

・上顎洞炎と診断された52人の患者のうち、55.7%は根尖が上顎洞内に突出しており、それらの79.3%は上顎洞粘膜が2mm以上肥厚していた(Yildirim)

歯性上顎洞炎の原因を報告した論文は少なく、インプラントが原因の歯性上顎洞炎が37.0%、抜歯によるものが29.6%、根尖病変に起因するものが11.1%であった(Lee)という報告があります。

副鼻腔の炎症は、鼻閉、鼻漏、後鼻漏といった鼻症状に加え頭痛、頬部痛、顔面圧迫痛を伴うもので、患者さんのQOLに大きくかかわる疾患です。

歯性上顎洞炎の経過には急性と慢性がありますが、急性期には片側性の頬部痛や鼻閉を伴うことが多く、鼻症状の前に歯痛をきたすこともあり、歯髄炎と誤って抜髄することのないよう注意が必要です。

※参考書籍
 「歯性上顎洞炎に対する歯内療法的対応」
 井澤 常泰, 日歯内療誌 35(3):117~124, 2014

Q10 歯が痛いのですが原因がわからないといわれ、歯科医院にいっても治りません。どういうことでしょうか?
A10

歯の痛みには、歯原性歯痛と非歯原性歯痛があります。

歯原性歯痛

歯や歯周組織に生じた器質障害や炎症により、当該部位あるいはその関連部位に自覚される歯痛のこと

非歯原性歯痛

歯や歯周組織以外に生じた痛みを、関連痛の一つとして歯や歯周組織に自覚される歯痛のこと

 

注意してほしいことは、非歯原性歯痛は主な原因が歯にないということであり、歯に問題がないということではないということです。

例えば、顔面痛で経過が長い場合は、しばしば知覚神経に可塑化を引き起こし、三叉神経痛様や帯状疱疹後神経痛様など、さまざまな痛みに姿を変えます。そこで、歯に何らかの問題があると、その歯を標的に顔面痛が非歯原性歯痛として現れ、歯痛化すると考えられています。

よく診査をしてみないとはっきりとしたことは言えませんが、もしかしたら非歯原性歯痛の可能性も考えられます。

※参考書籍
 「エンド難症例 メカニズムと臨床対応」
 恵比須 繫之 編  医歯薬出版株式会社

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