歯・お口の状態について

Q441 歯周病菌が出す口臭の原因物質の特徴を教えて下さい。
A441

臭いの原因物質は揮発性硫黄化合物であり、歯周病菌が産生する物質はメチルメルカプタンです。このメチルメルカプタンは、揮発性硫黄化合物のうちもっとも毒性が強く、歯周組織の破壊にもっとも関与していると指摘されています。

天野敦雄, 岡賢二, 村上伸也(監修). ビジュアル 歯周病を科学する. 東京:クインテッセンス出版, 2012.

メチルメルカプタンの特徴

1.毒物指定(毒物および劇物取締法)

2.毒性は青酸ガスに匹敵

3.歯肉の上皮組織の増殖・成長の阻害

4.歯肉の炎症を悪化させる

※参考書籍
 「あなたの知識は最新ですか?歯科衛生士のための21世紀のペリオドントロジーダイジェスト」
 天野 敦雄 著 クインテッセンス出版株式会社

Q442 歯周病と全身疾患はお互いに影響するのでしょうか?
A442

20世紀の末から歯周組織の慢性炎症や歯周病菌が全身に悪い影響を及ぼすという臨床研究が数多く報告され、歯周病と全身疾患は互いに影響し合うメカニズムが存在しているという考えが定着しました。

天野敦雄, 岡賢二, 村上伸也(監修). ビジュアル 歯周病を科学する. 東京:クインテッセンス出版, 2012.

 天野敦雄, 稲葉裕明. 歯周病と4つの全身疾患. 臨床薬理 2011; 42: 65-66.

歯周ポケット内面に形成された潰瘍面から歯周病菌が毛細血管に侵入し(菌血症)、全身を駆けめぐります。その結果、さまざまな全身疾患を発症させたり悪化させたりします。内臓肥満を基盤として発症するメタボリックシンドロームは高脂血症、高血圧、糖尿病などを進行させ、生活習慣病の原因となります。歯周病と肥満、あるいはメタボリックシンドロームとの関係も疫学調査から明らかになっています。

 

歯周病と全身疾患

※参考書籍
 「あなたの知識は最新ですか?歯科衛生士のための21世紀のペリオドントロジーダイジェスト」
 天野 敦雄 著 クインテッセンス出版株式会社

Q443 歯周ポケットからの出血は全身疾患に関係ありますか?
A443

歯周ポケットに潰瘍面が形成され、ポケット内に出血することが歯周病発症の大きなきっかけとなります。この潰瘍面形成により、全身疾患と歯周病の関係が始まります。

すべての歯に深さ5mmの歯周ポケットがあると、その潰瘍面積は手のひら大(72cm2)と言われています。この大きな傷口は24時間バイオフィルム(細菌の塊:大便と同じ)にさらされています。その結果、歯周病菌は毛細血管を通じて全身に運ばれ、全身疾患の原因となるのです。

天野敦雄, 岡賢二, 村上伸也(監修). ビジュアル 歯周病を科学する. 東京:クインテッセンス出版, 2012.

※参考書籍
 「あなたの知識は最新ですか?歯科衛生士のための21世紀のペリオドントロジーダイジェスト」
 天野 敦雄 著 クインテッセンス出版株式会社

Q444 ドライソケットについて教えてください。
A444

ドライソケットとは?

トライソケットというのは抜歯後に生じる特殊な術後疼痛のある抜歯窩のことで、典型的なものでは疼痛は抜歯後1-3日に発生し、通常は5日から10日間持続します1)。そのほか、抜歯後3~7日後に発生するものもあります2)

この種の抜歯後疼痛は抜歯の当日やその翌日に生じることはなく、抜歯後1-3日に突然生じるか、あるいは増大します。これが通常の抜歯後疼痛と異なるところです。通常の抜歯後疼痛は、抜歯日に麻酔が醒めたときに生じ、時間の経過とともに減弱します3)。このような通常の抜歯後疼痛と違ってドライソケットの疼痛は多くの場合、激しい拍動性疼痛であり、市販の鎮痛剤に反応せず、側頭部や耳、頚部などに放散します4)。そのほか、顕著な口臭や不快な味覚を訴えることもあります。しかしドライソケットはいわゆる感染ではないので2)、通常は発熱が見られることはなく、膿汁が形成されることもありません5-7)。抜歯窩には血餅が全くないか、あっても少ないです1)。その結果、抜歯窩は骨が露出しそれは黄灰色の壊死組織の層で覆われていますが8)、多くの場合そこは食片で満たされており、抜歯窩周囲歯肉の浮腫や所属リンパ節の腫脹などが見られます8)

ドライソケットの治療法

まず局所麻酔下で抜歯窩を微温食塩水で洗浄した後に、亜鉛華ユージノールの填塞材を柔らかく練和してヨードフォルムのリボン・ガーゼに塗布し、それを抜歯窩に挿入します。抜歯窩への填塞剤は、通常は毎日あるいは2~3日ごとに交換し、疼痛が緩和したら取り除きます2) 、8)

直ちに疼痛を緩和する方法として、2% lidocaine jelly を抜歯窩へ塗布する方法を推奨している論文があります9)。この方法はドライソケットの治療法というよりも疼痛に対する即効的な処置として利用されます。

ドライソケットの予防法はいろいろと発表されていますが、抜歯前と抜歯後にchlorhexidineによる含噺を行うこと以外の予防法には十分なエビデンスはないという結論が出されています10)。抗生物質の投与はドライソケットの予防効果がなく11)、治療にも効果はありません2)。ドライソケットの治療として抗生物質を全身投与することは、推奨されていません12)

1) Blum,I.R. : Contemporary views on dry socket (alveolar osteitis) : A clinical appraisal of standardization, aetiopathogenesis and management: A critical review. Tnt J. Oral Maxillofac. Surg., 31: 309, 2002

2) Holmgren,E.P. and Bagheri,S.C. : Alveolar osteitis. In “Clinical review of oral and maxillofacial surgery, 2nd edition, edited by Bagheri,S.C.” Elsevier Mosby, St. Louis, 2014

3) Kuriyama,T. et al. : Infections of the oral and maxillofacial region. In ‘Oral and maxillofacial surgery, edited by Andersson,L. et al.’ Wiley – Blackwell, 2010, P.564

4) Swanson,A.E. : A double – blind study on the effectiveness of tetracycline in reducing the incidence of fibrinolytic alveolitis. J. Oral Maxillofac. Surg., 47:165, 1989

5) Awang,M.N. : The aetiology of dry socket: A review. Tnt. Dent. J., 39 : 236, 1989

6) Field,E.A. et al. : Dry socket incidence compared after a 12 一 year interval. Br. J. Oral maxillofac. Surg., 23 : 419, 1985

7) Cardoso,C.L. et al. : Clinical concepts of dry socket the J. Oral Maxillofac. Surg., 68:1922, 2010

8) Fazakerley,M. and Field,E.A. : Dry socket: A painful post – extraction complication (a review). Dent. Update, 18 : 31, 1991

9) Betts,N,J. et al. : Evaluation of topical viscous 2% lidocaine jelly as an adjunct during the management of alveolar osteitis. J. Oral Maxillofac. Surg., 53:1140, 1995

10) Chow,O. et al. : Alveolar osteitis : a review of current concepts. J. Oral Maxillofac. Surg., 78: 1288, 2020

11) Bryant,C. : Tooth extraction. In “Operative oral and maxillofacial surgery, 2nd edition, edited by Langdon,J. et al.” Hodder Arnold, London, 2011, P.56

12) Deluke,D.M. et al. : Dentoalveolar surgery and preprosthetic surgery. In “Oral and Maxillofacial surgery secrets, 3rd edition, edited by Abubaker,A.M. et al.” Elsevier, St Louis, 2016, P266 (no28,29)

 

※参考書籍
 「近代口腔科学研究会雑誌Vol.47 No.2 P129~P136『DRY SOCKET』」
 近代口腔科学研究会

Q445 歯肉が黒っぽくて気になります。原因はなんですか?
A445

歯肉が黒くなる原因は、内因性外因性のものがあります。

内因性のものは遺伝的なメラニン色素の沈着です。

外因性のものはタバコでの着色や嗜好品の形で取り込まれたものが原因です。

治療で金属を使った土台や冠が影響して歯肉が黒ずんでしまうこともあります。(メタルタトゥ)

メラニン沈着の治療は、薬剤を塗布し治すことができます。金属による黒ずみは金属の冠、土台を金属の使っていない樹脂性の土台、セラミック冠にやりかえ、歯肉切除をするなどの方法があります。

気になるようでしたら早めの受診をオススメいたします。

ピンク色の歯ぐきは歯の白さを際立たせ、健康的な印象をあたえます。

Q446 抜歯後の痛みについて質問です。ドライソケットとはどのような状態ですか?
A446

ドライソケットとは、肉芽組織によって内部が被覆され安定する前に、血餅が消失してしまう状態です。露出した骨面には嫌気性菌やスピロヘータが定着し、骨面の一部分は壊死に陥ります。血餅の消失は、細菌、局所組織、唾液による過剰なフィブリン溶解現象が原因と考えられています。

血餅が存在しないと、歯肉縁から軟組織が成長して骨を被覆し抜歯窩を満たさなければならなくなり、治癒が遷延します。

※参考書籍
 「66症例に学ぶ 歯科臨床の問題解決」
 Edward W. Odell 医歯薬出版株式会社

Q447 カルシウム拮抗薬による歯肉増殖では、薬剤を変更したほうがよいのでしょうか?
A447

内科主治医と相談し、カルシウム拮抗薬以外の高血圧治療薬(利尿薬、α・β遮断薬、アンギオテンシン返還酵素阻害薬など)への変更が可能かどうか問い合わせるのがよいでしょう。

※参考書籍
 「下野先生に聞いてみた1 ペリオ・インプラントの疑問に答える、指針がわかる」
 下野 正基 著  クインテッセンス出版株式会社

Q448 口のなかをきれいにするには、どんな方法がありますか?
A448

口のなかの掃除には3つの手段があります。

まず1番目は、バイオフィルムを歯ブラシやデンタルフロスで除去していく物理的な方法です。

2番目は、殺菌性のある洗口液によって清掃する化学的な方法(ケミカルコントロール)です。

3番目は、乳酸菌などのプロバイオティクスの力で有害菌を追い出す生物学的方法です。

 

※参考書籍
 「臨床編 3DSセラピーができる本」
 花田 信弘 監修、浦口 昌秀 編集

Q449 抜歯後、ドライソケットを起こしやすい要因は何ですか?
A449

ドライソケットを生じるリスク因子は以下のものがあります。

  • 侵襲の大きい抜歯
  • 下顎の抜歯、特に第三大臼歯(親知らず)
  • 女性患者、特に避妊薬服用患者
  • 喫煙者
  • 抜歯部位の感染もしくは最近の感染歴
  • 歯周病もしくは急性壊死性腫瘍性歯肉炎(抜歯部位にかぎらない)
  • 血餅形成のための血液供給を減少させる局所の骨病変や骨硬化症(パジェット病、セメント質骨異形成症、放射線治療後など)
  • 局所麻酔薬の過剰投与:抜歯窩周囲の過多な血管収縮が血餅形成を妨げる
  • 過去のドライソケットの既往
  • 若年成人から中年までの患者

 

※参考書籍
 「66症例に学ぶ 歯科臨床の問題解決」
 Edward W. Odell 医歯薬出版株式会社

Q450 3DSセラピーって何?
A450

物理、化学、生物学という順番で口腔清掃をするのが3DSセラピーです。

Q&A「口のなかをきれいにするには、どんな方法がありますか?」で紹介している口腔内清掃のうち、2番目の化学的な方法(ケミカルコントロール)の問題点は副作用唾液による希釈です。

洗口液などに含まれた殺菌成分は唾液により希釈されて有効濃度を維持できません。このようななか、有効濃度を維持するために高濃度の薬剤を入れると粘膜刺激や菌交代現象などの副作用が予想されます。

そこで、唾液によって薬剤が希釈されず、歯面バイオフィルムだけを狙い撃ちする方法が、3DSカスタムトレーです。薬剤スペースが適切に設計されたトレーの中に殺菌成分を含む薬剤を入れておけば有効濃度を必要な時間貼付できます。これが歯面薬剤輸送システムDental Drag Delivery System(3DS)です。

 

※参考書籍
 「臨床編 3DSセラピーができる本」
 花田 信弘 監修、浦口 昌秀 編集

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