歯・お口の状態について
Q271 | 奥歯に皿状で茶色のくぼみができました。染みることはなく、むし歯ではなさそうですが、ものが詰まります。どうしてこんな状態になったんでしょうか? |
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A271 | 歯の一番外側はエナメル質という丈夫な組織で覆われています。食事などの影響により、少しずつエナメル質はすり減っていき、象牙質という組織が出てきます。エナメル質は象牙質よりも少なくとも20倍耐摩耗性が高いと言われています(Litonjua, Quintessence Int 2003)。 その状態で嚙み合わせると、象牙質のほうが柔らかいためどんどん喪失していくのは当然であるといえるでしょう。その結果、象牙質がすり減ってしまい、皿状の茶色のくぼみが出来てしまうのです。 ※参考資料 |
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Q272 | 親知らずを抜く前に気をつけることはなんですか? |
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A272 | 1.睡眠不足は避けましょう手術の前後はとくに、無理な生活は避けてください。抜いた後に休みを取ろうと、前日に徹夜で仕事をしたりすると、疲労で免疫が下がり、傷が治りにくくなってしまうことも。 2.治療についての説明を受けましょう親知らずの抜歯では、まだ痛くない患者さんと、「早く抜かないと隣の歯をむし歯にしてしまったり失ってしまう!」と心配する歯科医師とに認識の温度差が生じがち。 3.ハンカチをお忘れなく当日は、口に当てるハンカチをお持ちください。 4.濃いお化粧も避けましょう口紅は取っていただきます。また、術中はどなたも緊張します。目をギュッとつぶったり、汗をかいたり、涙目になるのでお化粧がくずれてしまうことも。 5.歯科医師へのサインは左手で「気分が悪くなってきた」など、歯科医師に伝える場合は、左手を上げサインを出します。 6.白い服は避けましょう術中に歯や骨を削ったり、口をゆすぐときに、血が飛んでしまうことがあります。また、術後に麻酔が効いているあいだ、ヨダレが垂れやすく服を汚しがちです。 7.長い髪は束ねましょう術中何度か口をゆすいでいただきますが、その際に髪が口の周りに付いてしまうことがあります。 8.胃の弱いかたは胃腸薬も頼みましょう術後には、鎮痛薬や抗生剤をお飲みいただきます。 ※参考書籍 「nico 2012.3 クインテッセンス出版株式会社」 |
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Q273 | 酸蝕歯はむし歯とは違うのですか? |
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A273 |
むし歯はむし歯菌の出す酸によって歯が溶ける病気です。 |
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Q274 | この間からむし歯が痛くて、「歯医者さんに行かなきゃ」と思っていたらいつの間にか痛みが消えました。自然に炎症が治まったってことですか? |
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A274 | とんでもない、違います。「痛みが消えた」とホッとしてはいけません! 歯髄が死んでしまうほど歯の破壊が進んで痛みが消えただけです。炎症がひどすぎて歯髄が死んでしまったか歯のなかに溜まり歯髄を圧迫していた膿が何かの拍子に排出されたのでしょう。すぐに歯科医院に行きましょう。 このままでは歯を失ってしまいますよ。 ※参考書籍 「nico 2014.3 臨時増刊号 クインテッセンス出版株式会社」 |
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Q275 | 親知らずを抜いた後に気をつけることはなんですか? |
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A275 |
1.抜歯直後は止血のためにガーゼを噛んでいただきます。抜歯が終わったら、傷口に丸めたガーゼを当ててしばらく噛んでいただきます。血が止まってきたのを確認できたら、帰宅OKです。その後も1日ほど骨から血がにじみ出ますが、これが固まって傷口をふさいでくれるのですから、心配はいりません。 2.出血量が増えたときはガーゼを丸めて噛みましょう。家に帰ってから出血量が増えたときは、清潔なガーゼやティッシュを丸めて、傷口のところに当て、グッと噛みます。20分ほど噛んでいると止まってくるでしょう。 3.ブクブクうがいはしないでください。傷の治りが悪くなるので、ブクブクうがいはやめましょう。傷口は血が固まって血糊になりふさがれていきます。うがいで剥がれてしまうと、傷口に食べかすが入ったりしていつまでも治りません。 4.鎮痛薬は痛むときだけ。抗生剤は処方どおりに。通常、鎮痛薬と抗生剤(抗生物質)が処方されます。鎮痛薬は、痛くなければ飲まなくてかまいません。でも、抗生剤は最後まできちんと処方どおりに飲みましょう。 5.食事は反対側の歯で軟らかいものを。抜歯後の食事はごく軟らかいものを、反対側の歯を使って食べます。おかゆや、ポタージュ・スープ、また当日食欲が湧かないときは、ゼリータイプの総合栄養食の酸味の少ないものを飲むのもいいかもしれません。 6.冷たすぎるシップはかえって痛みのもと。腫れて熱をもちつらいときは、氷水でぬらしたタオルを当てると楽になるでしょう。 7.しびれが出たら教えて下さい。下あごの親知らずの歯根と神経が接していると、ていねいに抜歯をしても抜歯の刺激でくちびるにしびれの残ることがまれにあります。 8.当日は歯みがき、激しい運動、入浴、飲酒を避けましょう。傷口を刺激したり血行がよくなると、血が止まりにくくなります。そのため当日は、歯みがき、激しい運動、入浴、飲酒は避けてください。 9.頬の内出血はご心配いりません。術後3~4日間は、骨からの出血が歯ぐきから頬にかけてこもり、おたふく風邪のようにぷうっと腫れます。そのとき骨を取った量によっては、頬に青く内出血が出ることがあります。 10.抜歯の翌日と1週間後にかならず来院しましょう。翌日には、かならず消毒のための来院をお願いします。出血や痛み、腫れ、しびれなどの術後経過について確認を行います。 ※参考書籍 「nico 2012.3 クインテッセンス出版株式会社」 |
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Q276 | なぜ親知らずの抜歯は他の歯を抜く時よりも大変なのですか? |
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A276 | 特に下顎の親知らずについてのトラブルは、横向きに生えるまたは斜めに生える、という萌出異常によって引き起こされます。 正常に生えてこなかった親知らずは、そのほとんどがあごの骨に埋まったまま、歯ぐきやとなりの歯に悪い影響を及ぼします。そこで、あごの骨を最小限削り、埋まっている歯を分割して取り出さなくてはなりません。また親知らずの近くは、頬や顎の筋肉が発達していて、その間を通って炎症が波及しやすい場所です。さらにごく近くには、太い神経も通っています。つまり、大変デリケートな部位なのです。 歯科医師は、周囲のこうした組織を傷めないよう細心の注意を払って手術を行います。 |
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Q277 | 歯に外傷をおったときはどうすればよいですか? |
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A277 |
外傷歯の特徴と、種類についてご説明します。 外傷歯の特徴1.う蝕や歯周病とは違って急性の疾患です。 診査項目問診、口腔内写真、エックス線写真検査(CT含む)、視診、温度診、電気歯髄診断など 外傷歯の分類1.破折性の外傷 以上の2つに分類されます。どちらにも該当する外傷歯も存在します。 1.破折性の外傷なるべく神経を残して抜歯しないよう、保存を第一に考え処置します。 2.脱臼性の外傷症状によって4つに分類されます。それぞれ特徴・対応について説明します。 2-1.亜脱臼■特徴 歯内と歯牙の境の溝から出血します。高い動揺はあるものの、変化はありません。 ■対応 通常経過観察のみ行います。動揺度によっては固定します。 2-2.挺出性脱臼・側方性脱臼■特徴 脱臼により、明らかな位置異常が見られるもの。 ■対応 1~3週間の固定。 2-3.埋入■特徴 骨の中へめり込んでしまった状態。基本的に動揺しません。 ■対応 神経の治癒はほとんど期待できないので、根管治療は約2週間後に開始します。 2-4.脱離■特徴 歯全体が歯肉より完全に離れた状態。 ■対応 元通りの位置で2~3週間固定します。 ※「歯の保管方法について」 ※浸透圧の関係上、決して消毒(薬を使用)せず、水道水での保管は避けてください。 ※参考書籍 |
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Q278 | えっ!酸蝕症ってもっとめずらしい病気かと思っていました。4人に1人ってすごい数字ですね。 |
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A278 | そうなんです。軽度のものまで入れると、国内の調査では26.1%のかたに酸蝕症がみられました。ヨーロッパ7ヵ国の大規模調査でも29.4%という結果が出ていますので、この数字はおそらく国内の酸蝕症の罹患状況をつぶさにあらわしていると見て間違いないと思います。 ※参考書籍 「nico 2018.2 クインテッセンス出版」 |
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Q279 | マウスガードは何のために必要なのでしょうか? |
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A279 | マウスガード装着には様々な効果があります。 1.スポーツ外傷の軽減・予防日本スポーツ歯科医学会の研究から、マウスガードの装着はスポーツ時の口腔外傷の発生を抑制できることが明らかになっています。スポーツ時のマウスガード装着が選手の安全と健康維持に有効となることを知っておきましょう。 (安井利一ほか:マウスガードの外傷予防効果に関する大規模調査について-中間報告. スポーツ歯学, 17(1):9-13, 2013.) 2.強い噛みしめによる咬耗の予防スポーツ選手は、競技中に歯を強く噛みしめている場合があり、歯に著しい咬耗を誘発して徐々に下顎位が側方へ偏位していくことがあります。そのまま放置していると、臼歯が破折し抜歯することになったり、顎口腔系筋群や顎関節に障害をもたらしたりすることがあります。マウスガードの装着により、強い噛みしめによる歯の咬耗を防止し、下顎位や歯の損傷を予防することができます。 3.相手選手に対する傷害の防止コンタクトスポーツの競技時には、相手選手との接触で自身の前歯が相手選手の顔面や眼球、頭部などを損傷する場合があります。マウスガードを装着することによって、自身の前歯が適度な粘弾性を備えた材料で被覆されていれば、相手選手に傷害を負わせることを予防・軽減することができます。相手選手の安全を保つためにも、マウスガードを装着するように心がけましょう。 4.衝撃吸収と分散マウスガード材料が持つ粘弾性は、加わった外力の衝撃を吸収することができます。また、マウスガードは歯列全体を被覆しているので、衝撃力を局所的に集中させることなく分散する効果も発揮し、傷害を効果的に防止・軽減できます。 スポーツ時の接触により生じる衝撃力を吸収と分散により緩和し、歯冠部の破折、歯根部・歯槽骨の破折、歯の脱臼、下顎骨骨折、脳震盪、頸椎損傷などを予防・軽減できる可能性があります。ただし、過大な衝撃力が加わると傷害を予防しきれないことも認識しておきましょう。 5.顎関節の保護スポーツ時の接触により下顎へ加わった衝撃力が顆頭を介して顎関節に伝搬され、下顎頭頸部骨折や顎関節円板転位、外側靭帯損傷などの顎関節障害が生じる場合があります。これらの障害を防止・軽減する効果があり、二次的な問題となる咬合異常の発生も予防することができます。 6.顎位の安定マウスガードを装着すると噛みしめ時の顎位が安定し、頭や首、腰の位置を適正に保ち、身体バランスを良好に維持することができます。ただし、マウスガードに付与した咬合調整が不適切で安定していない場合は、顎位も不安定となってしまい、身体バランスが不良になるだけでなく、相手選手との接触時に衝撃力の吸収や分散機能が発揮されず、かえって局所的に力が集中して傷害を予防できないことがあります。このようなこともあることから、市販品のマウスガードではなく、咬合関係を適正に調整することができるカスタムメイドのマウスガードを使いましょう。 7.脳震盪の予防・軽減マウスガードを装着することで下顎に加わった衝撃力を緩和して頭蓋・脳へ伝達することができ、脳震盪の予防、脳への障害を軽減する可能性があることが研究によって示唆されています。 Hickey JC, et al : The relation of mouth protectors to cranial pressure and deformation. J Am Dent Assoc, 74(4) : 735-740, 1967. 武田友孝:マウスガードの装着ならびに咬合状態の相違が顎顔面頭蓋の安全性に及ぼす影響. 歯科学報, 103(9):705-713, 2003. 住吉周平ほか:マウスガードのスポーツ外傷予防効果―オトガイ部打撲を想定した有限要素解析. 日口外誌, 42(12):1192-1199, 1996 . 8.心理的効果他の選手との接触で本人が傷害を負ったり、他の選手に傷害を負わせてしまったりというような不安や恐れを、マウスガードの装着によって大幅に軽減することができます。このことから、リラックスした状態で安心して競技プレーに専念でき、集中力と積極性が増して伸び伸びプレーすることができます。選手本来の実力を発揮できるという心理的効果も期待できます。 9.スポーツパフォーマンス身体のバランスが良好に維持され、その結果、選手本来のスポーツパフォーマンスを安全に発揮することができます。 10.経済的効果マウスガードの装着で外傷を予防できれば、疼痛などの苦痛や治療期間の審美障害、治療のための時間的損失などを免れられるだけでなく、治療費もかからず、経済的効果も大変高くなります。 ※参考書籍 |
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Q280 | 私は72歳ですが、健康のために軽いスポーツを始めたいと思っています。巷では生涯スポーツと言われていますが、体を動かしたいのです。外傷予防はありますか? |
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A280 |
最も起こりやすいのは転倒による外傷です。 ●内的要因1.運動要因筋力低下、筋持続力低下、協調運動障害、姿勢反射低下、など 2.感覚要因視覚障害、前庭覚・平衡感覚障害、深部知覚障害、など 3.高次機能要因意識障害、認知機能低下、記憶障害、睡眠不足、など 4.心理要因自信過剰、遠慮がち、興奮、うつ、転倒後症候群、など ●外的要因1.環境要因脱げやすい靴、滑りやすい靴、床面の段差、暗い照明、など 2.薬物要因睡眠薬、抗精神病薬、降圧薬、筋弛緩薬、など 生涯にわたってスポーツを楽しむためには、自らのコンディションを良好に保つ健康管理が重要です。また、健康維持のためには十分な栄養摂取が不可欠で、さらに十分な栄養摂取のためには口腔内を健康に保つことが求められます。う蝕、歯周疾患、欠損補綴、顎関節症などの早期治療、口腔衛生管理によって口腔内の環境を常にベストな状態にし、競技中のパフォーマンス発揮を妨げることのないよう啓発していく必要があります。 一方で、十分なパフォーマンスを発揮した後は、十分な休養が必要となります。また、不十分な睡眠は競技結果に悪影響を及ぼすことが知られています。途中覚醒がなく持続性の高い睡眠のためには、これを妨げる要因である睡眠関連障害、たとえばブラキシズム(歯ぎしり)や閉塞性睡眠時無呼吸症候群(Obstructive sleep apnea syndrome;OSAS)などの問題を歯科医師に対応してもらう必要があります。健全な口腔状態を保ちながら生涯スポーツによる健康づくりを実践し、ADLやQOLを向上させましょう。 ※参考書籍 |
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