Question

子どもの頃に受動喫煙の影響で黒ずんだ歯肉は、大人になれば消える?

Answer

歯肉の黒ずみの原因が受動喫煙の場合、黒ずみの消失は早いでしょう。しかし、黒ずみはタバコだけが原因とは限りません。

歯肉の黒ずみの症状はメラノーシスと呼ばれます。メラノーシスは、歯肉上皮の基底細胞で、黒ずみの元になる成分の産生が高まることで起こります。基底細胞で産生された後、上皮に運ばれる過程で酸化されて発色し、そのあと代謝により排出されます。これは、歯が黒くなる理由(外来性色素沈着)とは大きく異なります。

メラノーシスは喫煙開始から1年以内の喫煙者の大多数にみられることから、歯肉の色素細胞は喫煙に敏感であることは確実であり、タバコの成分がメラニン色素産生細胞を刺激する経路も推定されています。

喫煙者の歯肉メラノーシスに関しては、国内外の報告で、禁煙後3~5年経過すると、約半数においてメラノーシスが消失したとされています。そして、年齢とともにメラノーシスの割合は低下していきます。喫煙の量とメラノーシスの程度には量一反応関係があることから、受動喫煙によって起きる歯肉の黒ずみの場合、消失するまでの期間は、より短いと推定されます。また、成人は子どもより歯肉の角化度が高いため、成長するにしたがって黒ずみが見えにくくなる可能性も想定されます。

歯肉の黒ずみが気になる場合、審美面をカバーする脱色治療法が確立されています。しかし、喫煙により再発してしまいますので、治療を機会に禁煙を勧めるとよいでしょう。

歯肉メラノーシスの原因では、喫煙以外に遺伝や全身疾患との関連が示されています。たとえば、皮膚や髪の毛の色が濃い人には歯肉メラノーシスが多いなど、非喫煙者や受動喫煙がない場合にも見られることがあります。歯肉の黒ずみはタバコ以外の理由で起きる場合もあると知っておくことはたいへん重要で、黒ずみがあるからと言って受動喫煙の影響だと早合点させてはいけません。

参考文献

1.埴岡 隆, 田中宗雄, 玉川裕夫, 雫石 聰. 喫煙習慣が関係する歯肉メラニン色素沈着の疫学的研究. 口腔衛生会誌 1993; 43; 40-47.

2.埴岡 隆. 喫煙による子どもの健康被害 7.子どもの口腔内へのタバコによる健康影響. 小児科臨床 2008; 61(3): 397-404.

3.厚生労働省 喫煙の健康影響に関する検討会編. 喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書. 2016.

※参考書籍
 「歯科衛生士 2019年7月vol.43」 株式会社モリタ

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