味覚

Q1 味覚をもつことの意味を教えてください。
A1

味覚情報は唾液や消化液の分泌促進消化管の運動促進さらに嚥下や嘔吐にも関係します。

一次感覚神経から伝達された味覚情報により、嚥下・嘔吐の誘発や消化液の分泌促進、消化管の運動促進あるいは食事を味わった時の表情などが反射的に生じます。

また記憶とも関連しており、食べたことのない食物は美味しいとは感じません。

味覚は味を識別するだけでなく、いろいろな感覚を総合した感覚で、食行動に影響を与えています。

 

※参考書籍
 「月刊 小児歯科臨床 2012.3」 全国小児歯科開業医会(JSPP)

Q2 小児歯科で味覚は重要なのですか?
A2

味は味蕾という場所で感じます。

胎児には顔から胸にかけて味蕾が分布しており、胎生3~4ヶ月位から羊水の味を通して味覚の形成が始まります。母親の食べたものが羊水の味に反映しますので、その羊水の味によって胎児の反応も変化することが知られています。ですから、母親が妊娠中にアルコールやタバコを摂取することは好ましいことではありません。

 

出生後の乳児では、味蕾の数は成人よりも1.3倍多く、舌表面のみならず、母乳を飲むときに好位置である軟口蓋、咽頭などにも広く分布しています。 食塩水(塩味)、酒石酸(酸味)に対しては成人の2分の1の濃度(薄味)で反応するので、乳児は成人よりも味覚に対しては敏感といえるでしょう。

離乳の開始時期である4~5カ月頃までの味覚反応は主として反射型によるもので、この離乳期からの味覚体験は、成人になってからの食生活に影響します。

3歳頃までには様々な食品の味を体験することで学習型の味覚反応に移行していきます。特に、苦味や酸味、辛味があり、匂いが強い野菜類(ピーマン、ニンジン、シイタケ、ニンニク、ネギなど)は幼児が嫌いな食べ物となり偏食を生みます。

5歳以降では、さまざまな新しい味、複雑な味を経験し、学習としての味覚体験から「嗜好性」が形成されていきます。

 

小児と成人の味覚閾値の比較

幼児(4~6歳、25名)・学童(7~12歳、29名)と成人(22~34歳、35名)を測定・比較した研究があります。

5基本味のうち、甘味(ショ糖液)、塩味(食塩液)、酸味(クエン酸液)について、全口腔法、上昇系列(低濃度から高濃度へ)で、味の認知閾値についての測定を実施しました(小児の嫌がる苦みについては検査していません)。合わせて味付けの傾向、好きな食品、離乳食の内容なども調査しました。

 

結果

甘味・・・小児の方が成人よりも、閾値が低い(敏感である)

塩味・・・小児の方が成人よりも、閾値が高い(鈍感である)

酸味・・・小児と成人で閾値に有意差がなかった

 

このことから、小児は甘味に対して感受性が大きく、生命維持に必須な糖分摂取に重要な機能と思われ、乳児では母乳の味や味蕾の数とも関連し、さらに敏感と思われます。

塩味については、もともと必須摂取量が不足することはほとんどないため、年齢と共に嗜好食品を通じて感受性が発達し、成人の方が敏感になると思われます。

酸味は、苦味と同様に、生体にとって腐敗物や毒物に対する防御反応の意味合いが強いので有意差がないと思われました。酸味(酢の物、黒酢ドリンクなど)、苦味(ニガウリ、ビールなど)では、嗜好と関連して成人になるに従い受容性に個人差が出てくるようです。

 

アンケート調査から、離乳食の味(うす味)に気を付けた群では、甘味、塩味、酸味のいずれも閾値が低く(敏感)、味質の識別もはっきりしている傾向にあったことは、小児歯科にとって注目すべき結果と思われます。

 

※参考書籍
 「月刊 小児歯科臨床 2012.3」 全国小児歯科開業医会(JSPP)

Q3 味覚と歯科医療って関係があるのですか?
A3

「おいしく味わって食べる」ことは人生の大きな喜びの一つです。

味覚はさまざまな口腔感覚によって修飾される複合感覚であり、口腔と切り離して考えることはできません。すなわち、味覚の研究はOral Health Scientistである歯科医師の責務であり、味覚治療はこれから歯科医療と深くかかわると考えられます。

※参考書籍
 「月刊 小児歯科臨床 2012.3」 全国小児歯科開業医会(JSPP)

Q4 味覚は変わるのですか?
A4

幼稚園に通っていた頃を思い出してみてください。

「甘い=おいしい」「苦い=まずい」だったような記憶があります。その頃、父親の酒の肴をつまみ食いしたことはありませんか?「どこがおいしいのだろう?まずい!」と思ったかもしれませんね。しかし、その味が歳をとってから大好物になることもよくあります。すなわち大人になってからわかる味もあるのです。

「味」とは味蕾からの科学的な情報だけではありません。年齢、記憶、匂い、習慣、環境などが大きく作用してその個人特有の味覚を作りだし、そして変化していきます。

 

※参考書籍
 「口が元気なら、若い!ぼけない!口腔からウェルエイジング」
 著  阿部伸一  クインテッセンス出版株式会社

Q5 味覚障害者はどのくらい存在するの?
A5

ある大学の口腔診断科では、年間総数約12,000名の新来患者の中で、味覚障害を主訴として当科を受診する新来患者数は約50名程度であったという調査結果があります。

数値だけ見ると少ないように思われるかもしれませんが、この数は味覚障害を主訴として来院した患者さんの数であり、その他の主訴で来院した患者さんの中にも問診をしてみると味覚障害を抱える患者さんは数多くいます。

つまり、実際の味覚障害者は潜在的に数多く存在しているのですが、味覚障害を主訴として歯科医療機関を訪れる患者は少ないのが現状です。

また、味覚障害を主訴として最初に歯科を受診する患者は30%程度と少なく、残りの70%は内科や耳鼻咽頭科等を先に受診し原因不明と診断され治療も施されていない場合も少なくありません。

このような患者さんの中には、歯科的な診断・治療によって味覚が改善したケースも多く、歯科領域にとって味覚診療は重要です。

 

他にも次のような調査結果があります。

高齢者の味覚障害

養護老人ホームに入居し健常者と同様の自立した生活をおくっている65歳から94歳の高齢者71名(男性19名、女性52名)を対象とした味覚検査

高齢者の味覚障害割合

 

味覚異常感を自覚している者は71名中9名(12.7%)と少なく、味覚障害者の多くは味覚異常感を自覚していなかった。

 

 

若年者の味覚障害

大学歯学部入学直後の学生153名(男子103名、女子50名)を対象とした味覚検査

若年者の味覚障害の割合

 

味覚異常感を自覚している人は7.9%と少なく、味覚障害者の多くは味覚異常感を認識していなかった。

 

※参考書籍
 「月刊 小児歯科臨床 2012.3」 全国小児歯科開業医会(JSPP)

Q6 味覚障害の原因について教えてください。
A6

味覚障害の研究(冨田寛先生)により、味覚障害の多くは次の4つが原因とされています。

1.薬剤性

2.亜鉛欠乏性

3.全身性

4.特発性

この4つの原因で味覚障害の70%程度が占められているそうです。

 

実際の歯科医院によると、口腔に原因のある味覚障害が大半を占め、入れ歯などの補綴物、歯周疾患、口腔粘膜疾患などに対する歯科治療で改善するケースも多くみられたという報告もあります。

 

歯科を受診する味覚障害患者の特徴

・内科や耳鼻科で原因が特定できないケースが多い

・単一因子ではなく複数の因子が原因となるケースが多い

・口腔疾患が要因となるケースが多い

・唾液分泌低下と関連するケースが多い

・歯科治療、口腔内科的治療によって改善するケースがある

 

※参考書籍
 「月刊 小児歯科臨床 2012.3」 全国小児歯科開業医会(JSPP)

Q7 唾液の分泌と味覚には関係がありますか?
A7

高齢者を対象とした味覚調査で、唾液分泌量測定を実施し、味覚正常者(45名)と味覚障害者(26名)の総唾液分泌量を比較した結果があります。

味覚障害と唾液分泌

※グラフは参考書籍より引用・一部改変

対象 総唾液分泌量の平均値
味覚正常者 12.8±4.3ml/10min
味覚障害者 4.8±2.0ml/10min

 (正常範囲10.0ml以上/10min)

上記により、高齢者における味覚障害には唾液分泌量低下が関与することが明らかとなり、味覚障害の治療には唾液分泌改善が治療戦略として有効であると考えられています。

唾液分泌量の低下は口腔カンジダ症の発症とも深く関わっており、口腔カンジダ症の併発が味覚障害を憎悪させている可能性も考えられます。

※参考書籍
 「月刊 小児歯科臨床 2012.3」 全国小児歯科開業医会(JSPP)

Q8 小児・若年者の味覚障害について教えて下さい。
A8

高齢者の問題であると思われるかもしれませんが、味覚障害は若年者の間にも増加しており、偏った食生活、精神的なストレスなどが関係すると報告されています。

若年者の味覚障害の原因(東北大学歯学部新入生調べ)

・自炊者に多い

・朝食を摂らない者に多い

・食事内容(摂取する食品の種類等)に関連する

・食事に対する意識(気をつけている)に関連する

・体重減少と関連する場合がある

 

上記を見ると、高齢者にみられるような全身新刊や服用薬剤の影響、唾液分泌量低下、生活環境(ストレス、昼夜逆転、睡眠不足など)ではなく、食事に対する意識や食事の内容との関連性が高いことが分かります。

つまり、味覚正常者は、「多種類の食品をとる」や「バランスよくとる」など食生活に対する配慮がみられたのに対し、味覚障害者は食生活への関心が少ないことがうかがえます。また、味覚障害者には朝食の欠食や偏食が多く、体重減少や貧血様症状が多くみられたとのことです。

 

味覚障害者に対して食事指導を行った結果、多くの味覚障害者に食生活の改善がみられ、味覚検査値に加え体重減少や貧血様症状も改善されたという報告もあります。

これらの結果から、若年者の味覚障害には食事が大きく関係しており、食育の重要性が示されたことになったと思います。健全な味覚を維持するためにも、小児からの食育についての取り組みも大切になってきます。

 

※参考書籍
 「月刊 小児歯科臨床 2012.3」 全国小児歯科開業医会(JSPP)

Q9 味覚障害には亜鉛の投与は有効ですか?
A9

味覚障害に亜鉛を投与しても、投与しない場合と比較して効果に違いがありません。

亜鉛欠乏性または突発性味覚障害に対する亜鉛投与の効果についてのランダム化比較試験
池田 稔、黒野祐一、井之口昭、武田憲昭、愛場庸雅、野村泰之、阪上雅史. プラセポ対照ランダム化試験による亜鉛欠乏性または突発性味覚障害219例に対するポラプレジンク投与の臨床的検討. 日耳鼻 2013.; 116: 17-26. 

※参考書籍
 「抜歯・小手術・顎関節症・粘膜疾患の迷信と真実」
 湯浅秀道、安藤彰啓 編著  クインテッセンス出版株式会社

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