他疾病の治療中の方

Q21 顎骨壊死を起こす薬は何ですか?
A21

骨粗鬆症の治療やがんの患者さんが処方される、ビスフォスフォネート製剤とデノスマブという薬が顎骨壊死の原因になる薬といわれています。

具体的なお薬の名前で代表的なものとしては、フォサマック、ボナロン、アクトネル、ベネット、リカルボン、ボノテオ、アレディア、ゾメタなどです。また、デノスマブの製品名は、プラリアランマークです。さらに、血管新生抑制薬であるアバスチンも欧米では顎骨壊死を引き起こす薬といわれています。

ですので、ビスフォスフォネート製剤、デノスマブ、血管新生抑制薬以外の薬を使って治療を受けている患者さんは、基本的に顎骨壊死となるリスクはとても低いので、心配はいりません。

 

※参考書籍
 「MRONJのリスクがある患者の歯科治療を行う時に読む本」
 著 黒嶋伸一郎、澤瀬隆、米田俊之
 クインテッセンス出版株式会社

 

Q22 どうして顎骨壊死は起きるのですか?治療方法はないのでしょうか?
A22

2003年に、世界ではじめて骨粗鬆症やがんに対して処方されるビスフォスフォネート製剤という薬を使っている患者さんで、抜歯した後に顎骨壊死が起こることが報告されました。

最近ではたくさんのお薬が顎骨壊死に関係するかもしれないといわれていますが、現在でも原因はよくわかっていません。ですから、顎骨壊死に対する治療法はまだなく、一度発症してしまうと場合によっては治りづらかったり再発したりするため、生活の質やお口の中の環境を悪化させてしまうことがわかっています。

 

※参考書籍
 「MRONJのリスクがある患者の歯科治療を行う時に読む本」
 著 黒嶋伸一郎、澤瀬隆、米田俊之
 クインテッセンス出版株式会社

 

Q23 顎骨壊死になりやすいのはどんな場合ですか?
A23

抜歯や歯周病改善のために外科的治療を行うこと、治りにくい歯の根の先の病巣を外科的に除去すること、ならびにインプラント治療に関する外科的治療は顎骨壊死のリスクになることがわかっていますので、注意が必要です。

一方で、感染して抜かなければならない歯がお口の中にあると、それ自体がリスクとなるため、抜くべき歯はきちんと抜いてもらいましょう。顎骨壊死をいたずらに怖がる必要はありませんので、歯科医師からの説明を十分に受けて、抜くべき歯は抜いてもらいましょう。

また、お口の中が清掃不良であること、お口の中で骨が出っ張っていて粘膜が薄いところ(昔から存在している場合が多いので、自分では気づきません)、入れ歯の傷、合わない入れ歯、強い噛み合わせをもつ場合(自分では気づきませんので、歯科医師のチェックが必要です)、ならびに全身的な病気なども、顎骨壊死のリスクとなることが報告されていますので、注意しましょう。

 

※参考書籍
 「MRONJのリスクがある患者の歯科治療を行う時に読む本」
 著 黒嶋伸一郎、澤瀬隆、米田俊之
 クインテッセンス出版株式会社

 

Q24 MRONJは治癒しますか?治癒しませんか?
A24

全例ではないものの、MRONJは治癒(寛解)します。

保存的治療(非外科処置、投薬と経過観察)を行った場合のMRONJ治癒率は、ステージ1、2、3において、それぞれ33%、24%、0%であることが報告されています。

一方、外科的切除療法(保存的な外科的切除療法)を選択した場合のMRON治癒率は、ステージ1、2、3において、それぞれ72%、79%、27%であることが示されており、外科的切除療法のほうが治療成績が良いことが報告されています1)

しかしながら、高濃度の骨吸収抑制薬を投与されている悪性腫瘍患者の切除療法による治癒率は約50%であることも報告されていること2)、ならびに悪性腫瘍の患者は、必ずしも切除療法を選択できる全身的状況ではない(全身麻酔を行う侵襲性の高い治療に耐えることができない)こともあるため、外科的切除療法のほうが保存的治療よりも優れていると短絡的に考えないようにしましょう。

1)Rupel K, Ottaviani G, Gobbo M, Contardo L, Tirelli G, Vescovi P, Di Lenarda R, Biasotto M. A systematic review of therapeutical approaches in bisphosphonates-related osteonecrosis of the jaw(BRONJ). Oral Oncol 2014; 50(11): 1049-1057.

2)Hayashida S, Soutome S, Yanamoto S, Fujita S, Hasegawa T, Komori T, Kojima Y, Miyamoto H, Shibuya Y, Ueda N, Kirita T, Nakahara H, Shinhara M, Umeda M. Evaluation of the Treatment Strategies for Medication-Related Osteonecrosis of the Jaws(MRONJ) and the Factors Affecting Treatment Outcome: A Multicenter Retrospective Study with Propensity Score Matching Analysis. J Bone Miner Res 2017; 32(10): 2022-2029.

 

※参考書籍
 「MRONJのリスクがある患者の歯科治療を行う時に読む本」
 著 黒嶋伸一郎、澤瀬隆、米田俊之
 クインテッセンス出版株式会社

 

Q25 MRONJですが、根管治療・補綴歯科治療・保存修復治療・矯正歯科治療は行ってもよいですか?
A25

外科的治療でなければ、これらはMRONJのリスク因子とはなりません。

根尖病変がある失活歯に対しては、MRONJのリスクを減らすために根管治療を行うことが勧められますが、歯根端切除術を行うべきではありません。

義歯以外(クラウン・ブリッジ)の補綴歯科治療、保存修復治療は問題ありません。

不適合義歯はMRONJの発症契機となる可能性があります。そのため、義歯においては、義歯に関する主訴がなかったとしても、義歯と顎堤粘膜に対する十分な検査と評価を行い、義歯の維持安定を確保するために、義歯の新製作やりライニングを行うべきです1)、2)

骨吸収抑制薬を使用している患者に対して矯正歯科治療を行うことは可能です。

1)Ruggiero SL, Dodson TB, Fantasia J, Goodday R, Aghaloo T, Mehrotra B, O’Ryan F; American Association of Oral and Maxillofacial Surgeons. American Association of Oral and Maxillofacial Surgeons position paper on medication-related osteonecrosis of the jaw — 2014 update. J Oral Maxillofac Surg 2014; 72(10): 1938-1956.

2)Kim JW, Kwak MK, Han JJ, Lee ST, Kim HY, Kim SH, Jung J, Lee JK, Lee YK, Kwon YD, Kim DY. Medication Related Osteonecrosis of the Jaw.: 2021 Position Statement of the Korean Society for Bone and Mineral Research and the Korean Association of Oral and Maxillofacial Surgeons. J Bone Metab 2021; 28(4): 279-296.

 

※参考書籍
 「MRONJのリスクがある患者の歯科治療を行う時に読む本」
 著 黒嶋伸一郎、澤瀬隆、米田俊之
 クインテッセンス出版株式会社

 

Q26 MRONJハイリスク薬剤を使用しています。インプラント治療を行ってもよいですか?
A26

MRONJハイリスク薬剤を使用している方、または、これから使用する方は、インプラント治療を行うことは避けたほうがよいと思われます。欠損補綴歯科治療はインプラント治療だけではありませんので、安心で安全な治療方法を選択されるのがよいと思います。

 

※参考書籍
 「MRONJのリスクがある患者の歯科治療を行う時に読む本」
 著 黒嶋伸一郎、澤瀬隆、米田俊之
 クインテッセンス出版株式会社

 

Q27 全身疾患がお口の健康にどれだけ影響するのか教えてください。
A27

全身疾患とお口の健康には大きな関わりがあります。

どんな全身疾患により、どんなことが起こされるのか、そしてその対策はどのようなものがあるかについて紹介します。

全身疾患①:高血圧

高血圧がお口の健康に及ぼす影響と対策

全身疾患②:虚血性心疾患

虚血性心疾患がお口の健康に及ぼす影響と対策

全身疾患③:心弁膜症(人工弁)、その他心臓に人工物(人工血管・ステント)

心臓の人工物がお口の健康に及ぼす影響と対策

※ステントの場合

抗生物質の事前服用が不要なことが多いが、心臓の評価によりたまに必要と返事がくることがあるため、念のために問い合わせはする。

全身疾患④:不整脈

不整脈がお口の健康に及ぼす影響と対策

全身疾患⑤:脳虚血性疾患

脳虚血性疾患がお口の健康に及ぼす影響と対策

全身疾患⑥:糖尿病

糖尿病がお口の健康に及ぼす影響と対策

全身疾患⑦:がん

がんお口の健康に及ぼす影響と対策

全身疾患⑧:骨粗鬆症

骨粗鬆症がお口の健康に及ぼす影響と対策

 

※参考書籍
 「HOME DENTIST PROFFESIONAL Vol.4 メインテナンスのエッセンスとノウハウ」
 監著 藤木省三、岡賢二 インターアクション株式会社

Q28 新型コロナウイルス感染症と喫煙の関係について教えて下さい。
A28

喫煙も新型コロナのリスクファクターとされています。また、新型コロナ以外の呼吸器感染症も、喫煙者は感染しやすく重症化しやすいことが分かっています。

新型コロナウイルス感染症の非喫煙者と比べた喫煙者のリスク

・重症化リスクは1.98倍

Guo FR. Smoking Links to the Severity of Covid-19: An Update of a Meta-Analysis. J Med Virol 2020.

・死亡リスクは1.79倍

Mehra MR et al. Cardiovascular Disease, Drug Therapy, and Mortality in Covid-19. N Engl J Med 2020.

その他の感染症の非喫煙者と比べた喫煙者のリスク

インフルエンザ

・感染リスクは5.69倍

Laerence H et al. 2019.

・重症化リスクのうち、入院リスクは1.5倍

・重症化リスクのうち、集中治療室に運ばれるリスクは2.2倍

Han L et al. 2019.

MERS(中東呼吸器症候群)

・感染リスクは3.14倍

Alraddadi BM et al. 2014.

・死亡リスクは2.55倍

Nam HS et al.2017.

※SARS(重症急性呼吸器症候群)については、統計学的な有意差を示す論文は認められない。

市中肺炎(病院外の人に発生する肺炎)

・感染リスクは2.17倍

Baskaran V et al. 2019.

※参考書籍 「nico 2020.5 クインテッセンス出版株式会社」

Q29 加齢で口腔機能にどのような変化がありますか?
A29

福岡県に在住する80歳の住民約700人を5.5年間追跡し、口腔機能と死亡との関連を検討した研究によると、残存歯数、歯磨きの回数、定期健診の回数が多い人ほど死亡リスクが低いことが報告されています。1)

また、残存歯数は寿命に関係するさまざまな因子の影響を調整したうえでも長寿と関係があり、残存歯数と生存期間との関連を結ぶ経路として、口腔機能低下による栄養摂取の変化が考えられます。すなわち、歯の喪失によって野菜類の摂取量が減少し、抗酸化ビタミンや食物繊維などが不足しやすくなります。また、タンパク質の摂取も減少することが、その要因として考えられます。

8020達成者が51.2%(平成28年歯科疾患実態調査)となり、残存歯数の増加がみられたとはいえ、高齢者においては、加齢とともに有床義歯を必要とする人が急速に増加します。したがって、機能する残存歯の増加や有床義歯補綴による口腔機能の維持・改善が極めて重要になります。

1)Ansai T, et al: Relationship between tooth loss and mortality in 80-years-old Japanese community-dwelling subjects. BMC Public Health, 10: 386, 2010.

※参考書籍
 「聞くに聞けない補綴治療100」
 監修 河相安彦、鷹岡竜一 デンタルダイヤモンド社

Q30 歯周病と心臓病の関係について教えてください。
A30

歯周病は心臓病のリスクを高める可能性があります。歯周病になると、その原因となる細菌が血液中に入り、心臓などに感染をひきおこす場合があります。

狭心症・心筋梗塞とは、動脈硬化により血管が狭くなったり、ふさがったりして、心筋に血液供給がなくなり死に至ることもある病気です。

動脈硬化は、不適切な食生活や運動不足、ストレスなどの生活習慣が要因とされていましたが、別の因子として歯周病原因菌などの細菌感染がクローズアップされてきました。歯周病原因菌などの刺激により動脈硬化を誘導する物質が出て血管内にプラーク(粥状の脂肪性沈着物)ができ、血管の通り道は細くなります。プラークが剥がれて血の塊ができると、血管が詰まる可能性があります。

心臓の内膜や弁膜に障害のある方にみられる細菌性心内膜炎は、その原因のほとんどが口の中にいる細菌ですので、予防には口の中を清潔に保つケアが欠かせません。

血圧、コレステロール、中性脂肪が高めの方は、歯周病があれば、しっかり治療し、心臓病のリスクを遠ざけたいものです。

歯周病と心臓病の関係について教えてください。図

※参考サイト 「日本臨床歯周病学会」

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