歯周外科・再生療法

Q11 最近奥歯が動いてきたので歯医者に行きましたが、再生療法しかないと言われました。糖尿病であることを告げると、できないと言われました。どうしてですか?
A11

全身疾患のなかでも、糖尿病は創傷治癒を障害する代表的な疾患と考えられます。糖尿病による血流の低下、あるいは血管新生の低下など、さまざまな理由により、修復障害を引き起こします。このため、糖尿病患者においては主治医との対診が不可欠であり、適切な血糖値のコントロール下で外科処置を行わなければなりません。

 

※参考書籍
 「フラップデザイン ベーシック編」
 クインテッセンス出版株式会社

Q12 ある歯科医院で再生療法をしましたが、うまくいかなかったようで再度やらないといけないと言われました。どういう人はうまくいかないことがあるのでしょうか?
A12

再生療法の成否には、歯牙を取り巻く環境が大きく関与しています。

例えば、歯列不正や薄い歯ぐき、再生をしたい部位がアクセスしにくい部位だったり、広範囲だったりする場合です。

その他の要因として、口が開けづらい、不適合な修復物が入っている、入れ歯のバネのかかる歯(鈎歯)の状態、唾液量が多かったり少なかったり、などがあります。

糖尿病・免疫疾患・肝疾患、腎疾患、心疾患などの全身疾患や、喫煙・舌癖・口唇癖・楽器演奏などの習癖が治療の成否に関わってきます。

 

※参考書籍
 「フラップデザイン ベーシック編」
 クインテッセンス出版株式会社

Q13 プラークリテンションファクターって何ですか?
A13

プラークリテンションファクターとは、プラーク性歯肉炎と同様に口腔衛生管理を困難にする要素のことをいいます。

具体的には、歯石、歯列不正、歯肉歯槽粘膜部の異常、不適合修復・補綴物、歯の形態異常、食片圧入、口呼吸、口腔前庭の異常、歯頚部う蝕、歯周ポケットなどが該当し、これらが存在すると、歯周炎は悪化します。

 

※参考書籍
 「歯周治療の指針2015」
 特定非営利活動法人 日本歯周病学会

Q14 歯周外科治療を受けましたが、手術後に傷口が治癒するまでどのくらいの期間がかかるのですか?
A14

手術の種類にもよりますが、手術後の創傷治癒には4週間程度の期間が必要です。

※参考書籍
 「歯周治療の指針2015」
 特定非営利活動法人 日本歯周病学会

Q15 歯周外科で何を活かせるのか?
A15

1)非外科的療法では除去できない病原因子や病変の除去

2)生理的な歯周組織の形態や性状への回復

3)審美性の改善や向上

※参考書籍
 「聞くに聞けない歯周病治療100」
 若林 健史  デンタルダイヤモンド社

Q16 歯周再生療法の結果に影響を与える因子について教えてください。
A16

大きく分けると、「①患者関連因子」、「②患歯関連因子」、「③使用材料」、「④外科手技と術者の技術」の4つの項目があります。

「①患者関連因子」は、患者さんの健康状態や生活習慣、年齢により影響される因子です。

下記のように、歯周再生療法に対する評価を行っています。

歯周再生療法の結果に影響を与える因子

因子 評価
A B C
①患者関連因子
patient related factors
全身疾患の有無 健常者 軽度の糖尿病 中~重度糖尿病
外科治療禁忌の患者
プラークコントロール PCR15%未満 PCR15~30% PCR30%以上
喫煙習慣 非喫煙者 10本未満/日 10本以上/日
年齢 40歳まで 40~60歳 60歳~
協力度 協力的   非協力的
②患歯関連因子
bone defect & tooth related factors
骨欠損形態 3~2壁性、
カップ状
1壁性、クレーター状、
根分岐部病変Ⅱ度
根尖におよぶ骨欠損
根分岐部病変Ⅲ度
水平性骨欠損
骨欠損の位置 直視・直逹可能な部位 直視・直逹がやや困難 病変部の廓清が非常に困難な部位
軟組織の状態 thick-biotype、
角化歯肉が多い
thin-biotype、
角化歯肉が少ない、
歯肉退縮
thin-biotype、
角化歯肉が少ない+小帯の高位付着、
口腔前提が狭小
咬合状態 動揺なく、安定している 動揺はあるが、咬合調整・T-fixなどで
コントロール可能
動揺のコントロールが困難な歯
③使用材料
bio-materials
EMD単独、EMD+骨移植、EMD+骨移植+膜、骨移植材の種類など
④外科手技と術者の技術
surgical techniques & skills
切開・乖離・デブライドメント・縫合の確実性、手技のスピードや繊細さ、など

 

※参考書籍
 「歯周再生療法を成功させるテクニックとストラテジー」
 著 宮本 泰和、尾野 誠 クインテッセンス出版株式会社

Q17 歯医者で「不良肉芽を取った」と言われました。肉芽って何ですか?
A17

臨床でよく使われる「不良肉芽」という用語は適切ではありません。

藤木省三、岡 賢二(監著). HOME DENTIST PROFESSIONAL 3 歯周基本治療のエッセンスとノウハウ. 東京:インターアクション, 2019.

「不良肉芽」という用語は、「感染した組織」と呼ばれるべきであり、「治癒が妨げられた状態」を意味しています。そのため、一般的に「不良肉芽(感染した組織)」は、「肉芽組織(創傷治癒、異物の処理、組織欠損の補充のために現れる)」とは明確に区別して除去することが望ましいのです。

肉芽組織について

  • 肉芽組織は生理的な状態では認められません。
  • 肉芽組織が関与する病変は、①創傷治癒、②組織欠損の補充、③異物処理、④炎症です。
  • 肉芽組織は、顆粒状の外観を呈し、鮮紅色の肉のように見えます。
  • 肉芽組織の構成成分は、毛細血管、線維芽細胞、好中球、リンパ球、形質細胞、マクロファージなどの炎症性細胞のほか、酸性ムコ多糖、コラーゲンです。
  • 損傷を受けた皮下組織および口腔粘膜下組織は、受傷後2~10日目に肉芽組織が形成され、10~21日後に線維化・改造(リモデリング)がはじまります。
  • 感染をともなっている場合であれば、慢性炎症へ移行します(不良肉芽)。感染をともなわない場合は、肉芽組織は線維化して、瘢痕組織(成熟瘢痕)となります。

 

※参考書籍
 「肉芽の科学と臨床」 編著 下野正基
 クインテッセンス出版株式会社

Q18 再生するってどういうこと?
A18

炎症や、過剰な力が原因で破壊されてしまった歯槽骨や歯肉の付着が修復されていくことです。修復されると、歯槽骨や付着のレベルは上昇に転じます。炎症がなくなりよい条件がそろうと、歯根膜の働きで自然にあたらしい細胞が生まれて修復されることもありますが、これにはよほどよい条件がそろうことが必要です。そこで、あたらしい細胞が生まれるようなよい条件を人工的に用意して、歯槽骨や歯肉の付着を修復する治療を行いますが、これを再生療法といいます。歯槽骨や歯肉の付着が修復されて、歯と歯肉の境目の歯周ポケットが浅くなると、プラークが溜まりにくくなり、細菌が減り、炎症がおさまって、歯のグラグラが改善され、歯周炎が治っていきます。

※参考書籍 「nico 2007.9 クインテッセンス出版株式会社」

Q19 創傷の「治癒」と組織の「再生」は、どのように関連するのでしょうか?
A19

「治癒」とは、傷害が回復した包括的な組織の状態をいいます。「再生」は、失われた組織が同じ細胞の増殖によって元の状態に回復することを意味します。

※参考書籍
 「下野先生に聞いてみた1 ペリオ・インプラントの疑問に答える、指針がわかる」
 下野 正基 著  クインテッセンス出版株式会社

Q20 再生療法を実施するには時間がかかると言われました。なぜでしょうか。
A20

下記のチャートをご覧ください。歯周外科の再生療法を実施するためには、先に診査や歯周基本治療などを実施する必要があります。患者さんのお口のなかをきれいにしてから再生療法を実施するため、時間がかかります。

 歯周治療のフロー

※参考書籍
 「歯周再生療法を成功させるテクニックとストラテジー」
 著 宮本 泰和、尾野 誠 クインテッセンス出版株式会社

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