歯ぐき

Q1 歯ぐきがやせるのはなぜ?
A1

歯ぐきがやせることを「歯肉退縮」ともいいます。

1.歯の位置関係

あごの骨に対する歯の位置関係が歯ぐきに影響します。くちびる側に飛び出している歯は歯ぐきが薄くなります。また、あごの骨の薄くなりやすい上下の犬歯の根元も、歯ぐきが薄くなることが多いです。

2.歯ぐきやあごの骨の厚い・薄い

歯並びと同じように、歯ぐきやあごの骨の厚さにも個人差があります。前歯の根面が露出しやすいのは、歯ぐきが薄く、骨も薄いことが多いからです。

3.強い力での歯みがき

強い力で歯ブラシを当ててみがくことを長時間続けていると、歯ぐきが下がっていってしまいます。

4.噛む力の激しさ

噛む力が非常に強かったり、歯ぎしりや食いしばりの癖があると、歯ぐきが下がりやすいと言われています。

5.歯周病

歯ぐきがやせる理由のひとつは歯周病歯周病のために歯槽骨が減ると、歯槽骨を覆っている歯ぐきもいっしょにやせてしまいます。歯周病は、歯周病菌が起こす炎症によって歯ぐきが腫れ、歯槽骨が失われる病気です。歯槽骨はいったん失われるともとには戻らないため、歯周病を治した後も、歯ぐきのやせは改善されずにそのまま残るケースも多いのです。
他には乱暴な歯みがき。力を入れてゴシゴシ歯みがきをする習慣があると、歯ぐきがやせてしまいます。

歯肉退縮の原因

うつくしく健康な歯ぐきを守るには、適切な歯みがき法のマスターと、歯周病の早期発見・早期治療がとても大切です。歯周病を放置せず、お早めに歯科医院へ!



※参考書籍
 「nico 2010.8 クインテッセンス出版株式会社」

 「nico 2018.12 クインテッセンス出版株式会社」

 「下野先生に聞いてみた1 ペリオ・インプラントの疑問に答える、指針がわかる」
 下野 正基 著  クインテッセンス出版株式会社

 「PRD YEARBOOK 2020 PRD 新時代の軟組織マネジメント」
 主席編集 岩田健男、山﨑長郎、和泉雄一
 クインテッセンス出版株式会社

Q2 歯ぐきが腫れているようですが、何が原因ですか?
A2

歯ぐきの腫れには2つの理由があります。

まず1つ目は、歯を磨かないことで浮腫性炎症を起こした場合です。この場合、炎症で血管の透過性が上がって、歯肉結合組織が浸出液で“水浸し状態”になるためです。ブラッシングをすると、“水はけ”がよくなって元に戻ります。

2つ目は、降圧剤、免疫抑制剤、抗てんかん薬などを服用している患者さんに起こる“薬剤性歯肉増殖症”です。薬さえ飲めば必ず発症するというわけではなく、個人差が大きいです。ニフェジピンのような降圧剤での発症率は15~20%、シクロスポリンのような免疫抑制剤での発症率は25~30%、そしてフェニトインのような抗てんかん薬で約50%といわれています。この個人差には遺伝子の要因がかかわっている可能性があるようです。

 

※参考書籍
 「Dr.Hiroのペリオ図鑑」
 著 山本浩正 クインテッセンス出版株式会社

Q3 最近歯ぐきが落ちてきました。どうして?
A3

歯肉退縮といっても2つの種類があり、それぞれで発症メカニズムが異なります。

1つ目は歯周病の進行に伴うもので、炎症性歯肉退縮と呼ばれます。歯周病によって付着や支持骨を失い、それに伴って歯肉辺縁が下がります。好発部位は歯間部で、歯間乳頭が下がって歯と歯の間に隙間ができます。

もう1つは、バランスの悪い組織に過剰なブラッシング圧などが加わることによって起こるもので、非炎症性歯肉退縮と呼ばれます。弱い組織に外傷がはたらいて起こるので、細菌による炎症があるわけではありません(外傷による炎症はあります)。そのため非感染性歯肉退縮ということもあり、唇頬側中央部が好発部位です。

 

※参考書籍
 「Dr.Hiroのペリオ図鑑」
 著 山本浩正 クインテッセンス出版株式会社

Q4 歯ぐきの検査のときに出血があると言われました。なぜそんなことに?
A4

状態の悪い歯周組織の上皮は薄くなり、炎症性細胞がたくさん浸潤しています。出血するような歯肉溝の中では、歯周病菌が暴れている可能性が高いと考えられます。

 

※参考書籍
 「Dr.Hiroのペリオ図鑑」
 著 山本浩正 クインテッセンス出版株式会社

Q5 歯肉退縮が起こり、冷たいものがしみるようになってきました。どうしたらいい?
A5

歯肉退縮の原因

大きく分けて、炎症性のものと非炎症性のものがあります。

炎症性のものは、歯周病が原因です。

非炎症性のものは、①ブラッシング・フロス、②矯正、③裂開、④小帯の位置・小帯の異常が原因です。

 

歯肉退縮の影響

①痛み(特に冷痛、知覚過敏が80%)、②審美、③むし歯、④くさび状欠損、⑤骨吸収、などがあります。

 

歯肉退縮の処置

知覚過敏に対する処置が必要です。

①塗布薬、②CR(コンポジットレジン)、③グラスアイオノマーセメント、④根面被覆(歯周形成外科)などがあります。

 

※参考書籍
 「Dr.Hiroのペリオ図鑑」
 著 山本浩正 クインテッセンス出版株式会社

Q6 歯周形成外科って何?どういう時に必要?
A6

歯周形成外科とは、「歯肉または歯槽粘膜に現われる解剖学的、発生学的、外傷性あるいは歯周治療後の形態異常を是正あるいは予防するために行う歯周外科処置(Grossary of periodontal terminology,1996,APP)」と定義されています。

例えば、歯ぐきが薄いまたは下がってきた場合、お口の他の部位から歯ぐきをとってきて足りない場所に移植し、歯ぐきの再生を行います。

歯周形成外科は次のような特徴が見られるときに必要になります。

1.形態的特徴

  • 歯・歯槽骨と歯肉の溝・ポケットの底をつなぐための歯肉(付着歯肉)が少ない
  • 頬や唇の内側の粘膜と歯茎の間をつないでいるすじの部分(小帯)の付着部位が歯に近い(高位付着)
  • 歯列の唇・頬側の部分(口腔前庭)が狭い

 

2.形態的・機能的・審美的特徴

  • 歯ぐきが下がっている(歯肉退縮)
  • 歯の間が離れている(歯間離開)
  • 食べ残し・プラークがたまっている(清掃不良)

 

3.続発的特徴

  • 知覚過敏
  • 歯ぐきが下がって露出した歯の根っこのむし歯(根面う蝕)
  • 歯と歯肉の境目のエナメル質が削られてしまっている状態(くさび状欠損)
  • 歯周炎
  • 歯と歯茎の境界線(歯頸線)に問題がある
  • 詰めもの・被せものが合っていない(補綴物マージンの露出)
  • 歯と歯の間の歯肉がない(歯間乳頭の喪失)

 

※参考書籍
 「Dr.Hiroのペリオ図鑑」
 著 山本浩正 クインテッセンス出版株式会社

Q7 半身浴にはまっています。時間を有効に使いたくて読書、歯磨きをしています。歯磨きは気づけば30分以上しています。歯科医院で定期健診を受けたら、歯肉退縮が進行していると言われました。歯がしみることもあったので診てもらったら知覚過敏と言われました。どうしたらいいですか?
A7

歯磨きは2~3分が妥当な時間だと思われます。

長時間のブラッシングはオーバー・ブラッシングと呼ばれ、歯肉退縮を引き起こしてしまいます。

歯磨きの時間を短くする以外では、ブラッシングの力を弱める、ストロークを少なくする、歯ブラシの交換時期をチェックするなどの対策を行いましょう。

 

※参考書籍
 「Dr.Hiroのペリオ図鑑」
 著 山本浩正 クインテッセンス出版株式会社

Q8 前歯の歯ぐきが腫れてきたので歯医者に行ったら、セメント質剥離ではないかといわれました。セメント質剥離って何ですか?
A8

セメント質剥離とは、歯の構成要素のひとつであるセメント質が剥がれ落ちることです。

セメント質剥離が起こる内的要因としては加齢による組織の劣化外的要因としては過剰な応力によるストレスが考えられています。臨床的にセメント質剥離を起こす原因として、様々なものが検証されています。

セメント質剝離のリスク因子

1)歯種

前歯の方が臼歯に比べてセメント質剥離に関する報告が多い傾向がある。

 

2)性別

ある論文では男性は発症率が高いと報告している1)が、他に有意差を持って男女差を論じることができるデータは存在しない。

 

3)年齢

60歳以上で発生率が高くなるとしている1)

 

4)根管治療の既往

根管治療の既往とセメント質剥離に関して有意な相関関係はない。

 

5)外傷の既往

約10%程度に外傷の既往が見られるのみで1),2)、セメント質剥離の発生に関して相関性はなかった。

 

6)咬合性外傷もしくは過大な咬合力の存在

多くのケースレポートでは咬合性外傷や過大な咬合力がセメント質剥離の潜在的原因となり得ると考察している。

 

従来「男性」、「高齢」などはセメント質剥離のリスク因子と考えられてきたが、強い相関がないという結果になっており、症例をみる際に広い視点が必要です。

一方、咬合性外傷・過大な咬合力は、ある程度相関関係を認めることができ1)、さらに症状の憎悪因子となることよりコントロールする必要があります。

 

セメント質剥離によって起こる歯周組織の変化

セメント質剥離片は生体に異物として認識され、周囲歯槽骨の炎症による吸収が引き起こされます。その結果として、歯肉・歯槽粘膜の腫脹、歯周ポケットの形成、プロービング時の出血(BOP)、歯周ポケットより排膿、sinus tractの形成および排膿、歯の動揺などの臨床症状が見られるようになります。ただしこれらの症状はセメント質剥離特有のものではありません。

 

セメント質剥離の診断方法

セメント質剥離の診断は非常に困難で、複数の方法で確実な診断をする必要があります。

1)臨床症状

初期の段階において軽度な不快感として認識される場合があるものの、疼痛はほとんど感じない場合が多いです。また後に疼痛が発現しても限局化しない場合も多く診断が困難です。

 

2)口腔内所見・歯周組織検査

多くの場合、歯肉や歯槽粘膜の発赤・腫脹またはsinus tractの形成を伴います。歯周組織検査においては歯周ポケットの形成、BOP、排膿などが見られることもありますが、剥離片が根尖側にあり辺縁の歯槽骨の破壊や付着の喪失がない場合にはこれらが見られないこともあります。

 

3)歯髄診査

根管治療の既往がない歯では歯髄は生活反応を示します。鑑別診断のために定期的な歯髄診査が重要です。

 

4)X線検査

歯根面から不完全・完全剥離した不透過像が観察されることがあります。その際、剥離片の形態は、針状や粒状・雨滴状などさまざまな形態を取ります。さらにその周囲に炎症性の骨吸収を生じている場合は歯槽硬線の消失した透過像として観察されます。通常のデンタルX線写真では近遠心面に剥離片が存在するときには比較的容易に発見できますが、頬舌側に存在するときには発見が非常に困難となります。そのため偏心投影なども有効な手段となってきます。CBCT撮影による読影は有効ですが、被曝量などを考慮して必要に応じて行うことが好ましいといえます。

 

5)外科的診断

セメント質剥離はその臨床症状や所見が似通った原発性辺縁性歯周炎、原発性根尖性歯周炎、また垂直性歯根破折などと鑑別診断を要します。他にX線所見より各種嚢胞や腫瘍など多種多様な疾患とも鑑別診断も要します。つまり、探索的手法、抜歯を含めた外科的手法により確定診断が必要となります。

 

セメント質剥離の治療手順

  1. 歯内療法学的ステップ
  2. 歯の動揺のコントロール
  3. 非外科的歯周アプローチ
  4. 歯周外科処置
  5. 確定的外科処置

 

1)Lin HJ, Chan CP, Yang CY, et al. Cemental Tear: Clinical characteristics and its predisposing factors. J Endod 2011; 37: 611-618.

2)Lee AHC, Neelakantan P, Dummer PMH, et al. Cemental tear: Literature review, proposed classification and recommendations for treatment. Int Endod J 2021; 54: 2044-2073.

 

※参考書籍
 「The JOURNAL of JIADS CLUB Vol.28 No.2 2022.8」

Q9 朝起きたときに歯ぐきに違和感があるのですが、どうしてでしょうか?
A9

夜寝ている間は、唾液の分泌が減り、お口の中が乾きやすくなります。お口の中が乾燥すると、細菌の活動に抵抗できないため、寝ている間は歯ぐきにとって危険な時間帯となります。おやすみ前の歯磨きは特に気をつけて実施しましょう。

他にも、寝ている間に歯ぎしりをしていて歯や歯ぐきに負担があった可能性もあります。

※参考サイト 「日本歯周病学会」

Q10 歯ぐきが腫れたような気がしましたが、しばらくすると治りました。でも、その繰り返しでだんだん歯が動いたりしている気がするのですがなぜでしょうか?
A10

歯ぐき(歯肉)が腫れたのは炎症があるためです。その症状は多くの場合は慢性の炎症で、自覚症状がないまま進行します。全身的な免疫力が弱まったときなどに痛みや違和感といった自覚症状として現れるときもあります。歯周病の進行に伴って、歯を支える骨(歯槽骨)が徐々に吸収されますので、歯の動きも大きくなります。たとえ現在腫れが治っていても、歯周病が治ったわけではないのです。早めに受診しましょう。

※参考サイト 「日本歯周病学会」

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