だ液

Q1 ドライマウスの原因を教えてください。またアドバイスをください。
A1

ドライマウスの臨床症状

  • デンタルミラーが粘膜や舌に張りつく
  • 唾液が泡立つ
  • 口腔底に唾液がたまっていない
  • 舌乳頭の萎縮、分葉舌、溝状舌
  • つるつるの歯肉
  • 光沢のある口腔粘膜
  • 口蓋や歯に残渣が付着
  • むし歯

 

ドライマウスの原因

①医薬品-処方箋を確認
  • 抗うつ薬
  • 抗精神病薬
  • 抗ヒスタミン薬
  • 利尿薬
  • 抗パーキンソン病薬
  • 食欲抑制薬
  • 液剤、トローチ剤、吸入剤に含まれる糖

 

②疾患と障害
  • シェーグレン症候群
  • 関節リウマチ
  • 全身性エリテマトーデス
  • HIV/AIDS
  • GVHD
  • サルコイドーシス
  • 悪性リンパ腫
  • アルツハイマー病
  • パーキンソン病
  • 脳卒中
  • 嚢胞性線維症
  • 脱水症
  • 薬物乱用
  • 熱性疾患
  • 発汗過多
  • 下痢
  • 尿崩症
  • 糖尿病
  • 甲状腺機能亢進症
  • 心不全
  • 腎機能不全
  • 貧血
  • 過度のアルコール飲用
  • 過度の喫煙
  • 口呼吸(副鼻腔炎や習慣性など)、過呼吸、開口、摂食嚥下障害などによる口腔の環境変化による水分蒸発といった局所的代謝

 

③頭頚部領域の放射線治療

 

④化学療法

 

⑤神経性のもの
  • 恐怖、興奮、ストレス、抑うつなどの精神状態
  • 脳炎、脳腫瘍、脳外傷などの中枢性病変、顔面神経上の唾液核や顔面神経分泌枝の障害などの唾液分泌の神経系の障害

 

たとえ薬剤を服用していなくても、65歳以上の人は、口腔乾燥と唾液分泌低下を起こすリスクが高いと言われています。3年間の研究において、唾液分泌量が少ない高齢者は、唾液分泌量が正常な高齢者に比べて、3年間に少なくとも1本の歯を失う可能性が高いことが報告されています1)

口腔乾燥と唾液分泌減退はしばしば関連していますが、唾液分泌量が正常な患者さんでも口腔乾燥がみられることがある一方、唾液分泌量が非常に少ない患者さんでも常に口腔乾燥を経験するとは限りません2)、3)

ドライマウスのアドバイス(全身的なものと歯科的なもの)

  • 一日中こまめに水を飲み、口の中を潤す。その際、糖を含む飲み物やあめは摂らない。酸蝕予防のためには、糖を最小限に抑える必要がある。
  • タバコ、カフェイン、アルコールを含む飲み物など、ドライマウスを悪化させる嗜好品を避ける。
  • 収斂作用のある製品は、粘膜を刺激するので避ける。(ミントやエッセンシャルオイルの香りが強い洗口剤、アルコールを含んだ製品、強い風味の歯磨剤など)
  • 口唇にリップクリームやワセリンを塗る。
  • 唾液腺組織が十分にある場合には、糖不使用のガムを噛むことで唾液分泌が促進される。薬剤性ドライマウスの場合には有用かもしれないが、放射線治療やシェーグレン症候群が原因の場合には、腺組織が損傷しているために効果が低い。
  • 口腔衛生を徹底し、歯を清潔に保つ。高濃度フッ化物配合歯磨剤を使用する。良好な口腔衛生が確立されるまでは2週間ごと、その後は3ヵ月ごとに、定期的なメインテナンスを受ける必要がある。
  • 3ヵ月ごとにフッ化物バーニッシュを塗布する。
  • 糖の摂取を食事時(1日3回)に限定する。主食に糖を含まないようにするのは非常に難しいが、間食には糖を含まないものを選択する。
  • 薬剤に糖が含まれていないか確認する。抗真菌薬のトローチ剤に注意する。

 

1)Caplan DJ, Hunt RJ. Salivary flow and risk of tooth loss in an elderly population. Community Dent Oral Epidemiol
. 1996 Feb;24(1):68-71. 

2)Dods MW, et al. Health benefits of saliva: a review. J Dent
. 2005 Mar;33(3):223-33.

3)Vissink A, et al. Aging and saliva: a review of the literature. Spec Care Dentist. 1996 May-Jun;16(3):95-103.

 

※参考書籍
 「デンタルカリエスエッセンシャル 原著第4版」
 医歯薬出版株式会社

Q2 口角炎になりました。何に気をつければよいでしょうか?
A2

口角炎は唇の端に炎症が起き、ひび割れたり化膿したりして、出血や痛みを伴うことがあります。

歯科治療時には口を開けてもらう必要があるため、患者さんは苦痛を感じます。一般的には、義歯のクラスプ部分が当たって傷ついたり、さまざまな原因で咬合が深くなり口角にシワができたりすると、そこに常に唾液が溜まって細菌感染を起こします。

その他にも、口腔乾燥症(ドライマウス)ビタミン欠乏などが原因であるといわれています。

ある耳鼻咽喉科での口角炎の細菌検査(*)によると、日本人80人のうちStaphylococcus aureusSa菌:黄色ブドウ球菌)が48.8%、カンジダ属が26.3%検出されたという報告があり、口腔内の常在細菌により引き起こされている可能性が高いことがわかりました。

このことから、正しい口腔ケアと細菌感染に負けない免疫力をつけ、健康な粘膜や皮膚を保つことが大切です。

口角炎がなかなか治らない方は、下記注意点を参考にしてください。

口角炎が治らないときに気をつけること

  • ビタミンB群などの他、亜鉛の多い食材(牡蠣、牛肉、卵、ココアなど)を摂取しましょう。
  • 腸内細菌(善玉菌)のエサになる発酵食品(ヨーグルト、キムチ、納豆、味噌など)や食物繊維(キノコ類、海藻類、切り干し大根、芋類など)を摂取しましょう。
  • 乳酸菌サプリメントを活用しましょう。
  • 糖質の摂取を控えましょう。

 

*岸本麻子, 他:口角炎について. 耳鼻と臨床, 56(3): 101-110, 2010.

※参考書籍
 「歯科でできる実践栄養指導」
 監修 山本義徳、著 山本典子 デンタルダイヤモンド社

Q3 口腔乾燥症について教えてください。
A3

口腔乾燥症は「ドライマウス」とも呼ばれています。

■口腔乾燥が進むとこんな症状があらわれます

・味覚異常

味を感じる味蕾(みらい)は、水に溶けるものを味として感じます。このため唾液分泌が低下すると、味覚の低下や味覚異常を引き起こすことがあります。

・食物摂取困難、嚥下困難

乾燥すると舌や頬粘膜を動かしにくくなり、さらに唾液量が低下すると咀嚼した食物の食塊を作ることが困難となり嚥下障害へつながります。

・義歯がガタつく

義歯は、唾液により義歯と粘膜の間の空気をなくすことで吸着しています。口腔が乾燥すると、適合の良い義歯でもガタつくことがあります。その他、舌苔の増加や虫歯、歯周病、口腔粘膜疾患が増えます。

・舌が痛い

唾液には抗菌作用や自浄作用があり、口腔内の細菌のバランスを保つ役割を果たしています。しかし、唾液が不足すると、カンジダ菌をはじめとする細菌類が増殖し、舌にピリピリとした痛みをもたらしたり、口角が切れたりします。

■口腔乾燥の原因は何だろう?

近年の研究では、従来言われていた加齢による唾液分泌低下が主要因ではなく、
・抗うつ剤や降圧剤、抗コリン剤などの薬剤性のもの
・飲水量の低下による脱水
・経管栄養摂取による唾液分泌減少
であることが明らかになってきました。

この他、口呼吸や挿管されている場合、十分な唾液量があっても口腔が乾燥している場合があります。またストレスや糖尿病、唾液性疾患、シェーグレン症候群等の疾患も原因となります。

普段からお茶やコーヒーなどのカフェインが含まれる飲みものを頻繁に飲んでいる場合は、カフェインの利尿作用によって脱水し、唾液分泌が抑制されている可能性があります。近年、若年者に人気があるエナジードリンクは、カフェインの含有量が非常に高いため注意が必要です。その他には、常にマスクをしていたり、鼻炎の影響で口呼吸になっている場合もあります。また、緊張やストレスが続いていたり、更年期障害によるホルモンバランスの乱れからも口の渇きを感じることがあります。

唾液腺の組織障害の原因のひとつに活性酸素がありますが、これに対して抗酸化物質が有効であることがわかっています1)。ビタミンCは身近な抗酸化物質として手軽に摂取できます。他にも、アスタキサンチンやコエンザイムQ10も強い抗酸化作用があり、ドライマウスの改善に効果があったという研究結果が出ています2),3)。さらに近年では、ポリフェノールの一種であるフラボノイド”ケルセチン”が唾液分泌を増やす効果に期待できるという報告もあります4)

■口腔乾燥症の見分け方はどうするの?

・舌の下に唾液が溜まっていない
・舌の上に唾液が見られず乾いている
・唾液が泡立ったり、ネバネバしたりしている
・口腔粘膜がツルツルしている
・水分摂取量や尿量の低下(脱水が疑われる時)
・義歯が外れやすくなる
などの症状があったら口腔乾燥症の可能性があります。

■栄養面でのアドバイス

・カフェイン(コーヒーや緑茶など)飲料の摂取を控え、水を飲む。

・服用薬を副作用の少ないものに変更できるか、主治医に相談する。

・こまめに水を摂取する(フレーバーのついたミネラルウォーターは糖質が含まれている可能性があるため避ける)

・緊張やストレスを取り除く。難しい場合は、マグネシウムやビタミンB群を摂取する。

マグネシウムの多い食材:あおさ、のり、わかめ、ココア、ナッツなど

ビタミンB群の多い食材:豚肉、鶏肉、カツオ、レバー、ニンニクなど

・唾液腺を活性酵素の攻撃から守るため、ビタミンC、アスタキサンチン、コエンザイムQ10などのサプリメントを活用する。

コエンザイムQ10はワルファリンの作用を弱める可能性があるため、服用している方は別のものを利用しましょう5)

ビタミンCの多い食材:柑橘類、ブロッコリー、ピーマンなど

アスタキサンチンの多い食材:サケ、いくら、エビなど

コエンザイムQ10の多い食材:牛肉、鶏肉、ニシンなど

・ケルセチンの多い食材を摂取する。(玉ねぎ・とくに外皮、ブロッコリー、サニーレタス、リンゴなど)

 

■対症療法

口腔の症状やその関連症状を緩和することが対症療法です。口腔乾燥症(ドライマウス)の症状が進むと口臭も強くなる傾向にありますが、唾液の分泌が促進されれば症状が和らぐことが多いため、よく用いられるのが「唾液腺マッサージ」を含むお口のストレッチです。その他、日頃のちょっとした心がけで唾液の分泌が促進され乾燥も緩和します。以下にそれらを対策としてまとめました。これらは、要介護者や寝たきりの方にはなかなか当てはめにくい項目ですが、少しでも実践を心掛けて頂ければ、看護の現場での口腔ケアや非経口摂取の方のドライマウス対策につながります。口腔ケアは難しいことではありません。歯科専門職と上手く連携して習慣化しましょう。

【対策】

1.口腔ケアを(用品を含め)全体的に見直す!

口腔ケアをすると多くの場合唾液分泌が増えます。歯磨剤の泡立ち成分(ラウリル硫酸ナトリウム等)や洗口液に含まれているアルコールは、口腔粘膜を刺激し口腔乾燥を進行させると言われています。従って、これらの成分を含まない製品がおすすめです。また歯ブラシは自分に合ったタイプを選び、歯と歯肉の境目をマッサージするように磨いて唾液分泌を促進しましょう。電動ブラシを使用すると、その振動が刺激となり唾液分泌促進に効果的な場合があります。また、口腔内が汚れやすい胃ろう等の経管栄養摂取者には口腔ケアが特に重要となります。

2.良く噛むこと!

唾液腺を刺激して活性化させるためには、何よりも噛むことが大事です。柔らかいものばかり食べていると唾液がだんだんと出にくい状況になり、顎や口の筋力も低下します。健康な状態の時から、介護が必要になってもできる限りよく噛んで食べる(柔らかいものでもよく噛みましょう)、柔らかめの煮物や味噌汁の具などは小さく切りすぎず少し大きめ(一口大)にする、水分で流し込むような食べ方をしない、歌を歌うなどしてはっきり口を動かす機会を作る、表情豊かに暮らす…、など生活自体を変えていきましょう。食べにくいだろうから細かくしてあげよう、歩けるけれど危ないから車椅子に乗りましょうというような行き過ぎた気配りは、過介護と同じなのです。
ガムの噛める方は、ガムを噛むことによる刺激で唾液分泌を促進することができるのでお奨めです。

3.規則正しい生活を送る!

唾液の分泌は自律神経でコントロールされています。規則正しい生活を送ることは自律神経のバランスを保つためにも大切です。喫煙やアルコール類も控えめに・・・。

4.鼻で呼吸する(口呼吸の回避)!

口を開けている状態が長いほど口は乾燥しやすくなります。鼻が詰まってなくても習慣的に口で呼吸をする方がいらっしゃいますが口を軽く閉じて鼻呼吸の習慣化に努めましょう。

5.定期的に歯科検診を受ける!

唾液は口の中を殺菌消毒する重要な働きがあります。そのため唾液分泌の少ない方は、よく歯を磨いていても虫歯や歯周病になりやすく、歯垢のチェックなど専門的な口腔ケアが欠かせません。口臭対策も兼ね3ヶ月に1回程度は、歯科医院でチェックしてもらいましょう。

6.ストレッチ・体操リハビリ!

唾液腺マッサージや舌のストレッチが効果的です。「舌の突出を繰り返す」「上下左右に動かす」など口腔体操の実施や、会話を増やす、歌う等も有効なストレッチとなります。 特に、舌であめ玉をつくる訓練(舌で頬の内側を押して、頬にあめ玉を含んでいるようにする)が非常に有効です。簡単にできるようになったら、舌で頬にあめ玉をつくりながら舌尖を片側ずつ上下・左右に動かしたりすると、さらに効果があります。その際、唾液が出たらゴックンと嚥下につなげましょう。
また、ただ何となく動かすのではなく、音楽に合わせて動かしてみると効果的。毎回同じ曲に合わせて行うことで、舌の動かしやすさや舌の持久力などの変化を感じることができ、評価につなげることが可能です。
その他、歯磨き時に歯ブラシで舌や頬を動かすように刺激するのも有効です。受動的な訓練しかできない場合には、口腔ケア時に積極的に歯ブラシや指で舌や頬に触れ、刺激していくとよいでしょう。開口したままの状態では口腔内はいっそう乾燥します。また閉口するための口輪筋への刺激もお忘れなく。
訓練のほか、唾液腺マッサージを行う場合は、耳周辺や下顎周辺を軽く圧迫するように触れていきます。方法は皆さん自身が自分の顔に触れてマッサージするときに、気持ちよい力加減や動かし方で行えば大丈夫です。

7.お口の保湿ケア!

水分補給に加え、うがいの回数を増やしたり、スポンジブラシ等で粘膜を湿潤させ、保湿してください。唾液腺マッサージやお口のストレッチ、及び上記の1.と2.を行ってもあまり効果がない場合は、その方のお口の乾燥状態に合った口腔保湿剤(口腔化粧品質)を必要に応じて使用します。ジェルやリキッドを使い分けて保湿し、症状を緩和させます。例えば、「夜、口が渇いて目が覚める」などの症状には、就寝前に保湿リキッドでのうがいを習慣化させることなどが効果的です。

●口腔保湿剤の使い分け

口腔保湿剤には色々なタイプがあり、使い方を誤ると症状が改善しない場合があります。一般的に販売されている口腔保湿剤には、ペーストジェル液状の3タイプがあります。

ペースト

(特徴と使用上の注意)
・定められた適量を調整しやすい。

(適応できる症状や使い方)
・乾燥の状態が強く、帯状の痰の付着が顕著な場合など。
・乾燥部に停滞し易いので、塗布後は暫く放置し、強固に付着した痰を柔らかくして除去する。

ジェル

(特徴と使用上の注意)
・少量でよく拡がる。
・量が多過ぎると咽頭に貯留しやすく誤嚥の危険がある。

(適応できる症状や使い方)
・頬粘膜や舌に乾燥した痰がからみついている場合など。
・スポンジブラシ等になじみやすいので、口腔内全体にまんべんなく塗布しながら、からみついた痰を除去する。

液状

(特徴と使用上の注意)
・ガーゼ等に含ませ清拭する。
・誤嚥の傾向のある方には不向きである。

(適応できる症状や使い方)
・オブラート状の痰の除去など。
・口腔乾燥の度合いによって量を調節しながら使用する。
・強い乾燥状態への使用には適していない。

口腔保湿剤は、口腔乾燥の日々の状態によって、上記のタイプを上手く使い分けると、早く改善する傾向にあります。また、含まれている成分によっても効能が若干異なるので、歯科専門職とうまく連携し、その時々に必要な対応を行いましょう。口腔乾燥は長期に渡っての対応が必要です。口腔ケアのプラニングを確立し改善を図りましょう。

 

唾液によって口腔内が潤うと、味も感じやすくなり、食事のおいしさが一層増します。
おいしく食べて楽しく語り、表情も豊かな生活はその方のQOLの向上そのものです。

 

1)Liu X, et al: Mitochondria-targeted antioxidant protects against irradiation-induced salivary gland hypofunction. Scientific reports, 11 (1): 7690, 2021.

2)Koufuchi R, et al: Effects of coenzyme Q10 on salivary secretion. ClinBiochem, 44(8-9): 669-674, 2011.

3)Yamada T, et al: Evaluation of Therapeutic Effects of Astaxanthin on Impairments in Salivary Secretion. Journal of clinical biochemistry and nutrition, 47(2): 130-137, 2010.

4)高橋絢子, 中山亮子, 葉阪彩加, 伊藤由美, 梁 洪淵, 櫻井 孝, 栗原 毅, 井出文雄, 三島健二, 井上裕子, 斎藤一郎:唾液分泌障害に対するケルセチンの効果の検討. 第14回抗加齢医学会総会, 2014.

5)Heck AM, et al: Potential interaction between alternative therapies and Warfarin. Am J Health Syst Pharm, 57(13): 1221-1227, 2000.

 

※参考
 口腔乾燥症 (PDF形式 847KB)
 ドライマウス(口腔乾燥症)について – その2 (PDF形式 807KB)
 
ドライマウス(口腔乾燥症)について – その3 (PDF形式 795KB)
 
口腔乾燥の改善のためにできること (PDF形式 227KB)
 ライオン歯科材株式会社ホームページ

※参考書籍
 「歯科でできる実践栄養指導」
 監修 山本義徳、著 山本典子 デンタルダイヤモンド社

Q4 唾液の役割を教えて下さい。
A4

唾液は、食べる、飲む、話すといった人間にとって欠かすことのできない機能を営むうえで次のような重要な役割を果たしています。

1.抗菌作用

口は空気や食べ物などの入り口であり、常に外界の雑菌にさらされています。唾液には、細菌増殖を抑える「抗菌作用」があります。うまく作用しないと、むし歯歯周病にかかりやすくなるだけでなく、口からの細菌感染により、風邪を引きやすくなり、気管支炎肺炎を起こすこともあります。

2.消化作用

ごはんやパンなどのデンプン質を糖に変える「消化作用」もよく知られている唾液の効用です。唾液中に含まれるアミラーゼという酵素が、デンプンを分解して麦芽糖に変え、体内に吸収しやすくしてくれます。よく噛みしめて唾液で消化することは重要で、ここでの消化がすすまないと胃に負担がかかることにもつながります。

3.粘膜保護作用

唾液には「ムチン」というネバネバとしたタンパク質が含まれています。フランスパンやクッキーのような硬い物が接触しても傷がつかないように、口の粘膜をコートしていますムチンが少なくなると、口に傷がつきやすくなります。

4.食塊形成作用

水だけでは食べ物をまとめることができず、誤嚥してしまったご経験のある方もおられると思います。唾液の粘り気であるムチンがうまく働くと、食塊がまとまりやすく、気管のほうへ流れずに、食道の入り口に入り、嚥下がスムーズになります。唾液のムチンは、食塊形成、摂食・嚥下に重要な働きをしていて、少なくなると誤嚥の原因にもつながります。

5.中和作用

食後にゲップが出て、酸っぱい胃酸を感じたことはありませんか?胃の粘膜は強い胃酸に対しても安定で、食物の消化を行っていますが、口や食道の中は、もともと中性で酸に対しては強くありません。唾液は天然の胃薬のような作用があり、胃酸を中和することができます。また、むし歯の菌が産生する酸を中和することも知られています。唾液が少なくなったり、なんらかの原因で胃酸の逆流が起こると、食道や喉の粘膜を痛めたり、歯を溶かすこともあります。

6.修復作用

唾液には、傷を治す上皮成長因子(EGF)や、脳神経の老化を防止する神経成長因子(NGF)などが含まれていますが、これらは口の中だけでなく、体全体を守る意味でも重要な役割を果たしています。EGFは、上皮細胞の成長を促進させる働きがあり、1986年のノーベル賞で脚光を浴びたことで有名になり、最近ではアンチエイジングに効果があるということで、化粧品にも加えられています。動物が傷口をなめるのは、抗菌作用だけではなく、修復を促進させる働きも関連していると考えられています。また、NGFは、神経細胞の分化、維持に関与しています。海外ではアルツハイマー型認知症の治療へ応用する研究も進められています。

唾液が少なくなると、口の傷が治りにくくなり、神経の回復が遅くなることにもつながってきます。

 

ほかにも、お口を清潔に保ったり、味を感じさせたりする役割もになっています。このように、唾液は単なる水ではなく、身体の機能維持に重要な働きを有しています。

さらに最近では、全身の健康維持にも重要なことがわかってきました。

からだへの唾液の働き

  1. 感染症を予防する
  2. 食道の粘膜を保護する
  3. 胃の粘膜を保護する
  4. 消化を助ける

 

 

※参考書籍
 「ドライマウス 今日から改善・お口のかわき」
 阪井 丘芳 著  医歯薬出版株式会社

 「nico 2018.6 クインテッセンス出版株式会社」

Q5 お口の渇きがツライので、どうにかしたいんですが・・・。
A5

こんな症状はありませんか?

  1. 唾液が出ない
  2. お口のなかが焼けるように痛い
  3. お口のなかがネバネバ、ベタベタする
  4. コケが生えたように舌が白くなる
  5. 口臭が気になる
  6. お口の渇きで夜中に目が覚める
  7. 味がしない
  8. 話しにくい
  9. 飲み込みにくい(食事のときに飲み物が必要)
  10. 舌がひび割れやすく、口角炎を起こしやすい
  11. むし歯や歯周病になりやすい

 

もし該当する症状があった場合、それはドライマウス(口腔乾燥症)かもしれません。

ドライマウスの基本的な予防法

1.こまめに水分補給をする

唾液の元は水です。こまめに摂取しましょう。

2.よく噛んで食べる

よく噛むことで唾液の分泌が促されます。

3.こまめに歯みがきをする

歯みがきによる刺激でも唾液の分泌は促されます。

4.唾液腺をマッサージする

耳下腺、顎下腺、舌下腺などの大唾液腺をマッサージで刺激すると、唾液の分泌が促されます。

大唾液腺の場所

マッサージ方法の詳細はこちら

 

※参考書籍 「nico 2020.11 クインテッセンス出版株式会社」

Q6 唾液っていうとなんか汚いイメージがありますけど、どのようにして作られるのですか?
A6

ほとんどの人に「あるのが当たり前」の唾液。けれども、お口の健康にも全身の健康にも欠かせません。唾液にはたくさん役割があり、単なる水ではなく、非常に高性能な「機能水」といえるんです。

唾液の作られ方

  1. 唾液は血液からつくられます。
  2. 1日1~5リットルつくられます。
  3. 唾液腺でつくられます。
  4. 多くの成分が入ってます。

 

※参考書籍
 「nico 2018.6 クインテッセンス出版株式会社」

Q7 唾液ってほんとにたくさんのはたらきがあるんですね。全身の健康にも影響するなんておどろきでした。でも私、最近唾液が減ってきた気がするんですよねえ。
A7

唾液がその力を十分に発揮するには、お口のなかに、ある程度の量がないといけません。唾液が少ない、減ってきた、もっと唾液を出したいというかたに唾液の「量」を増やすコツをお教えしましょう。

唾液をもっと出すために

  1. 水分をとる
  2. よく噛んで食べる
  3. 唾液腺をマッサージする
  4. 抗酸化食品を取る

 

唾液の量が減る主な原因

  1. 脱水
  2. 持病のお薬など
  3. 加齢

 

※参考書籍
 「nico 2018.6 クインテッセンス出版株式会社」

Q8 唾液は量を増やすだけでよいのでしょうか?
A8

せっかくですから、唾液の「質」も意識してみませんか?唾液には抗菌作用のある物質がいろいろはいっていますが、IgAがいちばん量が多いんです。IgAは細菌やウイルスなどの侵入を防ぐ抗体で、IgAの量は唾液の「質」を左右するものとして注目されているんですよ。

唾液の質を高めるために

  1. 腸の免疫力アップで唾液の質もアップ!
    腸の免疫の状態と、唾液腺の免疫の状態は連動することがわかっています。

  2. 食品から腸の免疫力を改善!
    腸管免疫を改善してIgAを増やす食品には、牛乳・ヨーグルトなどの乳製品、きのこ類、酢(酸蝕症に注意)、クロレラ、ニラ・ネギなどの食物繊維が豊富な食品などがあります。

 

唾液の質が下がる主な原因

  1. 血液の質の低下
  2. 激しい運動
  3. ストレス

 

※参考書籍
 「nico 2018.6 クインテッセンス出版株式会社」

Q9 唾液には傷口を治す効果があるのですか?
A9

「傷口をなめる」ことが傷口にとって良いことをヒトは知っています。

唾液の効用としてまず「洗浄作用」が挙げられます。「洗浄作用」とは、傷口の雑菌や異物を洗い流す作用のことです。

つぎにムチンによる口腔内でみられる粘膜コート機能は、傷口では乾燥を防ぐ「保護作用」として役立ちます。

さらにリゾチームなどによる「抗菌作用」、粘液性糖たんぱく質であるムチンによる細菌の「凝集作用」などが知られています。

その他、炎症を抑える作用など多くのことが議論されています。

またヒトは子どもの時にすり傷を作ると親がそこをなめて「痛いの、痛いの、飛んでいけー。」などとおまじないをかけてくれたことを記憶しているものです。この記憶は、傷口をなめる動作から安心感を体中に呼び起こしてくれるのです。これも立派な効用です。

 

※参考書籍
 「口が元気なら、若い!ぼけない!口腔からウェルエイジング」
 著  阿部伸一  クインテッセンス出版株式会社

Q10 だ液が少なくなるとどんな影響が出ますか?
A10

だ液には、消化作用・抗菌作用・歯の再石灰化作用・粘膜保護作用・活性酸素の除去作用などがあり、唾液の量が少なくなると、むし歯・歯周病・味覚障害・異常乾燥感・不快感・舌痛症・口臭・摂食嚥下障害・上部消化器障害・感染症・肺炎などが起きやすくなります。

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