むし歯
Q11 | むし歯の原因菌は脳出血と関係していますか? |
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A11 | ミュータンス連鎖球菌は微少脳出血を起こします。 歯性病巣感染の詳細なメカニズムに関する研究は昭和の頃からあまり進んでいません。しかし、ミュータンス連鎖球菌と心内膜炎や微少脳内出血との密接な関係がはっきりしてきました*)。すべてのミュータンス連鎖球菌ではなく、血管内のコラーゲンと結合することができるコラーゲン結合性タンパク質をもつcnm陽性ミュータンス連鎖球菌は口腔内の傷や、根尖病巣から毛細血管に侵入し、心内膜や脳血管までたどり着いて血管壁を傷つけ発症を促すことがわかっています。日本人の5人に1人がcnm陽性ミュータンス連鎖球菌を保有しているそうです。 *)Hosoki S, et al. Oral Carriage of Streptococcus mutans Harboring the cnm Gene Relates to an Increased Incidence of Cerebral Microbleeds. Stroke. 2020 Dec;51(12):3632-3639.
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Q12 | なぜ萌出したての幼若永久歯や露出したての歯根面にはう蝕(むし歯)ができやすいのですか? |
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A12 | 口腔内に露出したばかりの歯は、主成分のハイドロキシアパタイトに不純物が多く含まれていて脱灰しやすい状態です。萌出後は、脱灰と再石灰化を繰り返すことで不純物が取り除かれたりフッ化物を取り込んだりしながら成熟していき、酸への抵抗性が増します。そのため、20歳を過ぎる頃からは、歯冠部エナメル質に初発のう蝕はほとんどできなくなります。 また、露出したての歯根面の象牙質がよりう蝕になりやすいのは、象牙質はエナメル質よりも多く不純物を含んでいるうえ、結晶が小さく酸の影響を受けやすいためです。 Goldberg M, Kulkarni AB, Young M, Boskey A. Dentin: structure, composition and mineralization. Front Biosci(Elite Ed). 2011; 3: 711-735.
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Q13 | プラークは何日たつとう蝕(むし歯)になるんですか? |
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A13 | 糖摂取時に歯が溶けるかどうかは、バイオフィルムの成熟が影響します。 歯磨きを数日間中断してプラークを成熟させ、10%スクロース溶液で洗口を行った研究により、「プラークの成熟が2日を超えると、糖が口腔内に入ってきた後に歯が溶けやすい状態になる1),2)」ということがわかりました。 歯磨きが歯を溶けにくくするステファンカーブで有名なStephanは、ブラッシングの有無が歯面に付いたプラークが歯を溶かしやすいかどうかについて調べています3),4)。 ブラッシングを3~4日中断して前歯に付いたプラークを成熟させ、ブドウ糖溶液で洗口すると、1~2分でプラークの中は歯を溶かしやすい状態になり始めました(脱灰)。その後、唾液の緩衝能により30~60分かけて徐々に回復しました(再石灰化)。 そこで今度は、左側前歯のプラークをブラッシングで除去して、もう一度ブドウ糖溶液で洗口しました。すると、ブラッシングをした部位は歯が溶けやすい状態にはならなかったのです。歯面にバイオフィルムが付いていなければ、飲食をしても歯が溶けやすい状態になりにくいことがわかります。 1) Imfeld T, Lutz F. Intraplaque acid formation assessed in vivo in children and young adults. Pediatric Dentistry. 1980; 2(2): 87-93. 2) Imfeld T. In vivo assessment of plaque acid production. A long-term retrospective study. In: Health and sugar substitutes. ERGOB conference on sugar substitutes, Geneva, 1978: Proceedings. Karger, 1978; 218-223. 3) Stephan RM. Changes in hydrogen-ion concentration on tooth surfaces and in carious lesions. J Am Dent Assoc. 1940; 27(5): 718-723. 4) Stephan RM, Miller BF. A quantitative method for evaluating physical and chemical agents which modify production of acids in bacterial plaques on human teeth. J Dent Res. 1943; 22(1): 45-51.
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Q14 | 歯磨きは1日何回すればいいんですか?また、いつ歯磨きしたらいいですか? |
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A14 | 1日に2回以上歯を磨くとよいでしょう。そのうち1回は就寝前に歯磨きしましょう。 ドライマウスの方は毎食後+就寝前にフッ化物のプラスケアを心がけましょう。
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Q15 | むし歯が減っているって言われていますが、大人のむし歯は減っていないってホント? |
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A15 | むし歯は全体としては昔より減っているのは事実です。しかし、それは子どもと若者に関してのことで、中高年のむし歯はそれほど減っていません。 むし歯(処置した歯を含む)を経験した人の割合の推移を、年齢別に示した図をご覧ください。 永久歯のむし歯保有者率の推移(歯科疾患実態調査)19歳以下の年齢集団では、昔と比べて大きく減少しているのですが、一方で25歳以上ではほとんど減っていないことが分かります。 中高年になると、歯ぐき(歯肉)が後退して歯の根元部分が現れてきます。ここにプラーク(歯垢)が堆積し、その中の一部の細菌から酸が産生されて歯が溶けたものを「根面むし歯」といいます。 歯ぐきが後退する理由は、加齢、不適切なブラッシング、歯周病などです。歯の表面は硬くて丈夫なエナメル質で覆われていますが、歯の根元部分は薄いセメント質で覆われており、その下には軟らかい象牙質があります。そのため、歯ぐきが下がり、歯の根元が露出すると、むし歯になりやすくなります。 大人むし歯の有病率(歯肉退縮がある者での割合)「根面う蝕の臨床戦略」(杉原直樹・高柳篤史監著、18ページ、クインテッセンス出版株式会社、2018年)より引用改変 男性は30歳、女性は40歳以上になると大人むし歯が増加してきます。大人むし歯の一番大きな原因は歯ぐきの後退ですので、この原因を取り除き、かかりつけの歯科医院で定期的な歯科検診を受け、保健指導(ブラッシング指導)や予防処置を行ってもらうことが大切です。
※参考書籍 |
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Q16 | フロスでう蝕(むし歯)を予防できますか? |
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A16 | フロスで確実なう蝕のコントロールができるとは言い切れないものの、歯肉炎や歯周病の予防、露出した歯根面のう蝕のコントロールにはフロスや歯間ブラシは不可欠です。
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Q17 | 歯磨き後は口をよくゆすいだほうがいいですか? |
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A17 | 一度だけ、軽くゆすぐ程度にしましょう。 歯磨き後は口をあまりゆすがないほうが、歯磨剤に含まれるフッ化物が洗い流されず口腔内に留まるため、う蝕(むし歯)になりにくいということがわかっています。
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Q18 | 糖の摂取はどのくらいの頻度なら大丈夫ですか? |
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A18 | 糖を含んだ飲食を1日5回までとし、フッ化物配合歯磨剤で2回歯を磨けば、カリエスコントロールに有効と考えられています。
※参考書籍 |
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Q19 | 子供にフッ化物配合歯磨剤を使っていいの? |
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A19 | 幼少期の子供に対しては、フッ化物配合歯磨剤の使用に注意が必要です。萌出したての歯はう蝕(むし歯)になりやすいので、フッ化物により効果的なカリエスコントロールを行いたい反面、体重あたりのフッ化物摂取量が多くなることから、歯のフッ素症のリスクも考慮しなければなりません。 推奨されるフッ化物配合歯磨剤の使用量1)~4)
1) 日本口腔衛生学会 フッ化物応用委員会. フッ化物配合歯磨剤に関する日本口腔衛生学会の考え方. http://www.kokuhoken.or.jp/jsdh/statement/file/statement_20180301.pdf 2) American Dental Association Council on Scientific Affairs. Fluoride toothpaste se for young children. J Am Dent Assoc. 2014; 145(2): 190-191. 3) American Academy of Pediatric Dentistry. 2019-2020 The Reference Manual of pediatric dentistry. 2019; 262-265. 4) Pendrys DG, Haugejorden O, Bårdsen A, Wang NJ, Gustavsen F. The risk of enamel fluorosis and caries among Norwegian children; implications for Norway and the United States. J Am Dent Assoc. 2010; 141(4): 401-414.
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Q20 | ハチミツはう蝕(むし歯)にならないって本当ですか? |
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A20 | ハチミツは、花の蜜のスクロースという糖をハチの酵素でグルコースとフルクトースという別の糖に分解したものです。抗菌作用があっても、糖がとても多いので、砂糖と同様にむし歯の原因になります。 他にも水飴や果汁100%ジュースはむし歯にならないという思い違いをしている方がいます。 水飴は、デンプンを酸や酵素で分解し、糖の混合物(グルコース、マルトースなど)にしたものなので、むし歯の原因となります。 果汁100%ジュースは、砂糖を加えていなくても、果物には天然にグルコース、フルクトース、スクロースなどの糖が含まれています。そのため、果汁や濃縮還元果汁、果汁パウダーなどもむし歯の原因になります。
※参考書籍 |
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