歯の欠損

Q1 歯がなくなると身体運動に何か影響がありますか?
A1

人の身体運動の中で、動きを停止するなど関節を固定したい時に、筋は等尺性の筋活動(筋力=負荷の状態)を行います。このようなとき、歯を噛みしめることによって顎の関節は固定され、この固定感が等尺性の筋活動を行いやすくさせます。

上腕二頭筋(屈筋)を例にした図

筋活動(上腕二頭筋)

 

①短縮性筋活動(concentric muscle action)

筋の発揮する力>外部の力 筋長が短縮する

②等尺性筋活動(isometric muscle action)

筋の発揮する力=外部の力 筋長には変化が生じない

③伸張性筋活動(eccentric muscle action)

筋の発揮する力<外部の力 筋長が伸ばされる

 

もし、歯が全部なくなると、足を踏んばる、重いものを持ち上げるなど、ゆっくりとした力発揮に悪影響がでます。また、片顎の歯列が失われた場合には、左右の平衡感覚が低下します。しかしながら、このような影響はすべての人に現れるわけではありません。というのは、等尺性筋力発揮時に噛みしめのかわりに、顎を前方位や開口位で固定する人が1/3ほどいるためです。

 

※参考書籍
 「口腔筋機能改善 コンディショニング技法の基礎知識」
 姫野 かつよ 著  砂書房

Q2 歯が抜けて(とれて)しまいました。どうすれば良いでしょうか。
A2 まず、抜けて時間がたっておらず、その歯が手元に残っているならお口の中と歯とを軽くゆすいでください。それからその歯をお口の舌の下、ほほと歯ぐきの間、難しければ水を入れた容器等に入れ、乾燥させないようにして30分~1時間以内に歯科で見てもらってください。元に戻せる場合があります。
歯が手元にない場合も、その傷口からばい菌が入ってしまったりする原因になりますので、なるべく早めの診察を受けてください。
Q3 怪我で歯が抜けてしまった場合は、どうしたらいいですか?
A3 怪我で抜けてしまった歯が再びつくかどうかは、「歯根膜の健康」にかかっています。歯根膜が生きていれば歯はつきます。でも、歯根膜は乾燥にとても弱いので、牛乳や保湿液につけて、歯根膜が元気なうちに急いで歯医者さんへ行ってください。休日や夜間で歯医者さんが見つからない時は、勇気を出して歯を元の場所に戻して下さい。
Q4 歯が抜けてそのままにしておくと、口の中でどういう変化が起こるのですか?
A4

歯は上下の歯が支え合いながら安定を保っています。
たとえ1本だけ歯が抜けたとしても、その安定は壊れていきます。
抜けた直後から歯肉がやせていき、隣の歯が移動したり傾いたり、反対の顎の歯が浮いてきます
そのまま放置し続けると、噛む力が弱くなったり、残った歯への負担が大きくなったりし、他の歯を失うことにつながります
歯並びが悪くなることにより、歯と歯の間にできた隙間などに食べかすがつまりやすくなり、歯磨きなどケアがしにくくなり、お口の中はむし歯や歯周病が発症しやすい環境になります。
さらに噛み合わせのバランスが崩れると、顎や周囲の筋肉に無理な負担をかけ、顎関節症や、姿勢の歪みから不調を訴える例も出てきます。

早い段階で適切な処置をすることで悪影響の拡大を止めることができます。
方法としては保険内ではブリッジ、入れ歯、可能であれば親知らずの移植、自費ではインプラントという4つの方法があります。

歯が抜けた状態の変化 図説

倉岡

※参考書籍
 「Professional Dentistry STEP3」
 監修 木原 敏裕   クインテッセンス出版株式会社

Q5 歯を抜く原因はなんですか?
A5

抜歯にはいくつか原因があります。

1.むし歯(う蝕)

むし歯は、口のなかに常在している細菌の感染により歯質が軟らかくなり、崩壊していく病気です。
神経を除去していると痛みがなく気付かないため、知らない間に侵食されていることがあります。

2.歯周病

歯周病は、細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患です。
進行すると歯周ポケットと呼ばれる歯と歯肉の境目が深くなり、歯を支える土台(歯槽骨)が溶けて歯が動くようになり、最後は抜歯をしなければいけなくなってしまいます。

3.事故

交通事故、転倒、喧嘩など物理的な外傷力によって抜歯しなければならない場合もあります。

4.歯並び(歯列不正)

歯並びは抜歯のみで解決することは少なく、矯正治療が必要である場合が多いです。

5.医原性

かぶせものが適合していないなど、医原性により抜歯にいたる場合もあります。

6.かみ合わせ(咬合)

歯ぎしり・食いしばり・食生活などから発生する咬合性外傷や過大な咬合力により、歯根が破折したり咬合面が磨耗したりします。このことが影響して抜歯しなければならないこともあります。

抜歯の2大疾患は虫歯(う蝕)と歯周病です。
いずれの疾患も普段の歯の手入れや定期的な診断により予防することが大切で、歯を失う原因の早期発見・治療を心がけるようにしてください。 

Q6 歯が抜けた場合、どのような治療をすればよいのですか?
A6

治療の方法はいくつかありますが、歯の状態や患者様の事情などにより、
適切な処置を選択していただけます。
大きく分けると以下の4つがあげられます。

1.移植

親知らずや機能していない歯を取り外して歯を抜く予定の場所に移動させる治療方法です。
抜いた歯の大きさと、移植する場所の大きさが合えば、基本的にどこでも移植は可能です。
移植する場所に対して大き過ぎたり、小さ過ぎたりする場合は移植することはできません。
事前に診査・診断し、サイズが適合するかを確認することが大切です。

2.インプラント

人工の歯根(インプラント)をあごの骨に直接固定し、人工歯を取り付ける療法です。
インプラント治療のメリットは、むし歯にならない、修理が可能、自然な噛み心地・見た目などがあります。
デメリットは外科治療を伴い、費用が高く、治療期間も長くなってしまうことなどがあります。

3.ブリッジ

抜けた歯の両隣の歯を削り、歯のない箇所を覆うように人工歯を取り付ける療法です。
ブリッジ治療のメリットは、治療期間が短い、再治療は比較的やりやすいなどがあります。
デメリットは両隣の歯への負担が大きい、歯の欠損が大きい場所は対応できないなどがあります。

4.入れ歯(デンチャー)

入れ歯には総入れ歯と部分入れ歯があります。
メリットは部分入れ歯は口の中がどのような状態であっても対応できるというものがあります。
デメリットは痛みを伴いやすく、手入れに手間がかかってしまう点などがあげられます。

Q7 私、歯医者さんに歯の数が足りないと言われました。歯を抜いたことないのにどうして?
A7

そのような症状を「歯数不足症」といいます。

歯数不足症の発現率

民族の分布と性別で分析すると、白人女性が最も高く155人中14人(9.03%)、ラテン系米国人男性が最も低く47人中2人(4.26%)であり、部位別では下顎第二小臼歯が最も多く、次いで上顎第二小臼歯、上顎側切歯の順に多く先天性欠如が認められたという報告があります。

病因

歯数不足症の原因は、さまざまなものが考えられます。

  • 遺伝要因
  • 環境要因
    • アレルギー
    • 顔面の外傷
    • 妊娠中の母親に対する薬物療法
    • 内分泌異常
    • 妊娠中の母体の健康状態
    • 妊娠中の風疹(三日ばしか)
    • 歯性の進化
    • 歯形成の初期における局所的な炎症や感染
    • 全身疾患(くる病、梅毒)
    • 異形成症候群(外胚葉異形成症)と外胚葉組織の奇形
    • 化学療法と放射線療法

※参考書籍
 「早期治療」
 著 Alialbar Bahreman
 訳 嶋 浩人/石谷 徳人
 クインテッセンス出版株式会社

Q8 歯が折れてぬかないといけないのですが、その後入れるものをブリッジかインプラントとで悩んでいます。前後の歯は問題ないと言われましたが、どうでしょうか?
A8
1歯欠損の症例について

ブリッジの支台歯とインプラント補綴の隣在歯の経過を観察した報告

ブリッジの支台歯抜去 7.2%(12/166歯)
インプラント隣在歯抜去 2.0%(2/102歯)

ブリッジのほうが数倍リスクが高い。

清木祐介, 他.インプラント部が残存歯に与える影響 第3報 中間欠損部に埋入したインプラントの隣在歯とブリッジ支台歯の予後について(5年経過症例). In : 第37回日本口腔インプラント学会学術大会 抄録集, 2007 : 341.

ブリッジでは支台歯が負担を背負い、インプラントでは隣在歯の負担を軽減するというまったく正反対な補綴法であるために、上記の結果は至極当然といえます。

しかし、インプラントでは支持組織となる骨、そして対合歯の条件を考慮しなければなりません。

欠損の始まりであり咬合支持が十分にある1歯欠損においては、インプラント適用自体のリスクも小さい場合が多く、積極的に適用を推奨することができます。

※参考書籍
 『見る目が変わる!「欠損歯列」の読み方、「欠損補綴」の設計』
 編著  本多正明  宮地建夫  伊藤雄策  武田孝之
 クインテッセンス出版株式会社

Q9 奥歯が2本ありません。今まで入れ歯を入れていましたが、バネをかけていた歯が動いてきたような気がします。インプラントにするべきか考えています。教えて下さい。
A9
遊離端欠損の症例について

インプラントと義歯を観察して比較した報告

インプラントの対合歯で抜歯に至った歯 2.65%(10/378歯)
インプラントの隣在歯で抜歯に至った歯 3.76%(5/133歯)
義歯の隣接歯で抜歯に至った歯 26.0%(38/133歯)

義歯の鉤歯となりやすい隣接歯の喪失率は明らかに高い。

・森野茂, 他.インプラントが残存歯に与える影響 第2報 遊離端欠損部隣接歯, 対合歯に関する臨床的検討.In : 日本口腔インプラント学会 第23回九州支部学術大会 抄録集, 2006 : 51.

義歯とインプラントでは経過中にいわゆるツケの回りどころが異なります。そのため、一概にインプラント補綴がすべてよいとはいえませんが、対合歯に配慮していくことができれば長期安定を望める可能性は高くなります。

多数歯欠損症例と捉えられている遊離端欠損においては、抑制効果はあるものの、崩壊原因を把握してリスクを考慮し慎重に適用を考えるべきです。さらに、咬合崩壊の進行にともなって残存歯の状態も安定度が低くなりやすく、かつ、インプラント適用に対しては骨量不足に陥りやすくなり、総合的にリスクが高まるために、患者さんと治療ゴールをよく相談して補綴法を選択しなければなりません。

※参考書籍
 『見る目が変わる!「欠損歯列」の読み方、「欠損補綴」の設計』
 編著  本多正明  宮地建夫  伊藤雄策  武田孝之
 クインテッセンス出版株式会社

Q10 数本の歯をつなげてブリッジにしていたのですが、ある日外れました。よく見ると、その中の1本が大きなむし歯を作っていました。なぜですか?
A10

ブリッジが外れる以前に、そのむし歯になっていた歯のみが外れていたのでしょう。
特に大きなブリッジの中間支台歯に起こります。

中間支台歯の負担

中間支台歯を含む複数欠損の大型ブリッジでは、中間支台歯にかかる咬合圧が支点となり、セメント溶解やクラウン脱離などが発生しやすくなります。

全支台歯を固定性ブリッジで合着する場合には、各支台歯の骨植が良好で、かつ維持力が強い支台装置が必要です。

Rosenstiel SF. Trearment Planning. In: Rosenstiel SF, Land MF, Fujimoto J(eds).Contemporary Fixed Prosthdontics. 5th ed. St. Louis :Mosby, 2006:82-102.

※参考書籍
 『見る目が変わる!「欠損歯列」の読み方、「欠損補綴」の設計』
 編著  本多正明  宮地建夫  伊藤雄策  武田孝之
 クインテッセンス出版株式会社

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