Question

小児歯科で味覚は重要なのですか?

Answer

味は味蕾という場所で感じます。

胎児には顔から胸にかけて味蕾が分布しており、胎生3~4ヶ月位から羊水の味を通して味覚の形成が始まります。母親の食べたものが羊水の味に反映しますので、その羊水の味によって胎児の反応も変化することが知られています。ですから、母親が妊娠中にアルコールやタバコを摂取することは好ましいことではありません。

 

出生後の乳児では、味蕾の数は成人よりも1.3倍多く、舌表面のみならず、母乳を飲むときに好位置である軟口蓋、咽頭などにも広く分布しています。 食塩水(塩味)、酒石酸(酸味)に対しては成人の2分の1の濃度(薄味)で反応するので、乳児は成人よりも味覚に対しては敏感といえるでしょう。

離乳の開始時期である4~5カ月頃までの味覚反応は主として反射型によるもので、この離乳期からの味覚体験は、成人になってからの食生活に影響します。

3歳頃までには様々な食品の味を体験することで学習型の味覚反応に移行していきます。特に、苦味や酸味、辛味があり、匂いが強い野菜類(ピーマン、ニンジン、シイタケ、ニンニク、ネギなど)は幼児が嫌いな食べ物となり偏食を生みます。

5歳以降では、さまざまな新しい味、複雑な味を経験し、学習としての味覚体験から「嗜好性」が形成されていきます。

 

小児と成人の味覚閾値の比較

幼児(4~6歳、25名)・学童(7~12歳、29名)と成人(22~34歳、35名)を測定・比較した研究があります。

5基本味のうち、甘味(ショ糖液)、塩味(食塩液)、酸味(クエン酸液)について、全口腔法、上昇系列(低濃度から高濃度へ)で、味の認知閾値についての測定を実施しました(小児の嫌がる苦みについては検査していません)。合わせて味付けの傾向、好きな食品、離乳食の内容なども調査しました。

 

結果

甘味・・・小児の方が成人よりも、閾値が低い(敏感である)

塩味・・・小児の方が成人よりも、閾値が高い(鈍感である)

酸味・・・小児と成人で閾値に有意差がなかった

 

このことから、小児は甘味に対して感受性が大きく、生命維持に必須な糖分摂取に重要な機能と思われ、乳児では母乳の味や味蕾の数とも関連し、さらに敏感と思われます。

塩味については、もともと必須摂取量が不足することはほとんどないため、年齢と共に嗜好食品を通じて感受性が発達し、成人の方が敏感になると思われます。

酸味は、苦味と同様に、生体にとって腐敗物や毒物に対する防御反応の意味合いが強いので有意差がないと思われました。酸味(酢の物、黒酢ドリンクなど)、苦味(ニガウリ、ビールなど)では、嗜好と関連して成人になるに従い受容性に個人差が出てくるようです。

 

アンケート調査から、離乳食の味(うす味)に気を付けた群では、甘味、塩味、酸味のいずれも閾値が低く(敏感)、味質の識別もはっきりしている傾向にあったことは、小児歯科にとって注目すべき結果と思われます。

 

※参考書籍
 「月刊 小児歯科臨床 2012.3」 全国小児歯科開業医会(JSPP)

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